福島テレビの気象予報士・清野貴大が、あらゆる角度から気象にまつわるアレコレを楽しく深く解説。今回は、夏の始まりのころにだけ楽しむことができる光景・ホタルの乱舞がみられる素敵なスポットを取材した。
■子どもたちに見せたい自然
辺りも暗くなった午後7時。吸い込まれるように続々と車が集まってきたのは、福島県福島市を流れる荒川の河川敷。草木が茂る場所に「ほたるの森」がある。
「普通ホタルの鑑賞は平坦に見る。ここは凹凸があって、これが自然本来のホタルの生息地」と語るのは、「荒川ほたるの森」を案内している安原光一さん。
震災直後、外で遊ぶ機会が少なくなった子どもたちに、自然の良さを伝えたいと活動を始めた。
■豊富なエサときれいな水
この森では、ゲンジボタルとヘイケボタルが乱舞する。たくさんのホタルが生息する理由はホタルのエサが豊富なこと。ホタルが生息するために欠かせない、巻貝の一種・カワニナ。荒川に自生するクレソンの根で繁殖している。
そして、水がきれいなことも理由の一つ。荒川は14年連続で水質が日本一となっている。
■通常より長く鑑賞できる環境
通常同じ場所でホタルが観賞できるのは1、2週間ほどだが、こちらでは2カ月もの長い間、ホタルが飛び交うそう。(※6月上旬から8月中旬頃まで)
河川敷のいたる所から湧き出る、冷たい伏流水。そして、田んぼの用水路をめぐってきた温かい水が合流することで、場所によって水温が異なる。この水温の違いが、長く鑑賞できる秘密だという。
■台風 ホタル激減の危機
そして一番大切なことが「自然に一切手を加えていない」こと。ホタルの幼虫を放つことなどもせず、ありのままの自然を守り続けている。安原さんは「自然を9割利用させて頂いて、私がやっていることは大したことでない。観察してどうなのかってことを繰り返しているだけなので」という。
だからこそ、困難もあった。2019年の東日本台風では、住処となる河川敷の草木が流され、ホタルは激減。それでも少しずつ、草木は生い茂り、ホタルもまた命のバトンをつないできた。
■目の前ひろがる幻想的な景色
夜のほたるの森の中には、無数のホタルが飛び交っていた。
安原さんは「あの台風があってから見られなくなって、やっと6年ぶりにまた再現できたというのが今年。もう最高ですね」と話す。
訪れた人も「ホタルがいっぱいいて、近くにホタルが来てきれいだった」と話し、ホタルの光を目に焼き付けていた。
■案内板もない隠れた名所
「荒川ほたるの森」は福島駅から車で15分。東北道・福島西インターチェンジから車で6分のところにある。国道115号線の南東北病院がある交差点から北へ向かい、荒川にかかる日の倉橋の手前にある温度計の、手前の中央分離帯の切れている所が入口になっている。
持っていく物のオススメはイス、虫よけスプレー、歩きやすい靴。そしてスマートフォンと三脚を持っていくと写真を撮影しながらホタルを楽しめる。ただ自然を守るためにも、マナーを守ってほしい。
■ホタルが飛ぶ3条件
ホタルが飛びやすい条件と天気について、福島大学の三田村敏正客員教授は「風が弱い」「気温が高い」「湿度が高い」この3つを挙げた。
「荒川ほたるの森」は午後7時~午後10時、8月中旬まで開園する予定。
天候などによって開園しない場合もあるので、X(旧ツイッター)で確認を。駐車場は約50台完備。
目で癒やされ、草木の香りを感じ、カエルの声や清流の音で夏のひと時を感じてみては?