「社会保険料を引き下げるべきか」。今回の参議院議員選挙で、争点の1つとなっています。
関西テレビ「newsランナー」の「参院選『投票前に』大激論SP!!」では、各政党に選挙情報サイトの『選挙ドットコム』がアンケートした結果に基づいて、20代から60代までのコメンテーターたちが大激論。
「社会保険料を負担する『現役世代』と給付を受ける側である『高齢者』が対立するのは政府の『思う壺』」という意見や、「これだけの負担では企業も『賃上げ』はできない」といった意見などが出されました。
■国民負担は「55年で24.3パーセント→46.2パーセント」
増え続ける「国民負担」。
「所得に対する税金と社会保険料の負担率」(財務省の資料より)は、前回の大阪万博が開催された1970年では24.3パーセントだったものが、今年は46.2パーセントとなる見通しです。
負担率はこの55年で倍近く上昇した形です。
この参院選で、社会保険料を引き下げるべきか争点になっています。各政党に選挙情報サイトの『選挙ドットコム』がアンケートした結果は次のようなものです。
<社会保険料引き下げに>
【賛成】維新・国民・共産・参政・れいわ・社民
【やや賛成】立憲・公明・保守
【中立】自民
実はほとんどが「社会保険料を下げるべきか」という点について、賛成の立場をとっています。
「中立」という自民党は、「国民負担を引き下げるため、引き続き検討する」ということです。
■「現役世代と高齢者の対立は政府の思う壺」「一緒になって政府とケンカしなきゃ」
この議論について、『政治取材歴30年以上・石破総理取材歴20年以上』のジャーナリスト鈴木哲夫さんは、社会保険料を負担する『現役世代』と給付を受ける側である『高齢者』が対立するのは政府の『思う壺』と指摘しました。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】「実は20年ぐらい前からわかっていて、政治家が言っていたんですよ。少子高齢化になって、社会保険の財源は、現役世代が払うわけですね。だからもうそこ(=現役世代)が少なくなったら『もう破綻するよ』ってのは、ずっと言われてきたけれども、その場、その場、その場で、しのいできたわけですよ。
だから根本的に問題なのは、最近ここ何年かそうなんだけど、現役世代と高齢者。僕はもう67で、もうすぐ高齢者なんですが。分けるんですよね。つまり敵対させるっていうかな、要するに若い人たちがせっかく納めてるのに高齢者に行ってるだろうと。若い人たちは不満なり、高齢者からすると俺が若いときいっぱい払ってきたのに、なんで今の若いもんはこれ喧嘩し始めてますよね今度の選挙でもそういうことを言う人がいる。これね、政府の思う壺なんですよ。つまりケンカさせて、その上であぐらかいてるっていう。
だから本当は若い人と高齢者が一緒になって、この保険社会保険をどう制度変えるかっていうのを、若い人と高齢者が一緒になって政府とケンカしなきゃいけない」
■「みんなが納得ができる制度設計に踏み込んで」
一方、ジャーナリストの安藤優子さんは、自民党の「中立」で、「国民負担を引き下げるべく検討する」という自民党の考えを、「見直しをずっと放置してきた」と批判します。
【ジャーナリスト 安藤優子さん】「だから検討なんですよね。制度設計って、今鈴木さんもおっしゃっていましたけど、ずーっと見直しを放置してきたわけじゃないですか。その間にどんどんどんどん、賃金もそのまま横ばいになる、社会保険料が上がるっていう、いろんな意味でその悪循環が増幅してきたわけですよね。
その間にずっと置いてきぼりを食って、制度設計を見直してないのがやっぱり社会保険、社会保障なんですよ。だからその投票行動に高齢者に対しての耳ざわりのいいことを言うのではなく、みんなが納得ができる制度設計に踏み込むっていうところを(してほしい)」
■「賃上げにも影響」
そして社会保険料が高いままだと企業の負担が大きく、「賃上げ」にも影響すると指摘しました。
【ジャーナリスト 安藤優子さん】「社会保険料の負担ってやっぱり、とんでもなく大きいと思う。ていうのは、例えばその会社が半分払っているとすると、会社がどうやってそれをかぶって、『賃金上げろ』っていうんですか。そこも考えなくて、『賃金上げて。賃金上げて』って言うのに、社会保険料は(会社負担として)重く残しのしかかっていて、賃金上げられないってことになってしまう」
【フリーアナウンサー 山本浩之さん】「大企業だけですよね。(賃上げ)できるのは」
