3年前の豪雨で被災し、周辺の堤防建設に伴って移転を余儀なくされた大江町の敷物、いわゆるラグの製作工房が朝日町で営業を再開した。新天地での再出発を契機に、夢だった古民家の民泊も始める。
「光るトラ」と名付けられた縦80センチ・横70センチの玄関マット。
明かりを消すと、光を蓄える糸で作られた右半分のトラの顔が発光し浮かび上がる。
製作したのは、朝日町のラグ製作工房「にまるらぐ」。
ラグ職人で工房の代表を務める川村寛克さんと、同じく職人で妻の朋子さん。
（ラグ製作工房「にまるらぐ」代表・川村寛克さん）
「山形県をラグにした“ケン・ヤマガタ”という商品（笑）（Q.オリジナル商品？）はい。これ面白いのが会話になる。『きょうどの辺から来た？』『この辺から来た』と（笑）」
中山町でじゅうたん製作会社を営む家庭に生まれた川村さんは、勤めていた食品関係の会社を脱サラし、2022年7月、大江町百目木地区でラグ工房を始めた。
ところがオープンからわずか2週間後、8月3日の豪雨で最上川の水があふれ、工房は2メートルの高さまで浸水した。
友人やボランティアの協力を得て同じ場所で再開したものの、今度は周辺に大規模な堤防が建設されることになり、工房は移転せざるを得ず、2024年9月、百目木地区を離れた。
そして6月、新天地として見つけた朝日町で営業を再開した。
（ラグ製作工房「にまるらぐ」妻・朋子さん）
「水害後の風景が変わりけっこう『うわー』と思ったが、夫が意外とそういうことを暗いものにしなかったので、私は助けられた」
（ラグ製作工房「にまるらぐ」代表・川村寛克さん）
「父から産業としてつないできたものを、次の未来・世代につないでいきたいという思いがどうしてもあって、辞めるという選択はなかった」
この日、天童市の親子がラグ作り体験にやってきた。
この工房のラグ作りは「タフティング」と呼ばれる技法で、特殊な工具を使い糸を縫い込む。
川村さんは、体験を通して多くの人にラグ作りの楽しさを伝えるだけなく、その価値を高めたいと考えている。
（ラグ製作工房「にまるらぐ」代表・川村寛克さん）
「じゅうたんってある程度価格帯として高くなる。ラグ作りの体験を通して『職人の技術がわかった』という声があったりすると、良かったなと思う」
（天童市から来た親子）
「終わったときに『もう終わりか』と思い、悲しいというか、もっとやりたかったなと思った（笑）」
「タフティングのリズムがすごく良いので、夢中になって時間を忘れた。いい時間だなと」
（ラグ製作工房「にまるらぐ」代表・川村寛克さん）
「こちらが今度民泊として使う古民家」
新天地で、川村さんは夢だったラグ作りと宿泊が融合した「民泊」を6月末から始める。
クラウドファンディングで改装費用の支援を募ったところ、全国の102人から計100万円以上が寄せられた。
古民家は102人への感謝を込めて、「山形イチマルニマル」と名付けた。
（ラグ製作工房「にまるらぐ」代表・川村寛克さん）
「客間3つを自由に使ってもらう形で考えている」
宿泊は1組の貸し切りで、最大10人まで利用可能。
家族や友人などとくつろいでもらい、時間を忘れ、ラグ作りに没頭してもらえればと考える。
（ラグ製作工房「にまるらぐ」代表・川村寛克さん）
「後ろに下がるっていう思いはなく、じゅうたん文化ってものを僕なりの形でつないでいきたい」
新たな夢へ一歩を踏み出した川村さん。
30日から始める民泊は、17日の時点で約20人の予約が入っているという。
＜補足＞
●ラグ作り体験は1人3000円～（サイズにより金額異なる）予約後、電話などでどのようなものを作りたいか事前打ち合わせ。
●宿泊は1人一泊5000円。体験は別途料金。グループの中に1人でも体験者がいれば素泊まりだけでもOK。
