「配達天国」と呼ばれるほど、フードデリバリーの利用者が増加している韓国。
一方で、ドライバーの過酷な労働環境が深刻化している。
学校に行かず就職もしない“休息”を選択する若者たちの増加も社会問題となっている。
韓国大統領選3日に投開票…労働問題が争点に
3日に投開票を迎える大統領選挙でも、有力候補らは労働をめぐる政策を掲げている。

革新系最大野党「共に民主党」・李在明候補(5月20日):
労働者が労働現場で安全施設の不備で過労で命を失い、家庭がめちゃくちゃになるなんてことがあっていいのでしょうか、皆さん!

(5月19日):
青年の就職の門はますます狭くなっている。解決は容易なことではないが、この問題を最も重要な国政課題と考えて、必ず解決する。
5月、韓国の国会前で集会を開いたのは、フードデリバリーのドライバーたち。

フードデリバリードライバーの代表:
生活費を稼ぐために、生存のために命をかけなければならない状況です!

韓国では、生活に必要なあらゆるものの購入に「配達サービス」が広く利用され、2024年の1年間の宅配総量は約60億個、フードデリバリーは、国民の約半分が利用していると分析されている。
しかしドライバーたちは、雇用主によって就業時間や場所に縛られていないことなどを理由に、労働基準法上の“労働者”と認められておらず、最低賃金や労働時間の上限が適用されずにいる。

フードデリバリーサービスのドライバー、キム・ヒョンスさん。
8年前からこの仕事で生計を立てているが、業界の価格競争により以前に比べ報酬が減ってきていると話す。

フードデリバリードライバー、キム・ヒョンスさん:
1件あたり平均4500ウォン(450円)程度です。前は6時間から8時間働いていたとすれば、今はその1.5倍ほど働かないと同じ水準の金額が出ません。
キムさんの5月の休日は、たった2日。
取材陣が同行したこの日も午前11時から翌日の午前1時までの14時間、ほとんど休みなく配達を続けた。

減った分の報酬を配達数でカバーしようと無理な働き方をする人は多く、フードデリバリーのドライバーは、 勤務中の事故やけがなどが最も多い業種の1つとなっている。
フードデリバリードライバー、キム・ヒョンスさん:
会社側の都合に合わせて(報酬など)労働環境を変えることができてしまう。より安定的に勤務できるようにしてほしいし、 労働災害もなくなってほしいです。
学校に行かず就職もしない“休息”を選択する若者が増加
市民生活の裏に過酷な労働環境がある一方で増えているのが、学校に行かず就職もしない“休息”を選択する若者たち。
現在大学院に通う20代の女性も、かつて3〜4カ月の“休息”期間を経験した1人。

“休息”を経験した20代女性:
(休息し)私が歩んできた道や、これから進むべき道について真剣に考えてみる時間を持ちました。

韓国の雇用情報院によると、15歳から34歳までで、2024年に“休息”状態だった人は59万人にのぼり、10年間で約20万人増加している。
取材に応じた女性は、休息する若者が増加している背景について、決まりきった社会の見方に対する不安があると話す。
“休息”を経験した20代女性:
いい大学を出て、いい企業に就職して安定する。そんな人生を「善」とするそんな見方が大多数です。それに合わせていかなければならないという圧迫を当然受けました。
町の若者からも…。
20代:
本人が望む“理想的”な会社に行くために準備する時間が長くなっている。

20代:
学校で勉強を頑張って、大学の外でいろいろな活動や資格などの試験準備もして、ある程度最善を尽くしても、就職で“保証される”という感じがしない。

実際に就職先がないわけではなく、製造業などでは就業者数の減少などが課題となっていて、“理想”を求める若者と実際の雇用のミスマッチもまた、“休息”する人を増やす原因となっている。
3日に誕生する新たな大統領が山積する課題をどう解決していくのか、その手腕が問われる。
(「イット!」6月2日放送より)