鹿児島の老舗百貨店・山形屋が2025年2月までの1年間の業績について5年連続の赤字決算となったことを公表した。経営再建計画発表から1年、岩元修士社長は、厳しい経営状況の中でも「責任を持って事業再生に取り組んでいく」と力強く決意を語った。

経営再建初年度は5年連続の赤字、しかし本業は回復の兆し

山形屋の最新の業績は2025年5月28日の株主総会で発表された。2025年2月までの1年間の売上高は約160億3700万円、営業利益は1億500万円を計上した。本業では黒字を確保したものの、営業外費用の増加により、経常損失は4億3300万円を超え、5年連続の赤字決算となった。

山形屋は、南九州随一の繁華街・天文館の顔だ
山形屋は、南九州随一の繁華街・天文館の顔だ
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「ふるさとのデパート」5年計画の経営再建に着手

山形屋は、江戸時代中頃に山形県出身の商人が鹿児島市で呉服店を開いたのが始まりとされる。1917年には株式会社化され、日本で3番目の百貨店として営業を開始。南九州随一の繁華街・天文館の顔として、長年鹿児島の経済をけん引してきた。

しかし2024年、経営状態の悪化を受け、事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution)という手法で経営再建に着手した。5カ年計画の初年度となる今年は、関連会社を24社から15社へと大幅に再編。さらに、鹿児島市城西にある「山形屋情報物流センター」の売却方針も明らかにした。

今年は関連会社を24社から15社に再編する方針
今年は関連会社を24社から15社に再編する方針

人員面では2025年度の新規採用を抑制するなどの施策により、グループ内の従業員数は2024年の1530人から1422人へと減少した。これらの取り組みは、事業の選択と集中、経営資源の効率的活用を目指したものと考えられる。

「責任を持って事業再生に取り組んでいく」。山形屋の岩元修士社長は、厳しい経営状況の中でも力強く決意を語った。

地域経済との共生を目指して

山形屋は鹿児島の商業の中心として長い歴史を持ち、地域経済との結びつきが強い。その経営再建の行方は、取引先の地元企業や顧客にとっても大きな関心事だ。事業再生ADRという手法は、裁判所を通さない私的整理の一つで、営業を継続しながら債権者と協議して再建を図る特徴がある。

岩元修士社長の「責任を持って事業再生に取り組んでいく」というコメントには、地域経済の一翼を担ってきた企業としての使命感が表れている。百貨店業界全体が厳しい環境にある中、地方の老舗百貨店がどのように生き残りの道を切り開いていくのか、今後の展開が注目される。

山形屋の経営再建は単なる一企業の問題ではなく、地域経済の活力維持にも関わる重要な課題だ。本業の黒字化という明るい兆しを足がかりに、伝統ある百貨店が新たな時代にどう適応していくのか、5カ年計画の今後の進展を見守りたい。

(前の記事を読む:負債約360億円で地域に愛されるデパートが苦境に…事業再生目指す鹿児島の老舗百貨店・山形屋はなぜ追い込まれたのか【前編】)

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