「人間としてどうなのか」高級ワイン詐欺で被害者語る

富山県内の飲食店で高級ワインを注文し、店主に代金を前払いさせて姿を現さない特殊詐欺が発生している。被害に遭った創作和食居酒屋の経営者は「善意でやっている人をだますっていうのは人間としてどうかと」と憤りを隠せない様子だ。
予約電話から始まった詐欺の手口

被害に遭ったのは富山駅近くにある人気の創作和食居酒屋。2日と3日は予約でほぼ満席という繁盛ぶりだ。事件は先月24日の夜、店にかかってきた一本の電話から始まった。
「『白川』という名前で予約をもらった。『医者を迎えたい』とコース料理を前日に予約された」と経営者は語る。

電話の主は「白川」と名乗る男性で、翌25日の夜に医師との会食があるとして、約1万5000円のコース料理を6人分予約した。その後の連絡はLINEで行いたいと申し出があり、店側はそれに応じた。

96万円の高級ワインが届かない
当日になって、「白川」は会食で飲みたいワインを具体的に指定してきた。

「『シャトー・オー・ブリオンの1989年ものが飲みたいので、店で用意してくれ』と『そんなワインは用意できない』と言うと、『紹介する指定の業者があるので、ここから仕入れておいてほしい』と」
男が要求したのは1本20万円以上する年代物の高級ワインだ。店主は不審に思いながらも、指定された銀行口座に4本分96万円を振り込み、代金を立て替えた。しかし、予約の時間になってもワインは届かず、「白川」も現れなかった。
「金に関してはあきらめている。いつか(犯人に)報いが来るんじゃないか。それを祈るしかない」と経営者は諦めの表情を見せる。
全国に広がる同様の手口

この詐欺は富山市の他の飲食店でも確認されている。ある店ではLINEのトーク画面でやり取りした後、証拠隠滅のためかメッセージが取り消され、「白川」という名前が「佐藤」に変わっていた。
FNNの取材によると、「白川」「佐藤」のほか、「古賀」や「渡辺」などの名前を名乗る同様の手口の被害が全国で発生しているという。被害者は2日、警察に被害届を提出した。
富山県警は複数の飲食店からこうした詐欺の相談を受けており、高級ワインの指定やLINEを使った手口に注意するよう呼びかけている。店主の善意に付け込む卑劣な犯行に対し、警察の早期の解決が望まれる。