名古屋市昭和区の「うをとよ」は、江戸後期創業の老舗で、三河一色産のうなぎを代々受け継ぐタレで焼き上げています。魚を触るのが苦手な6代目が家族とともに守ってきた伝統の味は、夏の名物として多くの人に親しまれています。

名古屋市昭和区の「うをとよ」のうなぎ
名古屋市昭和区の「うをとよ」のうなぎ
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■魚を触るのは苦手でも焼きは誰にも負けない…名店の味を受け継ぐ6代目

名古屋市昭和区の住宅街に、江戸時代後期創業で「安くておいしい」と評判の老舗食堂「うをとよ」があります。

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もともとは鮮魚店でしたが、現在は食堂となり、旬の海の幸を味わえる「海鮮丼」(1980円)や、秘伝のタレを使った「煮魚定食」(1760円~)など、メニューは約30種類。

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なかでも看板メニューは、江戸時代から代々受け継がれてきたうなぎです。

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客:
「焼いたところはサクッとしていて、あとはふわふわ」

別の客:
「ふわふわ。タレの味も絶妙においしい」

焼きを担当するのは6代目店主の堀部康了さん(59)。

堀部康了さん:
「高校3年生ぐらいですから、もう40年は少なくとも焼いている」

高校生の頃から父親を手伝い、うなぎを焼いてきましたが、康了さんにはある問題がありました。

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康了さん:
「魚を触るのが苦手で、まったく触れないので手袋をしている」

鮮魚を扱う店でありながら、魚をさばくことができないのです。

康了さん:
「サラリーマンを東京で四半世紀ぐらいやっていて。航空会社で営業を」

大学卒業後は東京の航空会社に就職。店が忙しい時は手伝っていましたが、本格的に家業を継いだのは、父親が亡くなった2023年でした。

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康了さん:
「たぶん(自分が)やらなかったらつぶれていた。お世話になっている人とか常連さんに申し訳ない。今思えばつぶさなくてよかった」

魚を触るのは苦手でもうなぎを焼くことなら誰にも負けない。康了さんは、代々受け継がれてきた味を守り続けています。

■父から学んだ『名古屋100回返し』…受け継いだ焼きの技術

午前7時。堀部さんの姿は、柳橋中央市場にありました。父親の代からの馴染みの仲買人から魚を仕入れます。

康了さん:
「プロに任せている。目利きは学んでも無理。プロに任せて僕はそれを素人ながら工夫する」

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午前9時。店に戻ると、先ほどの仲買人が仕入れた魚を届けてくれます。そして、魚を触るのが苦手な堀部さんに代わり、毎朝さばいてくれるのです。

康了さん:
「プロのマネはできない。最初からそこは『お願いします』と」

仲買人の男性:
「くされ縁だわ」

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午前11時半。開店と同時に多くの客が来店します。

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店は、妻の三奈さんと母親の愛子さん、家族3人で切り盛り。この日使っていたのは最高級の三河一色産のうなぎ。注文が入ると、すぐに焼き始めます。

高校時代から焼きを手伝ってきたため、焼きには絶対の自信があります。40年の経験をもとに、焼き加減を見ながら、絶え間なく手を動かします。

康了さん:
「親父から聞いたのは『名古屋100回返し』といって、何度もひっくり返す。タレを付けてからもこんなに返していました。親父は指を入れてこうやっていました」

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東海テレビには、父・敏夫さんがうなぎを焼く映像が残っていました。焦げ色を見極めながら、手を止めずに焼き続けます。

先代・敏夫さん:
「人間おいしいものを食べたい。おいしいものを値打ちに出せるように、それがモットー」

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「美味しいものをお値打ちに」。康了さんはその考えを今も守り続けています。

そして、何よりも父・敏夫さんが大切にしてきた店の宝が、戦後から継ぎ足して使い続けてきた「うなぎのタレ」。さらっと、まろやかでありながら奥深い伝統の味です。

康了さん:
「事業承継でいうと、親父から一番承継したのはタレ」

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自慢のタレをしっかり染みこませ、さらにもうひと焼きして香ばしさを加えます。焼き上がったうなぎを食べやすい大きさにカットして、ご飯にのせて仕上げにタレをかければ完成です。最高級の三河一色産を使った「うなぎランチ」(2178円)。長年変わらぬ味を求めて、今日も多くの客が店を訪れます。

客:
「ふっくらして、おいしいです」

別の客:
「小学校の頃から。35年とか40年。(先代から味は)そんなに変わってないと思う」

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江戸から続くこの店を守り続けたい―。康了さんは今日も焼き場に立ち続けます。

康了さん:
「うなぎを焼けば焼くほど学ぶことがあります。本当に奥が深い。まあ(父親から)及第点はもらえるかも、なんとか」

康了さんは、江戸から続く老舗の誇りを胸に、これからも伝統の味を守り続けます。

2025年7月17日放送

(東海テレビ)

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