30日放送の関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」に生出演した小泉進次郎農林水産大臣は、中継先の農家の質問にも答えていきました。
その中で、「生産者も利益出る政策を」という質問には、安価な米を希望する「『消費者の声』と『生産者の手取り』を両立する環境をつくっていきたい」と述べるとともに、「今までみたいに、『できる限り作らないでください』じゃなくて、『作りたい』という方の思いが反映できるような、そんな方向に向けて、増産も含めて検討している」と話しました。
■「大臣に期待している」と農家 「理解を深めたい」と小泉農水相
番組では、京都府京田辺市の農業関係者の方25名ほどに集まってもらい、米農家を代表して、松井正彦さんから小泉農水相に質問してもらいました。
まず米の差額に関して、聞きたい事があるということです。
【京田辺市の米農家 松井正彦さん】「消費者は安くておいしい米を求めています。我々生産者は、利益が出るように米の価格を維持していただきたいと思っております。国の方で、我々生産者も利益が出るような政策を考えていただきたいと思っております」
【小泉進次郎農水相】
「松井さんこんにちは。きょうはお忙しいところ、しかも外で、田んぼの前で、大勢のお仲間の農家さんも含めてお集まりいただいてありがとうございます。松井さんも含め米農家さんの皆さんからすれば、私は決して歓迎できない存在かもしれませんよね。今は。米の価格を下げるなんてふざけんなと」
【京田辺市の米農家 松井正彦さん】「いや、ふざけんなじゃなくて、また何かやってくれるだろうと期待はしております」
【小泉進次郎農水相】
「ありがとうございます。何とかこれだけ高止まりをしている米の価格を、1回落ち着かせに行かないと、消費者の米離れ、それと外国産米が去年と120倍多く入ってる、このことを食い止められないという思いから、今1回冷まさなきゃいけない、そんな思いでやっています。
ただ生産者の皆さんがお分かりの通り、2000円で流している備蓄米は古米です。そして皆さんがこれから作って、出荷をして頂けるその米は新米です。この価格は当然同じものではありません。こういった米価格高騰を受けて、国民の皆さんがかなり米について関心を持っていただいて、そして私が今回1回、備蓄米でお米の価格は下げに行きますっていうことで、『米農家さん大丈夫か』という思いを持っている国民の皆さんも増えると思うんですよ。
このことを通じて、消費者の声も、そして生産者の皆さんの手取りも、両立できる環境を作っていきたい。消費者と生産者の皆さんの距離が縮まって、双方の理解が深まる一致点を見出したいと思っています。それでこれから、備蓄米相当出してますから、マーケットの環境が整ったら、備蓄米を元の水準に戻していく。こういったことも当然考えていますから、これから前向きに今までみたいに、『できる限り作らないでください』じゃなくて、『作りたい』という方の思いが反映できるような、そんな方向に向けて、増産も含めて検討しているところです」
【京田辺市の米農家 松井正彦さん】「どうぞよろしくお願いします」
■「地域や人を支える」小泉農水相が示す日本農業への長期ビジョン
【青木源太キャスター】「今、『増産も含めて検討している』、『作りたいという人がもっと作れるよう』にということですけれども、米の生産量をもっと上げていく政策を打っていくということなんでしょうか?」
【小泉進次郎農水相】
「これは実際に、いま方向性としては、『もう作らないでください』という方向から、意欲を持って『作りたい』という方には、作っていただける環境を作るための政策づくり。例えば米が安くなって暴落した時に、どのような支え方が一番農家にとっては不安がないだろうかと。例えば収入保険という保険が既にあります。ただこの収入保険についても、より強化をしたり、見直す必要があるかもしれないと。
一方で今、直接支払と言う形で農家さんの環境に応じて、直接的に支援をするという方法もあるんですが、これも何ができるのか、そんなことも考え方としてはあります。ですので、今後は何よりも、将来やはり、きょうは京都の皆さんですけど、10年後の地域計画を見た時に、誰も耕作者が見通しが立たないという地域も出てきてるんですよね。
実は中国地方は、10年後に約6割が、耕作者が見つからない。こういうかなり危機的な地域もあるんです。全国平均で3割の農地が、誰も耕作者が見つからない、こういった時に『安心して将来農業をやっていこう』この環境作りは、私は一番大事なことだと思ってますので、今この米の価格を下げにいくことが最大というよりも、将来、日本の食を担っていく、そういった地域や人を支えていく。このことが絶対やらなければいけないことだというのは、もちろん考えておりますので、そこを安心していただければなと思います」
■「まとめられない所まで無理はしない」 小泉農水相が語る農業政策の現実路線
【京田辺市の米農家 松井正彦さん】「国の方は大規模農家を奨励しておられます。我々、中小規模の家族経営の農家は今後、国としてはどういうふうに対応していただけるのか?また、我々を守っていただけるのか?」
【小泉進次郎農水相】
「大規模化は与野党を通じて、『進められるところは進めなければいけない』と認識は共有されていることなんですが、松井さんなどにもご理解いただきたいのは、『絶対にまとめられない所まで、まとめようとしてる』ということではありません。
