全国の中高生の英語教育実施状況調査の結果が公表され、英語力が前年より上昇した一方で、地域ごとの差が顕著に現れた。
文科省は教師の英語力との相関を指摘し、オンライン研修の必要性を強調した。専門家は、生成AIやタブレットの活用が英語習得を効率化し、理解度向上に寄与していると指摘する。
英語力の伸びに生徒と教師の相関関係
中高生の英語力を調べる英語教育実施状況調査の結果が公表され、英語力が向上した一方で地域差があることが明らかになった。

文科省が全国の公立の中学・高校に行った調査によると、2024年度、英検3級相当以上を達成した中学生は、2023年度より2.4ポイント増えて52.4%となった。

英検準2級相当以上を達成した高校生は、1.0ポイント増えて51.6%だった。

英検3級相当以上を達成した中学生は、さいたま市が89.2%、福井県が79.8%となった。

一方で、青森県や新潟市は30%台で、依然として地域差が大きいことも分かった。

また、文科省は、教師の英語力と生徒の英語力に相関関係が見られるとして、すべての英語教師に、オンライン研修を実施するなどの必要があるとしている。
IT活用と広がる危機感が学びを後押し
「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
中学生、高校生の英語力が向上しているという結果を、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
日本国内の学生の英語能力が上がっているというだけではなく、先生方の英語能力も上がっているというのは驚きです。
特に日本以外の東アジアの国を見ると、英語ができてすごいではなく、英語ができないとまずいという感覚です。こういった感覚が、日本にも広がりつつあるのではないかと思います。
というのも、少子高齢化が加速する日本において、海外との関係を模索しないと収入を上げていけないという、社会と保護者の危機感もあると思います。
ただ、今回の調査結果でさらに驚いたのは、IT利用が寄与しているという点です。
堤キャスター:
今、学校でタブレットなどが使われていたりもしますよね。
エコノミスト・崔真淑さん:
現在の教育現場ではタブレット活用が当たり前になっていて、私の頃と違ってゲーム感覚で、そして安く、楽しく英語学習できるツールがあふれています。
単語を覚えるのが苦痛だった時代から、科学的に意味のある、継続しやすい学習法なども報告されています。
そんな環境も、学生の学びをサポートしてくれていると思います。ただ、こうしたデジタルツールは、教育現場の人手不足対策にも使えるのではないかと感じています。
AIが教師不足を補い学びの形を根本から変える
堤キャスター:
実際に、人手不足対策に使われた実例というのはあるのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
海外ではそういった実例があり、世界ではチャットGPTなど生成AIを英語学習に使う動きが加速しています。
例えば、ナイジェリアでは教育現場で英語教師が不足するというだけではなく、貧困で満足に教育投資できないという現状があったんです。
そこで、経済学者たちが中学生422名を対象に、教師のサポートを受けながら、生成AIをメインに、英語学習をさせるという実験を行いました。
結果として、質問し放題の生成AIの貢献があってか、本来は2年かけて行うはずの英語カリキュラムを、学生たちは、なんと6週間でマスターするという驚異的な結果となりました。

エコノミスト・崔真淑さん:
先生方が教えるというところから、サポーターとしての役割にシフトしていくのではないかなと、そんな変化も感じます。私自身も、子供と一緒に生成AIを学習過程でどう取り入れていくか、模索中ではあります。
堤キャスター:
グローバル化が加速する今、語学はこれからの時代を切り開いていくための鍵でもあります。テクノロジーを活用しつつ学び続ける力が個人、そして、社会の未来を作っていくのかもしれませんね。
(「Live News α」6月23日放送分より)