長引く物価高の中、絶え間ない努力と工夫で頑張る、コストパフォーマンス抜群“利益度外視おっカネ~弁当”のリアルなお金事情を、関西テレビ田中友梨奈アナウンサーが調査しました。
■「お米の値上がりが一番厳しい」 街のお弁当屋さんの悲鳴
およそ1年前から始まった「令和の米騒動」。
少しずつは、値下がりを見せているものの、いまだ高値が続いています。その影響を大きく受け、“おっカネ~”状態になっているのが…“街のお弁当屋さん”。
今年に入ってからのお弁当屋さんの倒産件数は、去年を上回るペースで増えていて、年間で過去最多になる見通しも。
街のお弁当屋さんに聞いても…。
【街のお弁当屋さん】「食材の値上がりがひどくて、かなりしんどい。お米が高いのが一番厳しい。国産のお米じゃないと、味が違ったりする」
■これで200円!? 利益なし原価率100%のお弁当
ただ、そんな時代の流れにも負けず、驚きのコスパで提供される“利益度外視のおっカネ~弁当”が!
【田中友梨奈アナウンサー】「朝7時、京橋の商店街にやってきました。こんな朝早くからやってるお弁当屋さん、あるのでしょうか?」
まだ閑散とした朝の商店街ですが…。
【田中アナ】「ここですね!えっ?200円弁当!?」
コンビニでおにぎりを買っても200円が当たり前の時代ですが、一体どんなお弁当なんでしょう?
(Q.200円弁当ありますか?)
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「こちらです」
(Q.利益ってあるんですか?)
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「あるわけないですよね!最初のころはわずかでも利益があった。何もかも値段が上がって、いまはもう原価率100%です」
(Q.おいしい?)
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「ぜひ食べてください」
■「コロナで暗くなった店を元気にしたい!」思いで200円弁当スタート
5年前のコロナ禍、暗くなった町を元気にしたいと、200円弁当を始めました。
【田中アナ】「いただきます!…おいしい!これ200円か!とんでもないですね」
そんな200円弁当以外にも、およそ30種類のお弁当があるんです。
看板メニューは、二度あげしているのでとってもジューシー「鶏モモ肉の唐揚げ弁当」324円に、ミンチから手ごねで作った「ハンバーグ弁当」432円。どれもコスパ抜群!寺崎さんの愛情がこもった絶品弁当です!
でも、どうして寺崎さんのお店は、この値段でやっていけるのか?田中アナ、お手伝いをしながら、その秘密を探ります。
(Q.よく利用する?)
【お客さん】「そうですね。週3日ぐらい。安いから」
【お客さん】「どこ行っても、今、高いですもんね。普通に食べたら600円~700円する」
(Q.このお店助かる?)
【お客さん】「助かります。安いし、おいしいし。(お店がなくなったら)困りますよ!」
現在の営業時間は、なんと早朝の6時から、夜の11時まで。地元の人にとっては、なくてはならない存在です。
200円弁当がいくら売れても、儲けはないんですが、他の弁当も含めると、利益が出るボーダーラインは…?
■200円にこだわる理由 背景にはお客さんの一言
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「「1日に200個売らないと、厳しいです」
(Q.それでも安くする理由は?)
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「アホなんです!お客さんのことを想うと値上げができない!」
200個に届かない日もあるそうですが、こんな苦労も…。
(Q.おかずって手作り?)
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「そうですね。ひじきの煮物も店で炊いてます」
お弁当の値段を抑えるために、既製品はできる限り使わず、手作りする。もちろんその分、時間と手間はかかっています。
(Q.いつまで200円弁当続ける?)
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「やめることはない!」
(Q.なぜ200円にこだわる?)
【三代目かっちゃん店主 寺崎康弘さん(47)】「お客さんが『このお弁当あったら、一日が幸せやねん』って。僕も幸せやなあ」
■老舗のだし巻き専門店のコスパ最強ぜいたく弁当
続いて訪れたのは・・・。
【田中アナ】「京都市の上京区にやってきました!ここにさっきの200円に負けず劣らずの、コスパ最強お弁当屋さんがあるということです。それがこちらです」
創業して25年になる「柴半」。実は、地元で人気のだし巻きの専門店なんです。そんなお店が手がける、お昼限定の日替わり弁当がコスパ抜群で、とってもおいしいと大評判なんです。
店を切り盛りするのは、結婚30年の川合さんご夫妻。調理担当の健一さん(53)、そして接客担当は13歳年上の真奈美さん(66)。
(Q.早い時は何時に売り切れる?)
