39年前に起きた福井女子中学生殺人事件で、殺人罪で逮捕後、一貫して無罪を訴えている前川彰司さんの裁判のやり直し、再審の判決言い渡しが7月に予定されています。
 
こうした中、前川さんをはじめ冤罪を訴えている全国の当事者や弁護士らが先日、東京で集会を開きました。冤罪を訴える側が著しく不利な立場となる現在の再審制度の改正を強く求めました。
 
「福井事件は幸いにして再審の“開かずの扉”が開き、その先の再審無罪に向かっていま、みんなに寄り添ってもらいながら歩んでいます」
 
こう聴衆に語り掛けたのは、前川彰司さん(60)です。5月26日に東京で開かれた「再審法改正をめざす市民の会」には、福井女子中学生殺人事件で罪を着せられながら無罪を訴え続ける前川さんら冤罪事件の当事者や支援する弁護士、学者ら合わせて約280人が集まりました。
   
3月に再審初公判を終え、7月の判決言い渡しを待つ前川さんも登壇し、今の思いを語りました。
    
前川彰司さん:
「7月の判決に向け、自他の共栄、精力の善用の内に、更にアクションを起こし自分で限界を設けず、どこまでもどこまでも上を向いて前進していく所存です」
    
また、59年前に静岡県清水市で起きた一家4人殺害事件で、死刑確定から無罪を勝ち取った袴田巌さんの姉・ひで子さんのビデオメッセージも流されました。
   
袴田ひで子さん:
「再審法改正はとにかく早急にやってもらわないと困ります。巌だけが助かればいいという問題ではない」
    
今回の集会の最大のテーマは「再審制度の改正」です。現在の日本の再審制度は、冤罪を訴える側にとっては極めて不十分な内容となっています。
  
特に問題が指摘されているのは▼再審に入るまでの細かな手続きやルールが決まっていないこと▼証拠の開示に関して検察に命令するかどうかは裁判所の裁量に委ねられていること▼再審開始決定に検察が不服を申し立てられることが挙げられます。
  
これらが高いハードルとなり、請求があっても再審開始が認められるのはわずか1パーセント。それが“開かずの扉”と言われるゆえんなのです。
    
集会で前川さんは「再審事件に向けられた世情、世の気運の流れの中で我々はその運の動き、歩みを止めてはなりません。日本の遅れた刑事司法の在り方を先進国のレベルにまで引き上げるべきです」と訴えました。
   
また、裁判官として袴田事件で再審開始を決定し、現在は弁護士の村山浩昭氏が講演。村山氏は、国の法制審議会が2025年3月から始めている再審制度見直しを議論するメンバーにも入っています。その村山氏は「再審制度は冤罪救済の最後の砦」と話し▼新たな証拠の開示▼再審の手続きの制度化▼再審開始決定に対する検察の不服申し立ての禁止、といった再審制度の改正を訴えました。
   
「市民のチカラで! 再審法改正を!」力強い叫びが会場に響いていました。
  
再審制度については、明確な手続きやルールが決まっていません。福井女子中学生殺人事件の前川彰司さんも、事件発生から数十年かかりました。いま再審制度の改正で
議論されているのは主に以下の2点です。
  
【全ての証拠の開示】
裁判をやり直すためには新たな証拠が必要なため、裁判所に提出されていない証拠をもう一度検討することが重要。現在の再審制度では、証拠の開示についての制度はなく、検察が証拠を開示する「義務」がない。つまり、検察官が「ない」といえば再審は開かれない。前川さんの再審も、事件から30年以上経ってから裁判所に促され287点の新しい証拠が開示されたことで認められた。制度の見直し議論では、裁判所の開示命令で検察官が不利なものも含めて全ての証拠を出すということが提案されている。
  
【検察の不服申し立ての禁止】
新しい証拠が出て再審開始が決定しても、検察官が不服を申し立てれば取り消されてしまうことがある。検察官が納得できなければ再審開始を引き延ばすこともでき、冤罪被害者の救済が遅れてしまう。現在の見直し議論では検察官の不服申し立てを禁止する案も出されている。

福井テレビ
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