2024年にプロ野球NPB2軍イースタンリーグに参入したオイシックス新潟アルビレックスBC。この球団名としても定着してきたオイシックスは、本来、食品のサブスクリプションサービスを展開する東京の企業だ。優れた経営者を顕彰する東京NBCアワードで経営者大賞も受賞したオイシックス・ラ・大地の高島宏平社長に農業をめぐる現状や新潟が秘める可能性について話を聞いた。
オイシックス高島社長「新潟はとんでもないくらい食材の宝庫」
2024年、NPBイースタンリーグに参入したオイシックス新潟アルビレックスBC。2年目の今季、ホームの入場者数はリーグ2位を記録している。
6月中旬、そのオイシックスの本拠地・ハードオフエコスタジアムに姿を見せたのは、球団会長でオイシックス・ラ・大地の高島宏平社長だ。

「新メニューが多すぎてなかなか追いつかない。だから今、新しいメニュー教えてもらっていたところ」とはにかむ高島社長。
“日本一おいしい球団”を掲げ、新潟の特産を使ったスタジアムグルメにも力を入れてきた。
東京に本社を置く東証プライム市場の上場企業が“野球”をきっかけに新潟に根を張って2年…食に関するビジネスも新潟で展開を広げている。
新潟の魅力について、高島社長は「とんでもないくらい食材の宝庫。お米・お酒・野菜・魚、あらゆるものが揃っているというのは、やっぱり全国にはないんじゃないかなということで、それをベースとした大企業も新潟は多い。食に関する仕事をする面では非常にやりやすいなと」と話す。
新潟を“食の産業集積地”に「今のベースの強さがあればできる」
この豊富な“食”を生かし、高島社長などが提唱しているのが『新潟フードテックタウン構想』だ。

これは“食”を核にしたスタートアップ企業を多く創出するため、教育機関や自治体などと連携し、積極的に投資するベンチャーキャピタルの設置や起業支援を強力に進めていく構想だ。
「東京にあらゆることが集中していて、小さな東京のような都市が全国にあるというのが今の日本の状況かなと思う。小さな東京みたいなことを目指しがちというのも正直感じていて、それに対してアメリカとかを見てみると、例えば商業の中心はニューヨークだけど、政治はワシントンにあって、ITの仕事はシリコンバレーにある。その地域ごとに明確に色付けがされている。そういう地域ごとに、色んな特色を出しているほうがやっぱり国全体でいうとおもしろいなというふうには思っている。私たちは食の仕事なので、どこかで食の場所を作りたいなと、食の産業集積エリアを作りたいなというふうに思っている」と話す高島社長が目をつけたのが、新潟だった。
「新潟をフードの産業集積地にしたい。食の仕事をやるんだったら、新潟で色々学んだり、最初に起業をするのが一番世界のどこよりも恵まれた環境なんだという場所にしていきたいなと思うし、それが今の新潟のベースの強さがあればできるのではないかなと」
開業率が全国の中でも低い新潟での挑戦…意識するのは、世界の中での新潟の価値だ。
「世界から見て、日本に食の魅力がある都市がないとまずいと思っていて、これは海外にとられるわけにはいかないし、それが新潟でやれたらいいなと考えている」
農業めぐる現状…「課題をひとくくりにするのではなく細分化を」
一方で、この食をめぐっては、コメの価格高騰により、消費者に不安が広がる一方、農家も生産コストの上昇により悲鳴を上げている現状もある。

こうした現状について、高島社長は「基本的には、作る人と食べる人の相互理解が非常に乏しいのだと思う。正しくお互いを理解して、これはどうしても必要な価格である、ここはむしろそこまで消費者は求めていない、みたいなことをちゃんと相互で理解すれば良い未来がつくれるような感覚がある」と話す。
農家の担い手不足や高齢化が進んでいる現状も無視できないが、課題を細分化させることが重要だと説く。
「大きい農家と小さい農家、平野部の農家と中山間地の農家という全く別物をひとくくりに話してしまっていることが難しさだというふうに思っている。むしろ、今よりも大規模になったら、もっと収益性・生産性を上げられる農家もいるし、でも大規模というソリューションがない中山間地もあるし、結構別の産業。その辺を整理してやれば、ひとくくりに農家の減少というのは議論してもあまり仕方がないと思うし、減少しても問題のないものもあるし、減少させてはいけないこともあるということだと思う。簡単な問題ばかりではないが、分解してみると比較的着手しやすいことはあるというふうに思う」
「新潟は伸びしろしかない」
そして、農業をめぐる問題が注目されている今、“新潟”の存在価値を高めるチャンスだと捉えている高島社長。
新潟県も推進ブランドとして8品目を選定し、県外への発信を強化しているが、いかにビジネスに結びつけられるかが重要だという。

「ビジネスと文化や技術は両輪だと思う。おいしいものが食べられるからいいという文化的に今充実していることは、必ずしも将来もそのまま発展していくことは意味しないと思っている。僕はビジネスの人間なので、その文化の素晴らしい新潟に対して、しっかりビジネスも回るようにすることによって継続的に発展するようにしていきたい」
人口減少や地方の衰退が進む中、新潟が地方都市として生き残るカギは“食”にあるのかもしれない。
高島社長は強調する。
「世界に誇る食があり、新幹線という移動手段がある新潟は最強だと思う。新潟は伸びしろしかない」
(NST新潟総合テレビ)