これから農業者、間違いなく数が減ります。平均年齢、米農家さんで言うと70歳ですから。その時により少ない人数でも、効率的に労働の負担が過度にならずに、米作りや農業が出来るようにするには、『まとめられる所は、まとめなければいけない』これはご理解いただけると思います。
一方で、条件不利地とか、中山間地とか、棚田とか、これは全く別の支え方をしなければいけないという所には、『より適切な支え方は、何だろうか』これもちろん考えています。今の環境支払いとか、中山間地直接支払い、こういったこともありますが、より適切な支え方がないのか、これも令和9年度の水田政策の大転換に向けて、しっかりと議論して行きますので、また直接お声をこれからも各地から聞いていきたいと思います」
■「森山幹事長との対立?」 小泉農水相が明言「相当な見立て違い」
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「現役の農水省職員の方にお話を聞いたら、確かに農家さんへの例えば補償みたいなことを考えていく際に、やっぱり必要なのは財源になってくるんだけれども、『財務省に門前払いされてしまう現状がある』ということを嘆いていらっしゃいました。特にお財布を握っているのが、森山幹事長であるのだと。だからそのあたり、もしかすると大臣が一番戦わなきゃいけないのは、身内でもある森山さんなんじゃないかという声も聞かれましたが、その辺りどうお感じになられますか?」
【小泉進次郎農水相】
「仮に今、加藤さんが話を聞いた農水省の現役職員が、そういうふうに言ってるとしたら、相当な見立て違いだと思います。そんな心配は、全くないと申し上げたいと思います」
【青木源太キャスター】「小泉大臣が先ほどおっしゃった、色んな施策に、例えばお金がかかるとしても、それは小泉大臣の権限で、どんどん打って行けるということですか?」
【小泉進次郎農水相】
「これはまず大臣は、予算を要求する権限も、そして法律をこのように作りますという、そういったこともできますから。その中でもちろん与党と相談をすること、最終的には財務省も含めて、政府内の調整をするのは当然のことなんです。
そして要求すれば、全て取れるかと言ったら、それはそんな簡単なものではありません。なぜ必要なのかというのは、説明しなきゃいけません。ただその時に、私さっきも申し上げましたが、ある意味今って、農業の緊急事態のようなものだと思ってるんです。
これから10年後を見た時に、地域によっては6割の農地に耕作者がいない。これを放置していたら、これから日本の安全保障そのものでもある食糧安全保障が成り立ちません。こういったことに対して予算の要求をするのは当然です。
ですから今回、今までの予算とは別枠で、2.5兆円を5年間で使いたい。そして規模拡大もちゃんとやりたい。基盤整備もやりたい。そしてスマート農業という若い方々が、これからより労働の過度な負担がないような形で、さらに農業を前進させたい。このことはすでに別枠の予算でやるという方向性も出ています。
なので、農水省の職員の中でそういう『いやなかなか厳しい』と言ってるとしたら、そういう職員の頭も変えるために、大臣としてもさらに頑張らなければいけないなと思ってます」
■「同じやり方では守れない」 小泉農水相が語る農業改革の必然性
【政治ジャーナリスト 青山和弘さん】「ただ、直接支払を先ほど検討するという話もしてました。ただ小泉大臣が言っているように、米を増産して余ったら、それは輸出もする。そういうことを考えると、どうしても米のコストは下げていかなきゃいけない、値段ももちろんそんなに上がるわけにはいかない。そうするとどうしても効率の悪い零細農家とか兼業の米農家というところを、大規模化、集約化という方向のために、直接支払いの条件も変えていく必要が出てくると思うんですね。ただ、棚田を守るとか、この辺りの線引きは、極めて難しいと思うんですよ。ある程度、それは犠牲が出ても仕方がないから、やはり日本の農業の構造改革を進めていくという、そういう覚悟を持っていらっしゃるという思いで、考えてよろしいでしょうか」
【小泉進次郎農水相】
「これはですね、いま京都の田んぼの目の前にいらっしゃる松井さんも含めた農業者の皆さんとも、ご理解をいただけるような対話を重ねていかなければいけないと思ってるのは、一番招いてはいけないことは、この10年後に誰もいない農地を手付かずにすることだと思うんですよ。
そこに外から新たなプレイヤーを連れてくる。これは新規参入の農家もそうですし、また企業参入もそうだと思います。こういったことも含めて、今までと同じだったら守れるものも守れない。その守り方も変えていかなければいけない。このことについては、こちらが今考えていることも含めて、お話をさせていただくことが大事だと思っています。
ただ農業者の皆さんも求めていることは、代々守ってきたこの農地を、誰も耕作せず、そして次の世代につなげない、こういったことを一番招いてはいけないという思いは、共有していると思いますので、その守り方、次の世代へのつなぎ方、私はこう言ったことについては、一点が見られると思います。そこは諦めてはいけないと思います」
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年6月30日放送)