秋田県潟上市にある老舗つくだ煮店が、地域を盛り上げようとカフェをオープンさせました。「訪れる人が常にうきうき、安らぎが感じられるような空間づくりをしたい」と話す店主の思いを紹介します。
5月、潟上市にオープンした「かふぇうたせ」。明治30年創業の老舗つくだ煮店「千田佐市商店」が手がけた古民家カフェです。
潟上市で生まれ育った店主の千田浩太さん(33)は、小さい頃からピアノに打ち込んできました。2014年にフランス・パリに留学し、3年間クラシック音楽を学んで帰国すると家業のつくだ煮店の経営に携わり、その一方で、自身の音楽経験を生かして『潟上国際音楽祭』を企画するなど音楽活動にも精力的に取り組んできました。
かふぇうたせ・千田浩太さん:
「つくだ煮が若い人にあまり認知されていないことが多かったので、つくだ煮や八郎潟という伝えていきたい文化を、もうちょっといろんな人々に知ってもらいと思い、八郎潟の恵みを使った料理やおしゃれなデザートの食べ方などを提案できる場所づくりをしたいと思った」
かふぇうたせは、雑貨店兼住宅だった築80年の空き家を1年以上かけてリノベーションしました。古民家ならではの味わいが感じられる土間や梁(はり)など、店内は懐かしさと新しさが融合した空間となっています。
「うたせ」という店名は、つくだ煮の材料となる魚を取る舟、うたせ舟から名付けられました。
かふぇうたせ・千田浩太さん:
「うたせ舟のように風を帆にうたせて、いろんな人の価値観や思いを受けて一緒につくっていけるようなカフェの空間にしたい」
つくだ煮文化を発信し、これまで地元になかった地域住民の憩いの場にしたいとつくった「かふぇうたせ」。店の看板メニュー「うたせワッフル」は、ワッフルでバニラアイスを包み、うたせ舟をイメージした人気の一皿です。
さらに暑い夏におすすめなのが、千田佐市商店の「いもチーズ」というサツマイモチップス風のつくだ煮を砕いて振りかけた「和風パフェ」です。甘じょっぱさと生クリームがマッチして、食べ進めていくとコーヒーゼリーのほろ苦さとワッフルのサクサク食感も楽しめて、とてもおいしい一品です。
かふぇうたせ・千田浩太さん:
「『実家に帰ってきたみたいだ』とか『祖母の家に帰ってきたみたいだ』と言ってくれる人も多くて、和気あいあいと話している姿を見ると、一つのコミュニティの場所づくりになっているという気がする」
オープンから2カ月が過ぎ、地域の多くの人が来店するようになった「かふぇうたせ」。千田さんは「もちろん居心地の良いカフェの空間づくりはそうだが、いろんなコンサートやイベントを開きながら、常に地域の人がここに来たら、うきうき、安らぎが感じられるような空間づくりを今後もずっと続けていきたい」と、この先の店の姿を思い描きます。
つくだ煮文化の発信の場として、地域の交流の場として、「かふぇうたせ」のこれからに期待です。