備蓄米の店頭販売が始まり、新たな局面を迎えた「令和の米騒動」。
野村元農水相が小泉大臣に“苦言”
この週末、備蓄米をめぐって、元農水相から小泉大臣に対してこんな発言が。

野村哲郎元農水相(鹿児島・鹿屋市、5月31日):
自分で決めて自分で発表してしまう、そういう大臣ですから、やっぱりルールっていうのを覚えていただかなきゃいかんなと。
小泉農水相に対して苦言を呈したのは、岸田政権で農水相を務めた野村哲郎議員(81)。
備蓄前の随意契約を、自民党の農林部会に諮らず決めてしまったと、“チクリ”。
これに対し1日、小泉農水相が反論した。

小泉進次郎農水相(1日):
私、農林部会長でしたので、ルールは存じ上げているつもりです。今回緊急事態ですので、じっくり議論をいただいて、その上じゃないと動けないと言ったら、この結果は出せません。私は大臣の決めるべきことだと思いますので、私はこれがルールだと思います。
さらに野村氏は…。

野村哲郎元農水相(鹿児島・曽於市、5月31日):
私も(米は)買ったことはありません。女房がいつも買ってますから。拓ちゃん(江藤前農水相)もやっぱり、そういう言い方をしていけばよかったんでしょうけれどもね。
さらに米の味についての発言も。
3年ほど前に、備蓄米やアメリカ産のカルローズ米などの食べ比べをしたという。
野村哲郎元農水相(鹿児島・霧島市、5月31日):
備蓄米と、それから新米とアメリカのカリフォルニア米と入れて食べたんですが、いくら古古米といったって、 炊きたてはやっぱりおいしいんです。
一方、銘柄米に比べ安く買うことができるカルローズ米については…。

野村哲郎元農水相(鹿児島・霧島市、5月31日):
一番まずかったのが、カリフォルニア米(カルローズ)でした。
野村元農水相の発言について直撃取材
この一連の発言について、FNNは野村氏を電話で直撃取材した。
まず「ルールを覚えて」という発言については…、

野村哲郎元農水相(2日正午過ぎ):
小泉さんが悪いことをしたとは思っていませんよ。小泉さんはスピード感はあるし。ただそれをやっぱり、コンセンサスを得ながらやって、進めてやっていただきたかったなという思いがあった。
鹿児島県出身の野村議員。
離島などの地方にも備蓄米が届くのかなどといった不安を解消するため、党内の部会で質問をする機会があってもよかったのではないかと、思いを語った。
また江藤前大臣をかばったような発言については…。

野村哲郎元農水相(2日正午過ぎ):
いっぱいもらうから、俺は米なんか買わなくて済むんだっていうことじゃなくて、女房が買いますから。国会議員の中でもそうだと思うんですよ。
と、あらためて「家族が買うため自身で買ったことはない」と説明。
さらに「カルローズ米はまずかった」という発言については4年ほど前のことだとして、「今は分からない」と話した。

野村哲郎元農水相(2日正午過ぎ):
その当時食べた時には、みんなそういう答えは一緒でしたから。「カリフォルニア米だ、これは」と言って。だから今言われると、いや今のカリフォルニア米はおいしくなっているんだぞって言われれば、もうそれまでですけどね。
こうした中、備蓄米放出に疑問を呈したのは、復興副大臣を務める鈴木憲和衆院議員。
地元・山形での会合で、優先すべきは平等な物価高対策で、備蓄米の放出は平等さが欠けているとした。
自民党内からの“声”を政治部デスクと岩田明子スペシャルキャスターが解説
備蓄米放出が始まる中、小泉大臣のスピード決断に元農水大臣が苦言を呈したということで、なぜ自民党内からそんな声が上がっているのか、フジテレビ政治部の高田圭太デスクと見ていく。

