参議院選挙について詳しくお伝えしていく「もっと投票の前に」。
11日は「ファクトチェック」についてお伝えします。
SNSで拡散されている「真偽不明な情報」や「嘘・デマ情報」は、しっかりファクトチェックをする必要があります。
現在、話題になっている情報があります。
「生活保護を受給している世帯の3分の1は外国人が占めている」という情報がウェブ媒体の記事をもとにネットの一部で広がっていますが、これは誤りだと指摘されています。
「イット!」でも調べてみたところ、厚生労働省のデータで2023年に生活保護を受給した世帯は全国で約165万478世帯、うち外国人世帯は約4万7317世帯です。割合にすると2.9%と3分の1にははるかに及んでいません。
こういった「嘘・デマ」「事実誤認」や「過剰・切り取り」をしっかりとチェックしていかないといけません。
そこで、11日は「ファクト(事実、真実)チェック」をしていきます。
先日、「日曜報道 THE PRIME(7月6日放送)」で行われた8党首の討論を対象にSNS情報を検証していきます。
YouTubeのショート動画(縦型の短い動画)で、「日本人は田舎に住めばいい」というタイトルで「石破総理の衝撃発言」とも書かれています。
動画の内容としては、石破首相の写真とテキストとAIのナレーションで1分弱ぐらいです。
中身をかいつまむと、石破首相の発言部分の前に「外国人の不動産購入について規制は必要ですか?」というテーマにおいて、「都心に住まないといけませんか?何のためにテレワークをやってきたんですか?みんなが都心に住まなきゃとやっているからこんなことが起こるわけで」という発言を引用したうえで、「つまり『都心は外国人富裕層が住めばいい』『お金がない日本人は田舎の安いところに住め』そういう発言です」という制作者の見解がプラスされています。
ただ、この動画は過剰な表現であると言えそうです。
実際はどうなのか、放送では次のように発言しています。
石破首相(7月6日放送):
外国人であろうと日本人であろうと、投機目的で持つのは良くないけども、どこで線を引くか、何をもってして投機目的というのか。外国の法制も比較しながら早急に実態を把握する、そして対応する。もう1つは、都心に住まなきゃいけませんか。何のためにテレワークってこれだけやってきたんですか。それは皆が都市に住まなきゃっていうことをやってるからこういうことが起こるわけですよ。テレワークもずいぶんと発達をした。郊外に住みながら、地方に住みながら、東京にいるのと同じような仕事ができる。そういう価値観作るはずじゃなかったですか。それをきちんともう1回見直したいと思っています。
放送では「日本人は田舎に住めばいい」という発言はありませんでした。
前後の文脈を見ても、「テレワークも普及している中で都心と同じように仕事ができる価値観を作っていく・見直す」という発言をしているため、これは発言の曲解・過剰表現と言えます。
続いては、参政党・神谷代表の事実誤認の指摘がされている発言があるということで検証していきます。
同じく「日曜報道 THE PRIME」にて、外国人の不動産購入規制のテーマで神谷代表が質問を受けたときの発言です。
「外国人の相続税」という部分に着目して見ていきます。
参政党・神谷宗幣代表(7月6日放送):
結局、日本なのに日本人が(不動産)買えなくて、外国人が都市部のいいところを持っているというのはやっぱり矛盾してますということです。あともう1つ、日本には相続税というものがあるんですけど、オーストラリアとか中国とか相続税ないから、彼らは買っておいて日本に住んでなければ、我々相続税の取りようがないんです。そうなると、日本人は不動産持っていたら必ず相続税でたくさん税金を払わないといけないけれども、海外の人たちは払わなくていいと。こうなると、もうフラットな平等ではないので、そういった相続税を彼らが自由に(不動産を)買えるんだったら、相続税をそもそもなくしてしまうとか、それぐらいの条件を整備しないと、日本も日本人が買い負けるということになると思います。
「オーストラリアや中国は相続税がないために日本に住んでいなければ我々は相続税のとりようがない(中略)海外の人たちは払わなくていい」という発言がありました。
これについて、まず「中国とオーストラリアに相続税がない」という部分は、「イット!」でも確認したところ、相続税はありませんでした。
「(日本の相続税を)取りようがない・海外の人たちは払わなくていい」という部分に関してチェックしていきます。
国税庁によりますと、日本国内にある土地や建物などの資産の場合、所有者・相続人の国籍・居住地に関係なく日本で相続税が課税されるということで、課税対象になっているということでした。
この点について参政党に取材をしました。
参政党は「『相続税が取りようがない』という表現は制度上の課税対象か否かではなく、実務上の追跡や徴収が困難なケースが現に存在しているという事実に基づいたもの」としていて、「国税庁が制度的には課税可能としている点は承知をしている」という話でした。
さらに、連絡先が不明な場合などいくつかの例を挙げて「制度と現実の乖離(かいり)に対する問題提起としてご理解いただければ幸いです」と参政党側からコメントがありました。
これに対して、国税庁に「外国人の不動産相続税を徴収しきれていない実態はあるか」を聞きました。
すると、「あらゆるテクニカルな手段をフルに活用して適切に課税・徴収している」ということでした。
また、国税庁の関係者によると、「決定処分といったような手続きがあるため、住所や連絡先が分からないからといって相続税がとれないということには違和感がある」という話がありました。
結果としては、参政党は「相続税がかからない」という趣旨での発言ではないことは分かりましたが、「海外の人たちは払わなくていい」という言葉で誤った認識を広げかねない発言と言えます。
青井実キャスター:
柳澤さん、テレビを見ている中で相続税についてよく知らなかったら、どうなのかなと思ってしまいますよね?
SPキャスター・柳澤秀夫氏:
真に受けてしまう人も出てくると思うんですよ。SNSの世界で、あるいは普通のメディアもそうですけど、何かあった時に「選挙の期間中だから何を言ってもいい」「事実に基づかないことを言っていい」ということじゃありませんから、1つ1つチェックしないといけませんし、このファクトチェックで実はもう1つ大切なのはスピードですよね。できるだけ早く、事実と違っていれば、それを否定しないといけない。このスピードが伴わないとなかなかファクトチェックは難しいと思います。
青井実キャスター:
伝え手もそうだし受け取り手もしっかりと見なきゃいけないと。