【川合真奈美さん】「早ければ午後0時半に終わるときもあります!早い時はね。毎日じゃないからね。それが毎日やったら私も楽やからいいんですけどね。そううまいこといかない」
多い日で1日およそ100個売れるという大人気の日替わり弁当とは?
手作りのタルタルソースがたっぷりのったチキン南蛮に、ロールキャベツ、こちらはトマトソースです!さらに、焼きナスにとろろをたっぷりかけたものなど珍しい一品も。
これら、全て600円!…なんですが、実は、これらのお弁当には、店自慢のだし巻き玉子が丸ごと1本ついてくるんです。しかもご飯は、大盛無料と大盤振る舞い。
ちなみに、お昼の時間帯以外は、単品でも販売しています。1本450円。お弁当についてくるだし巻き玉子は、これより一回り小さく、値段にすれば、およそ350円。
ということは、お弁当だけの値段は、たったの250円!これは、まさにコスパ最強ですよね。
■「だしを味わってほしい」こだわりの弁当のひみつ
【田中アナ】「いただきます!めちゃくしゃおいしい!」
【川合健一さん】「ありがとうございます。それを言うてください」
【川合真奈美さん】「だしの使い方はぜいたく!だしは特花かつおと、北海道産昆布の一番だししか使ってないから。それはぜいたくにさせてもらってる。その分、だしの魅力をお客さんに味わってほしい」
そんな、だし巻き玉子についてお客さんは…。
(Q.他の店と違う?)
【お弁当を買いに来た人】「全然違いますね。老舗の味って感じで、おいしいですね。上品です!」
ただ昨今の値上げラッシュには、ほとほと困っているようで・・・。
【川合健一さん】「卵の値上がりはスゴイですよ!今までで一番高いんちゃうかな。今はこの値段でやっていけるが、数が出なくなったら、値上げしないといけない。1個の利益が少ないから」
■コスパ最強の裏側 夫婦で24時間を振り分けて営業
まだ営業中の午後2時30分。
【川合健一さん】「ほな、あと頼むわな!お疲れさん!」
ひとり先に店を出た健一さん、実はここに、600円でやっていける“仰天な理由”が!
(Q.途中で帰られるのはなぜ?)
【川合真奈美さん】「寝なあかんから!」
【川合健一さん】「夜9時には出てくるもん!」
(Q.“仕込み”ってこと?)
【川合真奈美さん】「そうです」
そうなんです!この後、夜9時から1人で仕込みが始まるんです。それが朝までかかり、そのまま朝11時からの営業に突入。一方、真奈美さんは、ここから閉店の夜7時まで、ひとりで頑張ります。夫婦で24時間を振り分けているんです。
【川合真奈美さん】「最初やり始めた時は、『だし巻き御殿』まで夢見た。とんでもない!御殿の“ご”の字もない!」
■働いている方も買う方も両方が笑顔になれる適正価格は…
番組のスタジオではお弁当の値段が「さすがに安すぎるのでは?」という話題に。
しかし調査した田中アナウンサーによると…
【田中アナウンサー】「もちろん、『もうちょっと出してもいい』という声もあるんですけど、ただ2軒目のだし巻きのお店が50円、1回上げたことがあったんですけど、そしたらお客さんが3分の1、ちょっと離れちゃったことがあって、なかなか難しいみたいなんですよ…」
シビアな世の中です。
これに対し、京都大学大学院の藤井聡教授は「適正価格にして、消費者も納得する世の中になってほしい」と話しました。
【京都大学大学院 藤井教授】「今卵ほんまに高いですから。だから適正価格にしていただきたいんですよね。で、消費者の方が、『それ卵高いんやから』と『今お米高いんやから』と。(値上げも納得する)寛容な社会になってもらいたいですね」
働いている方も買う方も両方が笑顔になれる適正価格はいくらぐらいなのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2025年7月11日放送)