サバを生かしたまちづくりを進めてきた小浜市は、近年その象徴としてきたブランドサバの養殖事業でサバが死滅し、ここ2年間出荷ができていません。その背景には海水温の上昇が指摘されています。そこで、サバ養殖の復活をかけて県立大学と地元の水産会社が研究プロジェクトに乗り出しました。
       
10日は福井県立大学と小浜市の田烏水産などによる記者会見が開かれ、サバ養殖の危機的な状況が説明されました。
  
田烏水産の横山さんは「高い海水温のせいで、『小浜よっぱらいサバ』は2023年以降出荷ができない状況になっている」と現状を報告。
    
田烏水産が生産してきたエサに酒粕を使うブランド養殖魚「小浜よっぱらいサバ」は、臭味がなく美味しいと評判で、毎年1万2000匹ほどを出荷していました。しかし、近年は高い海水温の影響でサバが死滅し事業として成り立たない状況が続いています。全国も同様の状況で、サバ養殖は存続できるかどうかの岐路に立たされています。
   
こうした状況下で、漁師も驚くような豊漁に恵まれたのは5月27日。小浜漁港には1日で35トンの天然のサバが水揚げされ、近年稀に見る豊漁に沸きました。地元の漁は「近海の海水温が下がったため」と理由を説明するように、サバは高い水温に弱いのです。
  
田烏水産の横山さんは魚が置かれた環境をこう説明します。「海水温が1度上がると、魚は人が7~8度上がっているように感じる。以前だと最高でも水温28度だったのが今は31度になっている。さすがに魚は付いていけない」
   
今回、サバ養殖事業の復活に向けて新たに立ち上がったのは、その名も「さばイバル・プロジェクト」。研究では、これまでの養殖の主力であり市場価値の高い「マサバ」に、高温耐性のある「ゴマサバ」を掛け合わせた“高温に強く美味しし”ハイブリッド種の創出を目指します。
   
福井県立大学・田原教授:
「サバは大衆魚で馴染みがあるので、たくさん養殖されていたように思われるが、実は養殖の中では新参者。分からないことも沢山あるのでまずはベースの部分を作り、ハイブリッド種を含めて、高水温下での養殖技術を作りたい」
  
このプロジェクトは国の助成金を受け、最初の2年間はサバの完全養殖の実用化に向けた研究を本格化させます。事業化は3年目以降に予定されていて、高温に強いハイブリッド種の稚魚の販売や養殖のノウハウの全国展開を図ります。
 
田烏水産の横山さんは「まずは2028年度中に小浜よっぱらいサバを完全養殖で復活させる。その後は全国のサバ養殖業者に(種苗を)提供して、サバ養殖の復活も目指す」と意気込みます。
    
養殖サバのシェアは市場全体の数%程度ですが、寄生虫などの心配がなく生食ができるため、市場価値は4~5倍に跳ね上がるといいます。
 
サーモンも昔は天然物が主流だったため生食は稀でしたが、養殖技術の進化でいまや開店寿司の定番。市場規模は大きく膨らんでいます。
  
危機に瀕するサバ養殖の救世主となるか。県立大と水産会社のこの取り組みは、地域のブランド魚の復活だけでなく、水産業そのものの市場価値向上につながることも期待されています。

福井テレビ
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