参加者はコメのありがたみを再認識したようです。コメを食べて山都町の景観維持につなげる『つながるシェア田』という取り組みの一環で、6月、田植えが行われました。
【シェア田 生産者代表 松川 陽一さん】
「黄色い綱を両サイドに引っ張るのでその赤い粒のところに1~2本この苗を取って植える」
山都町菅地区。約140人が暮らすこの集落に、6月、全国各地から約30人が集まりました。
この日は、『つながるシェア田』という取り組みの一環で、田植えが行われていました。
【田植えの様子】
『つながるシェア田』とは、いわば棚田のオーナー制度。
参加者が会費を払うことで、生産者から無農薬米が定期的に届けられます。
ことしで11年目を迎えたこの取り組みは、山都町の景観維持と密接に関わっています。
農林水産省が選ぶ『つなぐ棚田遺産』に認定された山都町の田んぼですが、高齢化による農業人口の減少などで、その数は減ってきています。
山都町によると、2017年度の菅地区の田んぼの数は383。
面積は、約21万7000平方メートルでした。
しかし、今年度のデータでは、田んぼの数は307と、8年前から約2割減少。
面積も、約17万9000平方メートルと数を減らしています。
美しい風景が失われつつあるこの現状を変えるため、台所文化伝承家の中原 麻衣子さんは、『つながるシェア田』を始めました。
【シェア田主催つながるキッチン 代表 中原 麻衣子さん】
「山都町に一人でも多くの方に足を運んでもらい、この土地を知っていただくことが
私にできることだと思って」
年々、参加者は増え、5年前からは田植えや稲刈りの体験も実施しています。
そしてことしも、田植えの時期がやってきました。
慣れない田んぼでの作業ですが、参加者は楽しみながら苗を植えていきます。
【参加者】
「思ったより深い。脚がとられる感覚は初めて。すごく楽しい。
このように植えてくれたものがお米になると考えると、大切さが分かっていい」
コメ不足が叫ばれるいま、改めてコメのありがたみを再認識している参加者も多いようです。
【参加者】
「米の値段について世間で(いろいろ)言われているが、この作業を考えると、米には人の手、自然の力、特に農家のものすごい努力があって、私たちが米を食べられているのだと実感する」
参加者の中には、シェア田歴9年目という元メジャーリーガの岡島 秀樹さんの姿も。
【岡島 秀樹さん】
「東京ではできない感覚なので、(山都町に)来ないとできない感覚」
このシェア田、今では全国に約120組のオーナーがいるほど広がりを見せています。
【シェア田生産者代表 松川 陽一さん】
「とにかく一生懸命に作った米を『おいしい』って食べてくれるのが一番うれしい。
自分たちは農地を守ることを目的にやっている。高齢化でこの辺りも田んぼが
空いてきているのをなくしたい。(田んぼを)いかに守れるか、やれる限りはやりたい」
【シェア田主催つながるキッチン 代表 中原 麻衣子さん】
「オーナーが増えることで、棚田の面積が増えていく。〈生産者の数も増えていけば
いいな〉という思いがある。生産者にとって、オーナーにとってウエルビーイングが上がっていく取り組みだと思っているので、この先、また10年継続して頑張りたい」
山都町の美しい景観を未来に残すために。山都町と全国のオーナーは、米を通じて、これからもつながりを深めていきます。