【ジャーナリスト 安藤優子さん】「そう、中小なんてできないですよ」
■「社会保険料引き下げ」のために「どこから取るのか」
自民党以外の各党が「引き下げ」に「賛成」・「やや賛成」という中で、各党が社会保険料を引き下げるために「どこから取るのか」ということについて「選挙ドットコム」のアンケート結果からみていきます。
【維新】・【国民】高齢者の医療の窓口負担を増やす。
【共産】・【立憲】高額所得者=お金持ちの負担を増やす。
【参政】・【公明】「事前に病気にならないようにしておこう」=予防医療の充実。
【れいわ】国費を投入。
【保守】給付水準を下げる。
【社民】労使負担の割合を1対3にする。
■20代の意見は…
これについてまず20代(21歳)のモデル・タレントゆめぽてさんは…
【ゆめぽてさん】「私たちだって、(高齢者に)『もうゆっくりなさってください。お疲れ様でした』って払いたいけど、『払えへん!』っていう状況じゃないですか。普通に考えて。だから、もうちょっと高齢者の方に払ってもらうのか…高額所得者の方に、お金を持ってはるんやからお願いって(したい)」
■実は高齢者の負担も増加…25年で年金生活者の手取り「年18万円減」試算も
一方で高齢者の負担も変化しているようです。
「年金生活者の手取り」が25年で大幅にダウンしているという試算があります。(ファイナンシャルプランナー深田晶恵氏試算・グラフ作成)
大阪市在住の60代後半という人で、年金収入が年200万円、扶養する妻の年金は年90万円という条件で試算すると、1999年の手取りは197.5万円だったのが、国民健康保険・介護保険の負担もあり、2024年の手取りは179.5万円と18万円も減っています。
【フリーアナウンサー 山本浩之さん】「高齢者ってひと口に言っても、例えば今の段階で、ある程度稼いでいる高齢者は3割負担していますから、実際に。そういうところも考えないといけないわけです」
【ジャーナリスト 安藤優子さん】「一律高齢者っていうくくり方がよくない」
さらに安藤さんは、健康保険料について切り込みました。
【ジャーナリスト 安藤優子さん】「あともう1つは健康保険料って、私は国民健康保険ですけれども、使わないわけですよ。私、割と丈夫だから。『うわーすごい保険料だな』と思うけど、『私、使っていないな、もったいない』って思っちゃう。
だから使っていなかったらば、インセンティブかなんか、そこにつけるとか。ちゃんと収入に応じて払います。払いますよ。だけれども、使わなかったときに、『ちょっぴりおまけしてくれない?』っていう」
■「『社会保障の財源としての消費税』が議論されていない」
政党でそういう議論にならないのでしょうか。ジャーナリストの鈴木哲夫さんに聞くと、年金や健康保険など、「『社会保障の財源としての消費税』が議論されていない」という意見が出ました。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】「これ実は、財源の中で1個、抜けているのがあるんですよ。『消費税でやれ』っていう、『やるべきだ』っていう意見がある。
これね、自民党の河野太郎さんなんかが言っている。つまり、『もう年金は破綻するので、財源は若い人とかじゃなくて、基礎年金の部分はもう消費税でやりましょう』と。
その代わり消費税を上げなきゃいけないわけですよ。これ上げるのは、(各政党は)絶対選挙も含めて絶対嫌なわけですよ。だから言い出さないけど、そういう議論をして欲しいわけですよね。そのかわり、若い人の『負担は少なくなるよ』と。
だから要するに税と社会保障の一体改革、その中で『年金はこうですよ』って見せるならいいんですけど、年金だけ取り上げて…っていうのは、また目先(の議論)なんですよ」
■医療費の問題「薬ちょっと出しすぎ違いますの?」というときも…
最後にフリーアナウンサーの山本浩之さんが、医療費の問題について、次のように私的しました。
【フリーアナウンサー 山本浩之さん】「医療費にかかるお金で言うと、薬なんかでも、『薬ちょっと出しすぎ違いますの?』ってときありませんか?今よく言われてますけど。その辺のところにメス、入れられるの?と。いろんなところと癒着があるんだったら、そこを立て直せば、出せるお金ってあるんじゃないですか?っていう部分の議論って、選挙だからやって欲しいですよね」
関心が高い社会保険料の問題。
ぜひ各党の考えをチェックして投票に生かしてください。
(関西テレビ 2025年7月13日放送)