越前市には1300年前、平安時代に越前を治める国府が置かれていました。ただ、国府があったことは分かっていますが、実はいまだに国府の建物の所在地が解明されていません。そこで2023年から、大規模な発掘調査などが行われています。このプロジェクトを地域ぐるみで盛り上げる動きを取材しました。
 
越前市中心市街地にある本興寺の境内では6日、地元のボランティアが発掘作業に汗を流していました。「楽しい!何か見つかるとみんな顔が明るくなる」
 
平安時代に国府が置かれた越前市。ただ、その建物がどこにあったのかは特定されていません。その所在地を解明しようというプロジェクトが2023年から始まり、有力な候補地とされる本興寺の境内で大がかりな発掘調査が展開されています。
 
この2年間で建物の区画を示す溝や土器、陶器など平安時代の数多くの遺構や遺物が出土しています。
 
このプロジェクトを率いるのは、越前市の学芸員西脇菜々さんです。「去年までに、国府の北側の可能性がある溝がみつかった。今年から掘っている場所は脇殿という建物があったと考えられる場所。先月から掘り出していて、須恵器も見つかっている。状態がいいのですぐに掘り出さず、状況を残そうと報告書にまとめようとそのままの状態で残している」
 
これまでの出土物の中でも、特に注目されているのが「緑釉陶器」です。奈良・平安時代に高い身分の人が使っていたとされる高級食器ですが、この場所から良い状態のものが20点から30点出土しました。
 
全国的に一般の集落跡などからは、これだけの量の緑釉陶器が見つかることはなく、この場所に身分の高い人がいたとみられる、つまり国府の可能性が高まってきたのです。
 
「国府の所在地解明に近づいた」とプロジェクトに取り組む西脇さんたちの姿を見て、地元の人たちも動き始めました。
 
この地で創業110年を迎える「雲の井酒店」の石井由紀世さんもその1人です。「菜々ちゃん(西脇さん)が以前テレビで、30年かかっても所在地解明の糸口を見つけたいという発言に衝撃を受けた。地元の私たちは何をしているのかと」。力になりたいと思った石井さんは、このプロジェクトをPRする盛り上げ隊を結成し「緑釉陶器」の再現を提案しました。
  
そして5月に、1000年もの時を越えて緑釉陶器の盃が現代によみがえりました。作陶は越前焼の陶芸家に依頼し、鉛を主成分とした釉薬を用いて緑色を強調させました。
 
盃には西脇さんの名前を取り「菜々」と名付けました。「緑釉陶器・菜々」は雲の井酒店で限定販売していますが、残りわずか。
  
石井さんは「かつて紫式部が過ごしたとされる場所から国府を知ってもらい、この場所を巡って思いを馳せてほしい」と話します。
 
地域一体で取り組む国府の所在地解明プロジェクト。今後の調査で、国府に関連する建物の大きな柱跡などが複数発掘されれば、決定的な証拠になるといいます。
  
15日には発掘体験イベントが開催され、越前国府大使の俳優・岸谷五朗さんも参加します。
 
歴史ロマンを追ってプロジェクトは続きます。

福井テレビ
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