青井実キャスター:
まず経緯ですが、野村元農水相が小泉農水相が自民党の農林部会に諮っていないとして、「自分で決めて自分で発表してしまう、そういう大臣。やっぱりルールというものを覚えていただかなきゃいかん」という発言ですが、今回、これを話し合って決めなければやはりいかなかったんですか?
フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
このルールというのは、自民党というのは、政府が大きな決定をするときには事前に部会というところで議論するんです。ただ今回の件は、法案みたいな必ずやらなければいけないものではないので、マストではなかった。そこで小泉さんはやらない選択をしたんです。ではなぜかというと、一言で言えば、党内の納得感よりも国民へのスピード感の方を重視したと。
青井実キャスター:
スピードが欲しかったということですね。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
はい。部会をやると、プラス面は当然党内でコンセンサスを得られて安定するんですけども、やっぱりマイナス面でスピード感が落ちるし、いろんな意見を聞きますから、政策の角度が“鈍る”ので、今回はもうスピード感とやりたいことを思い切ってやるという方に振り切ったというのが小泉さんの決断です。
青井実キャスター:
ということですね。ルール的に問題ない、スピードも放出できた、ただ元大臣は苦言ということですが、選挙とかも関係してるんですかね。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
そうですね。野村さんというのは、やっぱり自民党の大事な支持基盤である農業関係者の代表的なところがありますし、参議院選挙の激戦区というのは、農業が盛んな1人区、いわゆる人口が少ない都道府県が多いもので、そうしますと、そういった人たちを意識する、これ自民党だけじゃなくて、野党もそうですね。野党も小泉さんに厳しい意見が多いですが、あれも実はやっぱりそういった激戦区の農業関係者を見ているので、こうなっているというところはあります。

青井実キャスター:
そうですね。そんな中、立憲民主党の小沢一郎氏がこんな発言をしています。自身のSNSで苦言です。「自民党のシナリオ通りの茶番劇」じゃないかと。「敵・悪役を作って小泉氏の人気を上げ、彼を看板にして選挙は楽勝という魂胆。裏では話がついている」んじゃないかということですが、岩田さん、この発言の真意は?

スペシャルキャスター・岩田明子さん:
かつての小泉総理ですね、あの郵政解散の時には、まさに“抵抗勢力”って名指しをすることで摩擦熱を上げていったというところがありますので、それを想定しておっしゃってるんだと思うんですね。ただ野村さん、なんかあんまりそこまで計算して言ってるとも思えなくてですね、やっぱり支持基盤ですとか、自分の思ってることをそのまま言ってしまってこうなったんじゃないか。でもかえって小泉さんとしてはやりやすくなったんではないですかね。
青井実キャスター:
高田さん、野村元農水相が今回の自身の発言については、どう考えているかということですが。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
はい。野村さんはFNNの取材に対して、「小泉さんと敵対していくつもりはない」と。「スピード感のある備蓄米の放出は本当に小泉さんじゃないとできなかった」から。あの苦言は、「もう済んだこと」ですからというふうに言ってて、またある自民党議員は、野村さんに合わせて、“平場”で一度やってほしいという気持ちはわかるけれども、やっぱり今回のことは緊急事態だし、仕方ない。あと小沢さんの投稿じゃないですけれども、 ああいう古い考えの人に立ち向かう進次郎さんみたいになるのは、党として悪いことじゃないという意見が出ていて、その中で、つい先ほど、森山幹事長が小泉農水相さんと会って、その後に「当然のことを小泉大臣はしたと思うし、農水部会に言う必要も今回はなかった。時間との戦いだから」ということで、事実上、軍配を「小泉さんのやり方はよかった。野村さんの気持ちも分からないでもない」というところに落とし込もうとしていますね。
青井実キャスター:
あと2日の国会、前江藤農水相時代の競争入札によって売り渡された備蓄米について、随意契約の備蓄米よりも価格が高く、もし業者が返還を希望する場合、小泉農水相は、適切に対応したいと述べているわけですけど、これは再び買い戻して、再び安くして業者に売る可能性もあるわけですか。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
やっぱり政府が、この短期間に大きく政策を変えたわけですから、そこで高く買ってしまった人たちから悲鳴が上がれば、何かしらの対応っていうのは、やはりする必要があると小泉大臣は考える可能性はあると思いますね。
青井実キャスター:
このように今、スピード感を持ってやってきたわけですけども、今はいいとして、岩田さん、今後この小泉大臣の課題と言いますか、見えているところはどういうところだと思いますか?
スペシャルキャスター・岩田明子さん:
まずはマーケットを冷ますというところですけど、今度は公平性ですよね、米が手に入らないっていう人が出てこないようにきっちり対応していくということ、さらには長期ビジョンですね、ちゃんと農家を守る、大規模区画化していくというところをちゃんと示せるかというところになると思います。
(「イット!」6月2日放送より)