2020年7月豪雨で甚大な被害を受けた球磨村の神瀬地区に住民が集える新たな交流の拠点が完成しました。

豪雨から5年がたち、人口が減る中、古里の復興を信じ、歩みを進める〈神瀬の今〉を取材しました。

【神瀬地区 上蔀 修 さん】
「これから大事に大事に毎日使うつもりでいるので、本当に今日はありがとうございました」

7月5日、球磨村神瀬地区で開かれた落成式。

日本財団からの支援を受け、熊本県建築住宅センターが整備した〈みんなの家〉が地区に寄贈されました。

みんなの家の〈初代館長〉に就任した上蔀 修(うわしとみ・おさむ)さんは豪雨で自宅が被災しました。

仮設住宅を経て、今年2月、古里に戻り、村が整備した被災者向けの住宅で暮らしています。

【上蔀 修 さん】
「非常にうれしい。5年待ったので。年配の人が多いので、たまにコーヒーを振る舞っている。一人暮らしの年配の人が集える場所にしたい」

神瀬地区は5年前のあの日、氾濫した球磨川と支流の川内川の濁流が集落内の住宅をのみ込みました。

【上蔀 忠成 さん】
「この家も2階まで水に漬かった」

上蔀 忠成(うわしとみ・ただなり)さんは当時、家族と近所の住民合わせて20人を自宅の2階に避難させていました。

【上蔀 忠成 さん】
「どんどん水位が上がってきたけど、明るくなるまで何もできないので…。そしたら目の前に消防団いてくれた」

【住民ON】
「これでみんな助かったね」

これは当時の映像。上蔀さん宅の2階に避難していた住民らが建物の屋根伝いに高台へと向かいます。

その先には、消防団員らがボートの代わりに用意した保育園のプールが…。

これに乗って全員無事、救助されました。

多くの住宅が水に漬かった中心部では、国が治水対策で2023年3月から宅地や国道219号線を最大2.9メートルかさ上げする工事を行っていて、今年度中の完了を目指しています。

水に漬かった自宅を解体せず残すことにした上蔀さん。

国の宅地かさ上げ事業によって自宅は約2.5メートルかさ上げされましたが、まだ住める状態ではありません。

【上蔀 忠成 さん】
「きれいにすれば住めるので問題ない。今からです」

家族と暮らす球磨村渡の災害公営住宅から通いながら少しずつリフォームを進めています。しかし…。

【上蔀 忠成 さん】
「家族がここに戻ってくることは多分ないと思う、今の考えでは。〈生きるか、死ぬか〉の災害を経験したら、住みたくないと思う」

神瀬へ戻るのをためらう家族の思いを受け止めつつも、古里に思いを寄せます。

【上蔀 忠成 さん】
「神瀬に住む価値はある」
(どんなところが魅力?)
「ここで暮らす人たちの人間性、仲間が一番」

この日、集落では〈みんなの家〉の完成を祝って住民らが企画したイベント〈神瀬の集い〉が開かれました。

イベントには、古里を離れた住民や災害直後から支援を続けるボランティアなど約100人が参加。地区の婦人会、通称『神瀬マダム』が用意した料理を味わいながら親睦を深めました。

【大岩 清子 さん】
「人が集落に集まるのが一番うれしい。普段は本当に寂しいので」

〈みんなの家〉の初代館長、上蔀 修さんは、『おさむカフェ』を開店。住民らに飲み物を振る舞いました。

【上蔀 修 さん】
「帰ってくる人は少ないと思う。空き地が残っているのでいい雰囲気をつくっていけば外からでも人を呼び込めると思う」

豪雨から5年がたち、人口減少、過疎化が加速する中、被災地では古里を復興させようと懸命に生きる人たちがいます。

テレビ熊本
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