福岡市の海の中道大橋で起きた飲酒運転死亡事故からまもなく19年。
3人の子供を失った遺族が、高校生を前に初めて講演しました。
11日午後、福岡市東区の博多高校ー。
◆海の中道大橋飲酒事故で3児を亡くした 大上かおりさん
「(出産当時)この子のママになるために私が生まれたんだな。私が生まれたこと自体に、感謝の気持ちが芽生えた」
約1200人の生徒らの前で、ときに声を震わせながら話をするのは大上かおりさん。
◆大上かおりさん
「次に失った日の話をします」
2006年8月、海の中道大橋で、大上さん一家5人の乗る車は、飲酒運転の車に追突されて橋の下の海に転落。
1歳から4歳までの幼いきょうだい3人が水死しました。
家族の幸せなひとときが悪夢となった事故は、社会全体に大きな衝撃を与えました。
そんな痛ましい事故からまもなく19年。
一度、心の奥に収めた『あの日の記憶』を初めて語ります。
◆大上かおりさん
「その日、私たちはカブトムシが大好きになった子供たちと昆虫採集に行きました。自宅に戻りはじめました。海の中道大橋に差し掛かった時です。『ドン』と後ろから一台の車が追突してきました。次の瞬間、車の中に一気に水が入ってきました」
割れたフロントガラスから脱出し、水面から顔を出したとき、状況を理解しました。
大上さんは、小さな窓から再び車内に戻り、なんとか2人の子供を助け出します。
◆大上かおりさん
「2人を助け出した時に『絶対、生きて帰るぞ』『絶対に家に帰るぞ』と思いながら助けました。紘くん、あと、紘くんだけだと思いながら潜りました」
2人を夫に託し、長男の紘彬ちゃんを探すも見つからず、海面に出ると、絶望の光景が広がっていました。
◆大上かおりさん
「3人とも海の中に沈んでいました。その時に私は恐ろしい決断をしなくてはいけませんでした。もう1回、紘くんを助けに行きたいけど、助けに行っている間に3人が死んでしまう。いまさっきまで『カブトムシとりに行く』ってあんなに喜んでいたのに、本当に、たまらない。この子たちが目の前で死んじゃうのかなと。私はどうしたかというと、沙彬ちゃんと倫くんを助けることを選びました。ということは、紘彬は死ぬっていうこと」
しかし、その後、3人の子供全員が息を引き取りました。
現在、高校3年生の娘がいる大上さん。
同世代の子供たちに伝えたいのは、3人の子供が遺したメッセージです。
◆大上かおりさん
「どうして自分だけ助かったんだろう、罪悪感の中、19年間生かされている意味を考えてきました。その答えの1つをここで伝えたい。それはみんなが、ここにいるみんなが持っているかけがえのない命だということ。むごい、こんな死を迎えなければいけなかったその原因が、飲酒運転なんです。皆さんは、自分の意思で飲酒運転をしない大人になってほしいなと思います」