2024年の出生数が、統計開始以来初めて70万人を下回った。合計特殊出生率は9年連続で低下し、過去最低に落ち込んだ。専門家は、人口構造の急変が生活インフラや経済全体に既に影響を与えており、育児支援の拡充や本気の政策転換が不可欠だと強調する。
出生率1.15で過去最低…東京は0.96と最下位
2024年に生まれた赤ちゃんは、1899年の統計開始以来、初めて70万人を割り込んだ。

厚生労働省によると、2024年に生まれた赤ちゃんは、2023年より4万人以上少ない68万6061人で、1899年に統計を取り始めて以来、最も少なく初めて70万人を割り込んだ。

また、1人の女性が生涯に産む子どもの数を表す「合計特殊出生率」は1.15で、9年連続で低下し、過去最低となっている。

都道府県別では、最も低かったのは東京都の0.96で、最も高かったのは沖縄県の1.54、ついで福井県の1.46だった。
厚労省は、「急速な少子化に歯止めがかかっておらず、対策に力を入れて取り組んでいきたい」としている。

林 官房長官:
少子化の要因については経済的な不安定さや、仕事と子育ての両立の難しさなど、個々人の結婚や出産・子育ての希望の実現を阻む、さまざまな要因が複雑に絡み合っている。
多くの方々の子どもを産み育てたいという希望が実現しておらず、少子化に歯止めがかかっていないものと考えております。

林官房長官は「希望する誰もが子どもを持ち、安心して子育てができる社会の実現に向け、総合的に施策を推進する」と強調した。
少子化は未来でなく今すでに社会を揺るがす
「Live News α」では、ソウジョウデータ代表取締役の西内啓さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
進む出生率の低下を、西内さんはどうご覧になりますか?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
コロナ禍で出会いの機会が減ったり、婚姻件数も大幅に減少したことの影響が現れた形だと思います。
ただ、単なる「少子化」の一言で片付けられる問題ではなくなってきました。
堤キャスター:
それは、どういうことでしょうか?
ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
団塊ジュニア世代が、もう出産の適齢期を過ぎているので、出生率を押し上げる人口の「層」そのものが、急速に失われつつあります。構造的な人口縮小フェーズに、日本社会全体が本格的に突入してしまったこと意味をしているかと思います。
少子化はしばしば、「将来の年金が破綻する」といった中長期的な文脈で語られますが、実際には、もっと手前の生活インフラに既に歪みが現れています。
堤キャスター:
その歪みというのは、具体的にはどういったものでしょうか?
ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
例えば、地方では学校や産婦人科の統廃合が進み、都市部では保育・教育施設の人材確保がかなり難しくなっています。
高齢者の方が増える一方で、労働力人口が減り、経済全体の生産性にも影響が出ます。さらには「誰が税金を納めて、誰が介護をするのか」という社会的分配の前提そのものが揺らいでいます。
危機はこれから来るものではなくて、もうすでに始まっているという形で捉えたほうがいいんじゃないでしょうか。
持てるはずの命を育てる環境整備が分岐点
堤キャスター:
ずっと言われてきたわけですが、改めて今、この危機にどう向き合っていけばいいのでしょうか?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
近年の研究から出生率は、個人的な希望と、社会的支援の厚さの掛け算で決まると考えられています。
日本は「環境が許せば、子どもは欲しい」という人も多いので、北欧諸国のように育児休業や保育所の整備、さらには住宅支援・学費無償化などを広範に展開すれば、出生率1.7から1.9ぐらいまでは回復する余地があるという指摘もあります。
次の現役世代である子どもが生まれ、育てる社会を国全体で作らなければ、持続可能であるはずがありません。数百年後に果たして、日本という国家が存続しているか、長期的視野に立った、本気の政策転換が急務だと思います。
(「Live News α」6月4日放送分より)