2025年7月19日、原発事故による除染で出た土を再生利用するため、福島県にある中間貯蔵施設から首相官邸への運び込み作業が行われた。2045年の県外最終処分に向け、4tトラック1台分の土が理解を広げるきっかけになるのか?
除染土 初の再生利用は首相官邸
7月22日、総理官邸の前庭を訪れた林官房長官や浅尾環境大臣。福島第一原発の事故による除染で出た土を、植栽の下地として“再生利用”した現場を視察するためだ。

中間貯蔵施設から運び出されたのは約2立方メートル、4tトラック1台分。
中間貯蔵施設では、東京ドーム約11個分の除染で出た土などが保管されていて、放射能濃度が基準を下回る4分の3については“再生利用”する計画で、その最初の事例が総理官邸となった。
安全性を確認し受け入れ先確保へ
環境省の職員が「放射線量は1時間あたり0.11マイクロシーベルトです。これは、施行前の放射線量は0.07から0.10マイクロシーベルト時間当たりでしたので、ほぼ同等」と空間線量は工事前とほとんど変わらないことを説明。
国は今回の事例を通じて“再生利用”の安全性などを広く発信し、受け入れ先の確保につなげたい考えだ。

浅尾環境相は「使用した除去土壌の量は、再生利用しなければいけないものに対しては僅かではありますが、これからさらに再生利用を進めていくことにつなげていければと思っています」と述べた。
再生利用が最終処分のカギに
法律で2045年までに福島県外での最終処分が定められている除染で出た土。その量を抑えるためにも“再生利用”は欠かせない役割を担っている。

福島県の内堀雅雄知事は「今後も国において、さまざまな手法を検討し工夫を重ねながら、国民の皆さんの理解を深めるための取り組みをさらに推進していただきたい」と改めて訴えた。
中間貯蔵施設がある地元の反応は
一方、中間貯蔵施設を受け入れた福島県双葉町の住民は「これから関東圏や全国の知事がどういう風に見て、自分の所でも受け取っても良いよと言ってくれれば、非常にありがたい」「対応が遅いというよりも、皆忘れているのではという心配がある。どんどん利用していただきたい」といった声が上がった。

各省庁でも“再生利用”が検討されている除染で出た土。福島県外での最終処分まで残り20年を切った。