例えば、朝起きられないという症状の原因は、低血圧のような身体的な場合もあれば、学校にストレスを感じているなど心理的な問題が潜むこともあります。もちろん、夜遅くまでゲームをするなどして、睡眠のリズムが悪化しているケースもあります。
さまざまな要因が重なった結果、朝起きられない。それは、本人が「意図的に」怠けているわけではありません。ですから、周囲がその子を責めることは避けなければなりません。本人の自己評価を下げることに繋がり、人格形成上、非常にまずいことです。
同じような症状が出たとき、大人ならば「仕事がストレスです」などと自覚して訴えることができます。しかし、子供たちはまだ言語化能力が未熟なので「わからない」「ただ起きられない」としか表現できない。自分の現状や内面、この先どうしたいのか、などを言語化することが難しいのです。

ですから、治療も一筋縄ではいきません。身体的な問題には必要な薬や漢方薬を処方するなどしながら、一方で会話を積み重ねてさまざまなエピソードに耳を傾けます。なぜこうした状況になっているのかを、少しずつ明らかにしていくのです。
言語化能力を鍛えるために、日記を書いてもらったり、親と交換日記をしてもらったり、本を読んでもらったりもします。自分の将来に対する想像力を持つことが今現在のモチベーションにつながるので、「高校出たらどうしたい?」「将来何をしたい?」などと夢を描いてもらうような会話もします。きっと、はたから聞いたら雑談のように感じるでしょう。しかし、これは目的をもった治療としての対話なのです。
子供を責めないで
親御さんにはぜひ「子供は言語化する力がまだまだ未熟なのだ」と理解していただきたいです。それができないと、やはり「サボっている!」と思って子供を責めたくなってしまうでしょう。