恩返しの日本酒です。2024年12月、火事で焼けた長野県佐久市の老舗酒蔵が、仲間の酒蔵の設備を借りて仕込んだ日本酒の販売を始めました。社長は酒蔵の再建も見据え「一歩ずつ前に進んでいきたい」としています。
2025年7月6日のJR佐久平駅。
佐久地域の酒蔵:
「佐久の『佐久の花』さんの酒ですね」
自由通路で行われたのは、佐久地域の13の酒蔵の日本酒を集めたイベントです。
試飲した人:
「今飲んでいるのはいい香りがする、(お酒が)いろいろあって面白いですね」
その中に、特別な思いが込められた日本酒がありました。
「深山桜(みやまざくら)・和和和(わわわ)」。
造ったのは佐久市の古屋酒造店の5代目・荻原深さんです。
酒蔵の仲間たちの支援を受けながら造った「恩返しの日本酒」です。
古屋酒造店 荻原社長:
「ここに至るにあたって、どう考えても1人では何もできなかったので、いろいろな人の助けを借りて、ここまで来て感謝の気持ちが一番大きなところ」
2024年12月、荻原さんの酒蔵は火災に見舞われました。
130年以上の歴史がある酒蔵と住宅が全焼し、米などの原料や設備の全てを失いました。
古屋酒造店 荻原社長(2025年4月):
「悔しさというか、自分の無力感も感じた。火災直後は、もう本当に酒造りに関して全く何も考えることができませんでした」
一度は諦めかけた「酒造り」。
そんな時、手を差し伸べたのが、日本酒造りの仲間たちでした。
佐久地域の13の酒蔵は、共同で酒米づくりや仕込みをするなど普段から協力しています。
火事の後、長野県佐久穂町の黒澤酒造が支援を申し出て、荻原さんは設備を借りて酒造りを再開することを決めました。
地元の酒米を使って仕込み、約1か月かけて完成したのが、「深山桜・和和和」です。
古屋酒造店 荻原社長(2025年5月):
「すごく上品な香りがあるので、いい出来になったんじゃないかと思う」
7月6日のイベントでは、完成した日本酒を初めて振る舞いました。
試飲した人:
「軽めな、フルーティーな感じがする。お肉にもお魚にもたぶん合う」
「13蔵が12蔵になるのかと、もう飲めないのかと言うのもあったんですけど、今日飲めたので良かったです。すごく甘くて飲みやすかったので、ごくごく飲んじゃいそう」
ラベルには、13の酒蔵の場所が示され、日本酒ができるまでの経緯や感謝の言葉が記されています。
仲間の酒蔵はー
黒澤酒造杜氏 黒澤洋平さん:
「とても柔らかくて、私としてはいいお酒にはなっていると思うんですが、まだまだ(荻原)深さんの納得のいくお酒にはなっていないと思うので、自分でどんどん造っていただける日がくればいいな」
仲間たちの支援を受けて酒造りを再開した荻原さん。
酒蔵の再建も見据え前に進んでいきたいとしています。
古屋酒造店 荻原社長:
「飲んでいただいて、感想の声を聞いたりして、また、励ましの言葉も聞いたりして、前に進んでいくための背中を押してくれるというか、いい機会だった。なんとか再建に向かって、どういう形があるのか模索している最中ですので、そこに向かって一歩ずつ前に進んでいければ」