モンゴルを訪問中の天皇皇后両陛下は、終戦後旧ソ連に抑留され、モンゴルで亡くなった日本人の慰霊碑を拝礼されました。
日本時間8日午後3時ごろ、両陛下はウランバートル郊外にある「日本人死亡者慰霊碑」を訪問されました。
終戦時、旧ソ連の捕虜のうち、1万4000人がモンゴルへと連行され、1700人以上が亡くなりました。
抑留中に亡くなったすべての日本人の慰霊碑は、ウランバートルを一望する丘の上にあり、陛下は18年前にも皇太子として拝礼されています。
天皇としての訪問は今回が初めてで、陛下は皇后さまとともに「祈りの広場」で、モンゴル各地にあった収容所の説明を受けたあと、慰霊碑へとゆっくり進み、碑の前に白い花輪を供え、深く拝礼し、犠牲者を悼まれました。
広場には、父親をモンゴル抑留中に亡くした遺族の鈴木富佐江さんが立ち会い、両陛下は歩み寄り、声をかけられました。
遺族の鈴木富佐江さん:
大事な歴史を若い方につないでいってほしいと伝えていきたい。
両陛下は過酷な強制労働により、遠い異国の地で命を落とした人たちに祈りをささげられました。
ウランバートル郊外の慰霊碑から、フジテレビ社会部・宮崎千歳記者の中継です。
草原やゲル地区を見渡す丘の上に、日本人抑留者の慰霊碑があります。
両陛下が深く黙とうをささげられると、一帯が静かな祈りに包まれました。
両陛下は約1分間にわたり深く頭を下げ、犠牲者を悼まれました。
戦後生まれの陛下は戦後80年にあたり、硫黄島、沖縄、広島へ慰霊の旅を重ね、体験した人たちから直接話を聞き、戦争の記憶を次の世代に継承していくことを大切に考えられています。
夏は青い草原が広がるモンゴルは、冬場は氷点下30度にもなり、過酷な強制労働により命を落とした日本人抑留者の存在はあまり知られていません。
今回、両陛下の祈りに立ち会った遺族の鈴木富佐江さんは、モンゴル抑留で父を亡くし、10回以上、慰霊碑へのお参りを続けてきました。
鈴木富佐江さん:
こういう悲しみがいっぱい日本の礎になっていること、そして発展して立派な日本ができたこと。私は本当に涙をこらえるのがいっぱいでございます。
皇太子時代から抑留者に心を寄せ、18年前にも拝礼している陛下は、今回、歴代の天皇として初めて抑留の地の慰霊碑に足を運ばれました。
土砂降りだった雨が、両陛下が慰霊碑の前に歩み出ると急に雨脚が収まり、慰霊を終え、あとにする際に陛下が皇后さまに声をかけ、お二人で再度慰霊碑の前に戻り、約10秒間深く拝礼されました。
遺族の思いを受け止め、心のこもったお姿だと感じました。
――拝礼の際のご様子は?
私は前回の陛下の拝礼にも同行しています。
穏やかな表情の中に、天皇として戦争の記憶と向き合う強い覚悟と、知られざる歴史が将来に受け継がれることを願う強い思いを、異国の地での祈りによって示されたと感じました。