国内外から多くの人が集まる大阪・関西万博では、自らをPRする絶好の機会と捉えた企業や自治体などがブース出展する。インバウンド誘致に出遅れる三重県と、技術の認知拡大を狙う名古屋大学発のベンチャー企業の挑戦が続いている。

■AIカメラが感情を推定する「休憩スペース」最新技術の体験に多くの来場者

来場者が400万人を超えた大阪・関西万博には、空飛ぶクルマをはじめ、今の日本が、そして東海地方が持つ様々な最新技術が展示されている。

その1つが、三菱電機の名古屋製作所が考案した、最新のAI技術が活用されている休憩スペースだ。

木の温もりが感じられるデザインとなっていて、何台ものAIカメラが設置されている。

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AIカメラが動きを捉え、その場にいる人の感情を推定すると、音楽や照明を自動で変えて、より快適な空間を提供する。

センサーで測った気温や湿度に応じて、ミストも噴射される。

大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマだ。

■名大発のベンチャー企業が挑む…“尿だけ”で検査できるキットを開発

東海地方の企業も、万博に挑んでいる。

その1つが、名古屋大学発のベンチャー企業「ヘルスケアシステムズ」で、企業や大学と共同で行う研究に加え、郵送で行える一般向けの検査を展開している。

ヘルスケアシステムズでは、病気の診断をするような検査ではなく、食事・栄養といった“生活習慣をテーマ”にしていて、尿の成分のみで塩分の摂取量や食後の血糖値の状態を調べる検査をはじめ、自宅で誰もが簡単に受けることができる20種類の検査キットを開発している。

万博で提供しているのが、「ワタシの腸内チェック」と名付けたビフィズス菌をはじめとする5つの腸内細菌の割合を調べる検査だ。

事前申し込みで自宅に届いた検査キットに検体の便を入れ、郵送すると本社で検査技師が分析し、結果は万博会場で確認できる。

これまでは1カ月ほどかかっていた検査も、このキットは結果判明まで1週間ほどに短縮していて、より安く一度に大量に測定できる技術だという。

■社長「夢見ているものがパビリオンにある」”体の可視化”を進める未来へ

ヘルスケアシステムズの体験を、実際の万博の会場で確認してみることにした。

瀧本陽介社長の腸内チェック結果が、すでに本社ラボで分析済みの状態だ。

パビリオンで発行したバンドを端末にかざすと、すぐに結果が表示された。

ヘルスケアシステムズ 瀧本陽介社長:
僕はですね、ビフィズス菌が0%。いないかほとんどいない。どちらかというと残念な腸内環境をしている。

ブースに設置された端末では、検査結果が表示されるのに加え、健康づくりに必要なオススメの食材も提案してくれる。

検査を受けた男性:
(オススメは)海藻とヨーグルトでした。あまり意識しては食べていないです。出てきたら食べるという感じ。善玉(菌)が思ったより少ないなと。もう少し良いと思っていた。

検査を受けた女性:
たしかに(普段)食べていないものが言われているので、食べてみようかなと思います。

万博の期間中、最大で4万人の申し込みを受け付ける予定で、5月10日時点で1万4000人ほどの申し込みがあるということだ。

手軽な検査で腸内環境など体の状態を知り、生活習慣を見直すことで、病気の予防へ。日々の健康意識の向上にも繋げたいとしている。

ヘルスケアシステムズ 瀧本陽介社長:
健康作りをしようと思う機会って、健康診断で引っかかったとか、色んなキッカケがあると思うんです。でも長続きってなかなかしない。(検査を通じて)あなたの健康は?あなたの腸内環境は?って分かれば、今までよりも続けられるようになってもらえるようになるのかなと。それをサポートするのが“自分の体の可視化”かなと思っています。自分たちが夢見ているものがこのパビリオンにある。

■インバウンドに出遅れた三重県が“挽回”へ 巨大スクリーン使った没入体験

万博に期待を寄せるのは、企業だけではない。

三重県のブースでは、400枚の鏡を張り合わせたきらびやかなトンネルが目を引く。

トンネルを進んだ先には、高さ3メートルの巨大な5面のスクリーンがある。5月10日からは期間限定の展示「イマーシブ熊野古道」が始まった。

スクリーンには世界遺産・熊野古道の大迫力の映像が映し出され、“没入感”をテーマに実際に歩いているかのような体験ができる。ブースでは今後、三重の魅力を発信する様々なテーマの展示が行われる予定だ。

東海地方では唯一、パビリオンに出展した三重県だが、そこには狙いがある。

三重県は、コロナ禍を挟んで外国人観光客の回復率が47都道府県で最低となっていて、万博をキッカケに、外国人観光客からの知名度アップをはかりたい狙いだ。

■「次は現地に」という声も…こだわり詰まったブースで挑戦続く

三重県ブースは、県職員の森川京香(もりかわ・きょうか)さんが20人ほどのスタッフを取りまとめている。

万博推進チームの一員として3月から現地・大阪に入り、開幕期間中は毎日、会場のブースで来場客に三重県をPRしている。

森川さんは三重県四日市市出身で、2024年までの2年間は東紀州地域振興公社に出向し、熊野古道のPRをメインに、観光商品の開発や観光ガイドの養成などにも携わってきた。

今回の熊野古道の展示にも、経験を生かした強いこだわりを持っている。

三重県の万博推進チーム 森川京香さん:
こことか結構こだわって、何回も撮り直してもらったんですけど。私の熊野古道関連のおすすめが詰まった映像です。

七里御浜を一望できるスポットや、実際に歩いて見つけた石畳がきれいな峠など、映像で使う場所を選定して撮影にも同行した。

三重県の万博推進チーム 森川京香さん:
生まれてからずっと三重県に住んでいまして、前の部署でも観光の仕事に携わってきましたので、三重県の魅力を発信できるという仕事はすごいやりがいをもってやらせていただいております。いいところだな、ぜひ行ってみたいなと思って、現地にも行ってもらえる人が少しでもいると嬉しいなと思います。

万博開幕から1カ月が経った5月10日、森川さんこだわりのブースにも多くの人が訪れていた。

来場者:
実際に歩いている感覚。臨場感めっちゃありました。
お茶の香りがいい香りだなと思いました。
三重県はまだ子供が行ったことないので、ちょっと連れていきたいなと思いました。

「次は現地に」という声も上がる中、さらなる課題もある。

ブースを訪れる多くは日本人で、知事も掲げた外国人観光客の増加に繋げるためには、海外からの来場者を多く呼び込む取り組みが欠かせない。

三重県の万博推進チーム 森川京香さん:
展示では巡礼衣装の着用の体験もさせてもらっているんですけど、そちらの体験は外国人の方が楽しそうにやられてる方が多い。日本人の方だけでなく海外の方も熊野古道の注目度は上がってきておりまして、海外の方にも熊野古道の良さを感じていただいて、現地に来ていただければと思います。

海外からも注目される絶好のチャンスとなる大阪・関西万博。東海地方が生み出した技術を、そして地域の魅力を発信する挑戦が続いている。

2025年5月13日放送

(東海テレビ)

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