「仕事中に突然、腹痛に襲われて、1日10回以上トイレに行くような状態」
「下痢・発熱・吐き気・関節痛が出ました」
症状を訴える人たちが共通して食べたのは、「レア鶏チャーシュー」。ラーメンの鶏チャーシューが細菌性食中毒を引き起こしたとみられます。
「newsランナー」では、専門家とともに加熱していない鶏肉がどれだけ危ないのか徹底検証。梅雨の時期に増加する“食中毒”の危険性に迫りました。
■ラーメン店で「レア鶏チャーシュー」原因とみられる食中毒
6月9日、平年より3日遅く梅雨入りした近畿地方。ジメジメして気温が高くなり始めるこの季節、「食中毒」に注意が必要です。
7日、神戸市は、三宮にあるラーメン店で食中毒が発生したと発表。男女8人が下痢や発熱などの症状を訴えました。
3日間の営業停止処分をうけたラーメン店はSNSで謝罪。
【ラーメン店のSNSより】「この度はこのような事態を招いたこと、重ねて謝罪申し上げます。皆様の早期のご回復を切に祈念いたしております」
原因とみられるのが「レア鶏チャーシュー」です。ラーメンに添えられたレアな状態の鶏チャーシューの加熱が不十分だったため、食中毒を引き起こしたとみられています。
この鶏チャーシューを食べて食中毒の症状が出た女性は…。
【食中毒の症状が出た20代女性】「下痢と発熱と吐き気とか、関節痛とかが出ました」
この女性は、ラーメンを食べた3日後に発症。その後、下痢と38度を超える高熱にうなされたということです。
【食中毒の症状が出た20代女性】「見るからに結構生ではあったんで、そこは心配でした」
別の男性は、ラーメンを食べた4日後、仕事中に激しい腹痛に襲われました。
【食中毒の症状が出た30代男性】「1日10回以上トイレに行くような状態でした」
身体がしびれるような症状も出たという男性。病院を受診し、便から「カンピロバクター」が検出されました。
カンピロバクターとは、感染すると下痢や発熱の症状が出る細菌で、手足の麻痺や呼吸困難などの合併症を引き起こす恐れもあります。
【食中毒の症状が出た30代男性】「もともとネットでかなり評価の高いラーメン屋さんで、信頼していたのでびっくりしました」
■「細菌性食中毒」は6月に発生急増
加熱が不十分な鶏肉を食べた際に発症することが多い細菌性食中毒。厚生労働省によると、細菌性食中毒の発生件数は6月になると急増します。
生の鶏を提供する飲食店ではこの時期、どのようなことに気を付けているのでしょうか。
大阪・天満にある鶏刺し専門店。鶏刺しの本場、鹿児島県と宮崎県が設けた衛生基準を満たし、生菌検査も行われた生食用の鶏肉のみを提供しています。
【とりさし梅松 鳥越貴志社長】「よくお店とかで言われるのが『うちの鶏、新鮮やから大丈夫』とおっしゃられるが、実は新鮮かどうかはあまり関係なくて、そもそもさばき方が違う」
【とりさし梅松 鳥越貴志社長】「カンピロバクターは、内蔵の中にいるので、それを傷つけずに解体する方法が確立されている。その衛生基準にのとった処理をした鶏が生食用として売られているのが、当店で扱っている鶏です」
市販されている鶏肉は、生食用に解体されたものではないため、生食は危険だといいます。
■「4時間あれば1個が100万個ぐらいになる」
市販の鶏肉にはどれぐらい「細菌」が含まれているのでしょうか?
「newsランナー」では、細菌学を専門とする帝塚山学院大学の西川教授に調査を依頼。スーパーで購入したばかりの「鶏むね肉」で調べてもらいます。
・生の状態
・中心温度40度になるまでゆでたレアの状態
・中心温度75度で1分以上しっかりゆでた状態
この3種類の鶏肉にいる「細菌の数」を比較します。
検査のために、それぞれの鶏肉から菌を採取。24時間かけてどれだけの細菌がいるか調べました。
【記者】「これ全部細菌?すごい数、めちゃくちゃ元気ですね」
【帝塚山学院大学 西川禎一教授】「これからだんだん暑くなってきて、30度超えるような日々になってくると、少し放っておくだけでドッと増えてこんな感じに。(細菌の数は)4時間あれば1個が100万個ぐらいになる」
3種類を比較した結果は…。
【帝塚山学院大学 西川禎一教授】「一目瞭然ですけど、生の場合ですとちっちゃな粒粒(最近の塊)が見える」
・生の状態では鶏肉1グラムあたり細菌の数が約1万個
・レアは1グラムあたり約100個
・しっかりゆでた鶏肉は10個ほど
という結果になりました。
今回、実施したのは簡易検査で、食中毒を起こす菌だけでなく、人体に悪影響を与えない菌も含まれているということです。ただ、鶏肉には菌の中に「カンピロバクタ―」が含まれている恐れもあるといいます。
【帝塚山学院大学 西川禎一教授】「この(細菌の)100個が全部カンピロバクタ―だとすると、感染力が非常に強いので、安全とは言えない。比較的きれいな鮮度の高い鶏肉だったけど、生で食べるとそういうこと(食中毒の危険)があると知ってほしい」
さらに多くの細菌は高い気温や多湿を好み、梅雨のこの時期は時に注意が必要だといいます。
【帝塚山学院大学 西川禎一教授】「『まだちょっと涼しいんじゃない』と思っているので、油断があって、そこで(食中毒が)出てしまうというのがあると思います」
■食中毒予防3原則 菌を「増やさない・つけない・やっつける」
食中毒を防ぐために、帝塚山学院大学の西川教授に「食中毒予防の3原則」を聞きました。
・菌を増やさない 常温保存せず、生鮮食品はすぐ冷蔵・冷凍へ入れること
・菌をつけない 食材を変えるたび調理器具の汚れを洗剤で落とす。例えば生肉を切った後のまな板や包丁は一度洗ってから使うことも重要です
・菌をやっつける 中心部までしっかり加熱をすることが大事です
「新鮮=安全という神話に注意。人も汚染源になる」ということです。
皆さん十分にお気をつけください。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年6月11日放送)