30日から東京都内で開かれていた国際会議「アジア・太平洋電気通信共同体(APT)大臣級会合2025」が2日間の日程を終えて31日に閉幕しました。
今後5年間、アジア・太平洋地域をどのように発展させるかの方向性を示した「東京宣言」が採択されました。
APT大臣級会合は約5年に一度、アジア・太平洋地域のICT=情報通信技術の担当大臣らが集まる会合です。日本で開かれるのは2000年以来2度目となります。
今回の会合には33の国や地域の要人が集まりました。議長は村上総務相が務め、情報通信分野で協力して取り組むべき課題や今後の連携などについて議論が行われました。
情報通信の分野では、AI=人工知能をめぐる様々なトラブルやニセ誤情報などは世界共通の課題です。アジア・太平洋地域では、こうした課題があるだけではなく、そもそもAIや新しい技術への対応に追いついていない国も多いのが実情です。
実際、今回出席した国からは、「技術を使える人」と「使えない人」の間に起こる格差への懸念などが示されたということです。この格差はデジタルデバイドと呼ばれ、個人だけでなくインフラ面などでも大きな課題となっています。
「共通の課題」と「それぞれの国における課題」の双方を共有し、地域全体の社会経済の発展に向けた道筋を考えるー。多様性あふれる地域であるがゆえに、一枚岩となるのは必ずしも容易ではありません。
そんな中で議長を務めた日本は、すでに多くの新興技術を取り入れ、地域を主導する立場。すでに多くの課題にも直面をしてきました。
例えば、インターネット上の違法・有害情報への対策を強化するために情報流通プラットフォーム対処法を制定するなど、様々な取り組みもすでに進めています。
会合では、そうした日本で行われている課題解決への戦略や活動も紹介。今後もアジア・太平洋地域の発展のために、訪日研修やセミナー開催による人材育成、AIなど新興技術を活用した各国の課題解決を図るプロジェクト実施などに協力していくことを約束するとしました。
こうした議論を経て、東京宣言は採択に結びつきました。合意したのは、「安全安心で信頼性の高いAIの促進」「AI技術の展開に向けたICT産業の変革促進」「途上国を中心とする人材育成の強化に向けて加盟国間の協力強化」などです。
東京宣言後に行われた記者会見で村上大臣は「緊密な連携のもと、新たな技術の力を活用していくという加盟国の決意を反映することができた」と成果を語りました。
東京宣言は今後5年間、アジア・太平洋地域をどのように発展させるか方向性を示したもの。「採択すれば終わり」ではありません。むしろ、ここからがスタートで、実行のためには、各国間でのさらなる連携や関係構築が重要です。
村上大臣は今回、2日間という限られた国際会議の日程のなか、フィジー、イラン、マレーシア、カンボジアなど一対一での会談も数多く設定。率直な意見交換を行うことができたといいます。要人同士でのコミュニケーションをとりやすい関係構築の実現。今回のAPT大臣級会合は、宣言採択だけではない様々な成果があったようです。
日本が議論を主導して採択にたどり着いた「東京宣言」。実行の面でも日本が再び主導的役割を果たしていけるか、世界が注目しています。