野山の散策や農作業の際、十分な注意が必要です。
「マダニ」にかまれて起こる感染症の報告が静岡県内で相次いでいて、静岡市で死者も出ています。

野山の散策や農作業、それに雑木林などに入る際、いま注意が必要です。草むらに潜み人とペットの脅威になっているのが「マダニ」。

マダニが媒介するウイルスによる感染症SFTS「重症熱性血小板減少症候群」の報告が相次いでいます。

静岡市では駿河区の60代の女性が16日に発症して19日に医療機関に入院、23日に死亡しました。発熱や腹痛、全身のだるさに加え、血小板と白血球の減少が見られたと言います。また葵区の80代の女性は16日に発症して、25日にSFTSと診断されました。

浜松市天竜区でも60代の男性の感染が判明しています。

自分と大切なペットの安全をどう守るのか、感染症の専門医に聞きました。

静岡県立静岡がんセンター感染症内科・倉井華子部長

記者(この感染症の症状の特徴は)
倉井医師「SFTSと全部英語で表記されるのですが、これは病原体がウイルスによるものになってきます。症状として発熱とともに、消化器症状。おう吐、下痢、倦怠感が出てくることが多いです」

記者(症状からは気付きにくいか)
倉井医師「とても難しくて、医療機関でも体調が悪い、下痢をしている、おう吐、吐き気があるという病気はたくさんあるので。症状からSFTSと診断することは難しいと思います」

記者(血液検査で分かるか)
倉井医師「血液検査でも分からないと思います。血液検査でわかるのは肝臓の数値とか。SFTSでは「血小板減少症」という言葉があります。他の疾患でも同じような数値になるので検査の値や症状だけではこの病気は診断ができない。どこでこの病気をもらったか、病歴を聞き出すことが疾患の発見のポイントになってきます」

記者(ダニにかまれたら気付くか)
倉井医師「気付かないこともありえます。ダニの中には、血を吸うダニと血を吸わないダニがいて、今回のSFTSはマダニといって吸血する。山の方とか、山林に多いダニになります。1ミリ位の非常に小さい時もあるので、血を吸われたことに気付かないかもしれません。ただ血を吸って大きくなっていくので、山に入った後にほくろが増えていたとか、お腹についていたという病歴が手掛かりになるかもしれません」

記者(山、土手、庭どこが危険か)
倉井医師「山が一番多いのですが、山と言っても登山というよりは、日常生活のとなりにある山雑木林とか一番多いのは。シカとかがこのウイルスを保有しているので、イノシシが目撃されることがあるような、山間部に近くて人が住んでいて、近くにイノシシとかシカも出るような、そのような山に近い場所でこの(ウイルス保有した)マダニにかまれやすいと思います。公園とか報告はあるのですが、かなり山に近くて人と動物が交差するようなところ、そういう環境でマダニにかまれることが多いと思います。子供が遊ぶような舗装された公園とかでかまれることはまれだと思います。日当たりの良い公園は少ないと思います」

記者(病院での治療や処置は)
倉井医師「今回はウイルス性の疾患SFTSなので、明らかにこの薬が効きますという薬剤というよりは、おもに全身管理。点滴だったり血圧の維持。全身管理がメインな部分、新型コロナの最初の頃のような治療法だと思います。あとアビガンという薬剤があるのですが、こちらは去年承認され、国内のデータでは使用例の方が死亡率が低かったという研究も出ているので効果が期待できるとは思いますが、まだ確約できるものではないと思います」

記者(感染した場合の致死率は)
倉井医師「まず動物からですが、子猫とかだと感染すると5割から8割くらい死ぬぐらいの病気の重さだと思います。人間は20数パーセントの致死率、10パーセントから30パーセント位の報告になってきます。軽症の人の診断がされにくい、見つけにくい、軽症者の診断がついていないので致死率が高く見えるのだと思います。入院するような状態だと、このウイルスは死亡率が高いものになってきます」

記者(重症化、死亡リスク年代や性別で差は?)
倉井医師「一番のリスク因子は基本的には年齢がリスク因子になってきて、年齢が高い人ほど死亡率が高いと言われています」

記者(予防どんなことを心がければ)
倉井医師「マダニから媒介する病気は結構あって、今回はSFTS。日本紅斑熱というのもあり、マダニは結構いろいろな微生物を媒介するので、ダニにかまれない工夫が必要になってきます。林、木立が多い所に行くときは長袖、長ズボン、できれば長靴とか肌が見えない服装にすることと虫よけの忌避剤、たとえばディートとかありますが足周辺に吹きかけてから行ってもらうことをおすすめします。農作業についても同じことが言えるので予防して頂くとよいと思います」

「マダニは、だいたい肌についてから血を吸うまでの時間は数時間から時に1日24時間以上かかるので身体をお風呂で流す、シャワーで流す。帰った後にするとマダニは皮膚から落ちますので。蚊とはちがう。吸血までに2日くらいかかるし吸血が終わるまで48時間から5日くらいかかる。口を皮膚に入れていく、固定するまで時間がかかるので、帰ってきたあとに身体をシャワーで流してあげるだけでも、マダニによる感染は予防できると思います」

また、人間だけではなくペットにも感染するので、舗装されていない道路を散歩した場合には、ブラッシングなどをしてマダニが付いていないか確認することが大切だということです。さらに野生動物や保護ネコの世話などで接触する際にも、注意することが必要と話していました。

テレビ静岡
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