投開票が2日後に迫った参院選、注目の選挙区を見ていきます。

18日は「保守王国」として知られる鹿児島選挙区です。

2001年に2人区から1人区に変更された鹿児島選挙区ですが、毎度、自民党候補が議席を獲得しました。
今回、4人の候補が名乗りを上げています。

従来でいうと自民党公認の園田候補が有利とみられるんですが、今回は波乱の展開が待っているということで詳しく見ていきましょう。

“地方の声が届く政治の実現”を掲げる44歳の新人候補がいます。

無所属 新人・尾辻朋美候補:
「我が胸の 燃ゆる思ひに くらぶれば 煙はうすし 桜島山」。12年前に私の父・尾辻秀久が第一声で言った言葉であります。

無所属、新人の尾辻朋実候補(44)。
その父親は自民党の現職・尾辻秀久議員です。

厚労相や参議院議長を歴任し、かつて農業を巡る党の会議で西川TPP対策委員長(当時)と怒鳴り合いを演じた重鎮です。

尾辻朋実候補は尾辻家の三女。
商社勤務の後、父の秘書を務めていました。

その父・秀久さんも今期限りで引退します。

尾辻候補は父の跡を継ごうと自民党県連の公募に手を上げました。

しかし、公認に選ばれたのは自民党で議員経験のある園田修光候補(68)でした。

自民党から袖にされた尾辻候補ですが、秀久の娘という運命を背負い、野党の支援を受け無所属で戦う道を選びました。

尾辻候補を推薦するのは立憲民主党です。

立憲民主党・野田佳彦代表:
(ガソリン税の)暫定税率の廃止望んでいるんじゃありませんか。望んでいるなら、それを実現するための一票を有効に使おうではありませんか。それが尾辻さん。

公示日の翌日に野田代表が応援に駆け付けるという公認候補並みの支援体制です。

自民党の重鎮の娘が、父の思いを継ぎながらも党に反乱ののろしを上げるような複雑な構図に、尾辻候補は「国政選挙なので、どうしても政党同士での思惑は私の頭の上で入り乱れている状況。私自身はフラットな戦いだと思っております」と話しました。

選挙カーに書かれたスローガンは「虫の目」。
これは尊敬する父・秀久さんが貫いてきた政治信念です。

無所属 新人・尾辻朋美候補:
地域や地方、中小企業、1次産業は本当に置いていかれてしまったこの20年間。私は今こそ政治を変えなければいけないと思います。

陣営揃って昼食の時間には…。

無所属 新人・尾辻朋美候補:
固形物を食べるのが苦手…。芋焼酎が完全栄養食なので(笑)

鹿児島といえば“焼酎王国”。
尾辻候補もお酒好きの1人です。

無所属 新人・尾辻朋美候補:
365日中360日以上は必ず飲んでいます。

明るい笑顔で家族とともに戦います。

1人区となって以降、いまだ負けなしの自民党からは園田修光候補(68)が出馬しています。

自民党 元職・園田修光候補:
使いがいのある男だから、必ず永田町の中ではしっかり仕事ができる。

これまでに県議を2期、衆院議員4年、参院議員を6年務め、自民党に逆風が吹く中で豊富な経験、即戦力をアピールし支持を訴えます。

演説会場のスタッフらと一人ひとり握手を交わす園田候補。
厳しい選挙戦の第一声で飛び出したのは同じ地の大物の名前でした。

自民党・園田修光候補:
けさ、森山幹事長から電話を頂きました。「絶対勝たんといけんぞ」と。幹事長も「総力をあげて俺もやるから」という話でした。それくらい厳しい戦いになっている。

自民党の要である森山幹事長は同じ鹿児島出身で親しい間柄です。

そして園田候補の最大の後ろ盾が菅副総裁です。
かつては、こんな場面も。

自民党・園田修光候補:
今、俺がこうしてあるのは長官(菅官房長官)のおかげで…。こんな日が来るなんてよ、本当に。

党の中枢とのパイプも武器とする園田候補のもとには、序盤から石破総裁が駆け付けました。

自民党・石破茂総裁:
防災について語っている党がどこかありましたか。どこも言っていない。言っているのは我々、自民と公明党だけ。誰がこの国に責任を持つのだ。社会保障もそう。専門家は園田修光なんだ。

園田候補も参院議員時代に厚労委員長を務めた経験を訴え、野党の減税案を批判しました。

自民党・園田修光候補:
社会保障が中心なんです。皆さんの年金、医療、介護、子育ての予算が中心。30兆を超えるお金がかかる。それでもまだ足りない。足りないような状態で野党は無責任に「減税を」という話をしている。

最後の日曜日には、森山幹事長と小泉農水相が応援に駆け付けました。

自民党・小泉農水相:
私は確信しています。最後は絶対勝ちますよ。今の国の舵取り、他の野党でできるわけはないからです。

しかし、最新の情勢では園田候補が尾辻候補を追う展開になっています。

自民党・園田修光候補:
(Q. 危機感は?)いやいや選挙は上がったり下がったりがありますから、最後に結果が出るまでは一生懸命頑張っていくしかありませんからね。

そして、大きな躍進が伝えられる参政党からは新人の牧野俊一候補(39)が出馬しています。

鹿児島県内の医療機関で救急医として勤務しながらの選挙戦です。

公示日、第一声では…。

参政党 新人・牧野俊一候補:
日本経済はもう一回きちんと復活することが十分可能。にもかかわらず緊縮財政という間違った政策一つで、その可能性を全部つぶしてきた。これをどうにかして反転させなければならない。

減税と積極財政の両立で経済を立て直す必要性を訴えました。

京都府出身の39歳。
若さと行動力をアピールしながら市街地を自転車で颯爽と駆け抜けます。

2カ所目の演説に選んだのは鹿児島大学のキャンパス前です。
実は鹿児島大学大学院生としてがん治療用のウイルスの研究も行っている牧野候補。
若者たちに政治参加を呼びかけました。

参政党 新人・牧野俊一候補:
一体ここでどういう選択をすることが日本の未来を明るくする選択なのか。一人でも多く声かけをして政治に関心を持ち、投票に行ってほしい。

幅広い世代の支持者に囲まれる牧野候補。
参政党の神谷代表も度々、鹿児島を訪れ期待感を示していました。

参政党・神谷宗幣代表:
鹿児島からは今回、牧野俊一に皆さんの期待を寄せていただけないでしょうか。

演説では現政権との戦いを強調します。

参政党 新人・牧野俊一候補:
食やインフラを支えてきた方々を自民党政治のいじめと脅しという魂の牢獄(ろうごく)から解き放つため戦いなんですよ。

時間を惜しみ、食事も選挙カーで済ませます。

参政党 新人・牧野俊一候補:
普段の救急の忙しさの中で食べるのとあまり変わらない。何が起こるか分からないけれど、楽しんでしっかりと訴えを届けたい。

保守王国の牙城を同じ保守派の参政党の新人が崩すことはできるのでしょうか。

そして、NHK党からは新人の山本貴平候補(50)が出馬。
党からの人的サポートはなく、届け出もビラの準備・配布も全て1人で行っていました。

NHK党 新人・山本貴平候補:
移民流入、不良外国人、悪質な外国人に対して強く政府に対しても行政に対しても働きかけてまいります。

熾烈な戦いが繰り広げられる鹿児島選挙区。
野党が推薦する新人、自民重鎮の娘か、経験でリードするベテラン自民議員か、それとも新たな勢力か。

混戦の行方はどうなるのでしょうか。