袋井市に住む中国籍の男子高校生に暴行を加えてケガをさせた上、車のトランク内に監禁し、浜名湖畔の川に投げ捨て溺死させた罪に問われているフィリピン国籍の男の裁判員裁判が7月9日に結審し、検察は懲役19年を求刑した。一方で、弁護側は少年院送致を主張している。

傷害・監禁・殺人の罪で起訴されているのはフィリピン国籍で浜松市に住む無職の男(19)で、起訴状によると被告は2024年2月、懲役17年の判決を受けた無職の男(22)と共に袋井市に住む中国籍の男子高校生(当時17)の顔や体を殴ったり蹴ったりしたほか、ガラス製の酒瓶で頭を2回殴打し、体を数回にわたって十字レンチで殴った上、後頭部をコンクリート製の輪留めに打ち付け、意識を著しく低下させるケガをさせたとされている。

また、瀕死状態の高校生を車のトランクに押し込んで監禁し、移動した先でも顔面を複数回蹴ったほか、頭を3回地面に打ち付け、最後は湖につながる川へと突き落として溺死させたと見られている。

これまでの裁判で、検察側は事件に至ったきっかけについて、知人宅で男子高校生を含む8人で酒を飲んでいた際、男子高校生が年上である被告に敬語を使わずに話しかけ、注意されたにも関わらず、その後も“タメ口”で話し続けたことから被告が怒りを増幅させたと明らかにしているが、被告は「感情のコントロールができなかった」と口にしつつ「殺すつもりはなかった」と殺意を否定。

ただ、検察側は「昏睡状態に近い高校生を湖に転落させた行為は死亡させる危険性が極めて高い行為で、当時の水温や気温などから被告もその危険性を十分にわかっていた」と指摘している。

こうした中、7月9日に開かれた裁判で、検察側は改めて「医学的な見地から意識障害に陥った状態で湖に落ちれば亡くなるおそれが極めて高い状態であったという評価は揺るがない」と述べ、被告の「男子高校生が死なないと思っていた」という供述は不自然で信用できないとして「被告が男子高校生を死亡させる危険性が極めて高い行為であることを認識していた」と結論付けた。

その上で、男子高校生のあらゆる言動に苛立ちを募らせたほか、妹のようにおもっていた女性が男子高校生に倒され怒りを爆発させるなど殺害する強い動機があり、犯行態様が極めて悪質で経緯に酌量すべき点がないことや遺族の処罰感情が厳しいこと、被告が各犯行において重要な役割を果たしたことなどを鑑みて懲役19年を求刑している。

これに対し、弁護側は「共犯の男の証言が信用できないことは明らかで、被告の説明は信用できる。男子高校生に対して不満やイライラした感情は持っていたが、それだけで殺意につながるとは言えず殺害する動機はない」と反論。

被告はフィリピン国籍であり、1年以上の懲役が確定すると強制送還になることから「国外退去になると家族の同居による監督ができず更生につながらない」と少年院への送致による保護処分が相当であると訴え、仮に認められない場合でも懲役8年が妥当と主張した。

判決は7月18日に言い渡される。

テレビ静岡
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