刑罰などを定める改正刑法が施行されてから1カ月が経った。「懲役刑」と「禁錮刑」が廃止され、新たに「拘禁刑」が導入された。「拘禁刑」とは何なのか、また、導入の背景にあるものとは何なのか?専門家と元受刑者に取材した。

新たな刑罰 「拘禁刑」とは…?

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これまでの刑罰のうち、「懲役刑」では、刑務所で受刑者に金属加工などの作業を義務として行わせていた。一方、「禁固刑」は、刑務所に収監するものの、作業が義務付けられていなかった。これら、「懲役刑」と「禁錮刑」が今回の改正により廃止され、新たに導入されたのが「拘禁刑」だ。

2025年6月1日から、これまでの「懲役刑」と「禁錮刑」に代わり、新しく導入された刑罰「拘禁刑」。刑罰が変わるのは、1907年の刑法制定以来、初めてだ。「拘禁刑」について、法律に詳しい宮崎産業経営大学の上野純也講師に聞いた。

宮崎産業経営大学・法学部 上野純也講師:
「懲役刑」は、どちらかというと労働をさせることによる罰の面が強かった。今回「拘禁刑」になり、義務ではなく、あくまで本人の社会復帰に必要な範囲で作業や指導をするという形に変わる。

法務省によると、新たに導入された「拘禁刑」では、義務としての刑務作業は廃止に。更生のために必要な作業や指導を行い、社会復帰を目指すとしている。

宮崎産業経営大学・法学部 上野純也講師:
本人がどういう原因で犯罪をして、どんな理由で刑務所に入っているかということを考慮できるようになった。

法務省によると、「拘禁刑」のもとでは薬物などの依存者、高齢者、障害者など24のグループに分け、それぞれの特性に合わせて、これまでより効果的に指導が行われるそうだ。

宮崎産業経営大学・法学部 上野純也講師:
やはり、最終的には本人が自律的に社会で生活できるようになるのが、「拘禁刑」の第一の目標と考えられる。

元受刑者は…

「拘禁刑」導入の大きな目的である、自立と社会復帰。テレビ宮崎では、宮崎市の更生施設で社会復帰を目指す元受刑者の男性を取材することができた。

男性は2022年、63歳の時、コンビニでパンなど数百円相当を万引きし、窃盗で服役。2025年1月、宮崎刑務所から出所したということだ。

窃盗で服役した男性:
お金は持っていたが、手でカメラに向かって品物を見せて懐に入れた。それで自分でお金も払わずに出ていった。それで捕まった。その時の気持ちが、僕自身も分からない。

刑務所内での刑務作業は折り鶴などの単純作業が多かったという。

Q.作業は社会復帰につながったと思いますか?

窃盗で服役した男性:
いや、僕は何も思わなかった。捕まったらこういうことをするのかという感じ。みじめになりましたね。部屋で一人で折っているわけでしょ。これをどれぐらい続けるのかなと思った。娘に会いたいなとか、色んなことを考えながら折っていた。もう二度としないと思った。悪いことは。

また、男性によると刑務所には一度は出所したものの、再び罪を犯して戻ってくる人もいたそうだ。

窃盗で服役した男性:
なんでそんなに何回も来たのか聞いたら、「いや分からないけどしてしまった。もう癖になってしまった」と言っていた。

再犯防止推進白書(再犯者の割合)によると、2023年に検挙された刑法犯の再犯率は47%で、10年間で高止まりしているのが分かる。それぞれの特性に応じた処遇を行い、再犯を防ぐのも「拘禁刑」の目的の一つである。

元受刑者などの更生を支援する保護司は、「拘禁刑」について、全国の刑務所が連携し、受刑者の特性に合わせて特定の刑務所で指導や作業をすることが効果的だと話す。

みやざき青雲 保護司・補導員 横山公美さん:
全国に刑務所はある。ケースケースに合った仕事を全国ネットでやって、その子に応じた仕事(作業)を見つけて、そちら(刑務所)に移してくれたら、うまくいくんじゃないかな。

法務省によると、「拘禁刑」の対象になるのは2025年6月1日以降の事件や事故だ。

ただ、宮崎産業経営大学の上野講師によると、受刑者に適切な処遇を誰がどのように決めるのか、また「拘禁刑」に必要な作業や指導を行うために、地域や民間と上手く連携ができるのかなど課題は多くある。

どうすれば犯罪から立ち直った人を受け入れられるのか、社会全体で考えることが大切だ。

(テレビ宮崎)

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