そうするとお子さんも、「自分は信用されていないんだ」「みんなと比べてダメな人間だ」という認識を持ってしまう。

考えてみてください。小中高生が「私は○○がストレスなのです。だから、学校に行きません」と、大人のように理路整然と説明したら逆に驚きませんか?年齢を考えると、未熟であることは当然です。これは長い成長の一過程にすぎないと考え「いずれ成熟するだろう」と信頼して見守ってあげてほしいのです。そして、その信頼がお子さんへと伝わることが大切です。
今、なかなか治療が進まず悩んでいる方は、起立性調節障害の子を持つ親御さんたちによる「親の会」などに連絡を取ってみるのもよいでしょう。お住まいの地域でおすすめのクリニックについて情報交換したり、悩みを共有したりできるのではないでしょうか。
回復までの道のりは1つじゃない
思春期特有の自律神経のアンバランスさは、成長過程でたいてい改善します。症状も次第におさまっていくことが多いでしょう。ですから、つらい時期に自信をなくしたり大崩れしたりしないように、周囲が自信を持たせ、乗り越えるサポートをしてあげましょう。それがうまくいけば、あとは本人が自分の力で頑張っていくはずです。
回復に至る過程は、人それぞれです。例えば、漢方を飲むことで朝起きられるようになり、学校に通えるようになった患者さんもいます。一方で、治療をしながら通信制高校に転学したものの、なかなか改善せず、やがて通院をやめてしまった患者さんもいました。しかし数年後、その方から、ある難関大学に合格したという知らせが届いたのです。
どんなに回り道しても構いません。1、2年、人より遅れたって大丈夫。最終的に、望む場所に到達したらいいのですから。
森下克也(もりした・かつや)
心療内科医、医学博士、もりしたクリニック院長。著書に『もし、部下が適応障害になったら』『うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある 親子で治す起立性調節障害』(CCCメディアハウス)など多数。
構成=高木さおり