3年前、北海道知床半島沖で観光船が沈没した事故。

 20人が死亡し、6人の行方がわからない中、7月13日現場の海で洋上慰霊が行われました。

 未曾有の事故があった現場を初めて家族らが訪れ、祈りを捧げました。

 あの日から3年…13日の知床の海は穏やかでした。

 2022年4月23日、知床半島沖で観光船「KAZU1」が沈没。

 乗客乗員20人が死亡、6人の行方が未だにわかっていません。

 地元漁師の桜井憲二さん。

 事故直後から独自に捜索を続け、乗客の遺骨や遺品などを探してきました。

 洋上慰霊を企画し、全国に寄付を呼びかけたところ1400万円以上が集まり、実現にこぎつけました。

 「きょうよろしくお願いします」(捜索ボランティア 桜井憲二さん)

 初の洋上慰霊には、乗客家族ら関係者約40人が参加。

 その中に、悩みながら参加した男性がいました。

 当時7歳の息子と、その母親が行方不明の帯広市の男性です。

 「複雑な気持ちです。ここに来るとつらいことを思い出すので。自分の中で何か変われたらいいな」(息子とその母親が行方不明となった男性)

 あの日家族が出港したウトロ漁港から現場へ向かいます。

 家族らは、まず知床岬近くへ上陸。

 崖を登り、生い茂る草を踏み分けながら先を目指します。

 たどり着いた啓吉湾は乗客の遺骨や遺品が発見された場所。

 家族や、思い出の品が打ち上げられた浜で手を合わせ、花を手向けました。

 その後一行は観光船が沈没した場所へ。

 「左手に見えるのが『カシュニの滝』です」

 あの日、家族が見て楽しんだ知床の大自然を前に洋上慰霊が行われました。

 「いつまでも仲よくよ」(乗客の家族)

 「どんなに怖い思いをしたのかと思ったら、涙が止まりませんでした。複雑な思いで参加したんですが本当に来られてよかった」(息子とその母親が行方不明となった男性)

 「もう体は帰ってきませんが、魂だけは連れて帰って安らかになってもらいたい」(息子が行方不明となった家族)

 「私たち家族は今まで何度も励まされてきました」(乗客の家族)

 参加者から感謝の言葉を受け取った桜井さんは…

 「みんな言いたいことを言っていたというか、届けたい言葉を届けていました、あれは被害者家族全員で集まったからできたことだと思います。きょう参加された家族も、前を向いて歩いていってくれるんじゃないか」(桜井さん)

 事故から3年。

 あの日乗客がみた景色をようやく受け止めることができた家族がいました。

北海道文化放送
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