「夏の甲子園」と呼ばれ、野球好きのみならず全国を熱くする全国高等学校野球選手権大会。これに先立って、男子ではなく女子の「甲子園」が行われていることはあまり知られていない。宮城県から出場する上位常連校と、部員9人で挑む初出場の学校の2校に注目する。
男子高校野球大会を前に行われる「もうひとつの甲子園」

今大会で29回を数える全国高等学校女子硬式野球選手権大会。
1997年に開かれた第1回大会では東京、埼玉、兵庫から5校のみの参加だったが、全国に女子硬式野球部が増え、2025年は史上最多の67校が出場する。
男子の大会に先立って、毎年7月下旬に開催されているこの大会は、2021年から決勝戦のみ阪神甲子園球場で行われる、まさに高校野球界の「もうひとつの甲子園」だ。
この大会に、宮城県からはクラーク国際仙台と日本ウェルネス宮城の2校が出場する。
全国屈指の強豪校・クラーク国際仙台

クラーク国際仙台。女子高校野球界、全国屈指の強豪校だ。
春に行われる選抜大会、秋に行われるユース大会、そして夏の選手権大会と、年間3回の全国大会がある女子高校野球において、全国制覇2回、準優勝は2回と常に日本一を狙うチームとして高みを目指している。
勝利に対する熱量を意識し続けるため、毎日1つチームの目標を定めて、部員全員が手の甲に書いて練習に臨んでいる。

クラーク国際仙台の女子硬式野球部は、2018年に創部。女子も高校野球ができる環境を作ろうと、プロ野球の楽天イーグルスが協力し、東北では初めての女子硬式野球部として誕生した。
創部1年目からその実力を発揮し、夏の大会では2回戦を勝ち上がった。
昨年大会と選抜大会の雪辱 返り咲いた背番号1
2023年、2024年と秋の大会は連覇を果たしているクラーク国際仙台。一方で夏の大会での優勝経験はない。
去年のこの大会ではベスト8に甘んじた。その悔しさを知るエースの菊田波音(はのん)投手はこの春の選抜大会、準々決勝(vs履正社)で先発したものの、5失点を喫して2回を持たず降板。歯車が狂ったチームはまさかのコールド負けを喫した。

エースとしての気合が、悪い方向に強く出てしまい、「チームのテンポを崩し、コールド負けという結果を作ってしまった」と、悔しさをにじませる菊田投手。この大会以降、エースナンバーをはく奪された。

それでも、チームメートからの信頼は変わらない。キャプテンの角ひらり選手は「菊田選手ひとりの負けじゃなかった」と話す。選手全員が、「夏の大会は菊田投手のピッチングがないと勝てない」と、励ましの声をかけた。
仲間の声を励みに、菊田投手は崩れかけていたピッチングフォームを修正。ストレートの威力が増して、本来のピッチングスタイルを取り戻した。

夏の大会の背番号発表の日。部長が最初に呼んだエースナンバー「1」は、やはり菊田投手だった。この夏、再びエースナンバーを背負って春の雪辱に挑む。
菊田波音投手:
絶対甲子園に行って日本一になります
日本ウェルネス宮城 病と闘いながら挑む二刀流エース

創部4年目の日本ウェルネス宮城。3学年合わせてわずか9人で全国大会初勝利を目指す。
チームを支えるのは、「二刀流」の畠山希望選手。持ち前の長打力と、ピッチングのコントロールの良さを武器に、チームの得点源として、エースとして活躍する。

そんな畠山選手は中学3年の時に重い病気を患い、野球から遠ざかる時期があった。
「野球をやりたくてもできず、つらかった」と語る畠山選手。

高校入学後も、通院しながらも弱音を吐くことなくほかの部員たちと同じメニューをこなしてきた。
キャプテンの佐藤聖奈選手は、自分以上に大変な中で練習をこなす畠山選手に期待を寄せる。

佐藤聖奈キャプテン:
希望がいないと試合が成り立たない、欠けてはいけない存在と思います。
部員9人で挑む最初で最後の全国大会

この春は連合チームの一員に選ばれ、全国の舞台を経験した畠山選手。
連合チームで出場したからこそ、人数は少なくとも学校のメンバーで出場できる喜びを胸に、病に負けず、ひたすら大好きな野球と向き合っている。
畠山希望選手:
部員が少ない中でも出られることに感謝して、自分の持っている力を発揮できたらと思います
一方で、他の選手たちにとっては初めてとなる全国大会。3年生にとっては9人で挑む最初で最後の大会だ。
かけがえのない仲間と過ごす時間は残りわずか。チーム一丸で、まずは全国1勝を狙う。
日本ウェルネス宮城は20日に至学館と、クラーク国際仙台も同じ20日に旭川明成と対戦。8月2日に甲子園球場で行われる決勝進出、そして史上最多67校が出場する頂点を狙う。
仙台放送