小浜市の拉致被害者、地村保志さん富貴恵さん夫妻が帰国してから23年になります。帰国当時は連日メディアで報道され国民の大きな関心を集めましたが、進展がないまま年月が過ぎ、拉致問題を知らない世代も増えています。風化をどう防ぐのか。県内で活動を続ける救う会の現状を取材しました。
 
5月に開かれた「北朝鮮に拉致された日本人を救う福井の会」の2025年度総会。毎年出席していた小浜市の拉致被害者、地村保志さんの姿はありませんでした。
 
救う福井の会の森本信二会長は「市役所退職後、協力してくれていたが年々無理が効かなくなってきている」と話します。
 
北朝鮮に拉致され、23年前の2002年に妻の富貴恵さんとともに帰国した地村保志さん。帰国当時47才だった保志さんは間もなく70歳、古希を迎えます。
 
地村さんは帰国後に勤務していた小浜市役所を2016年に定年退職。「拉致被害者の自分に何かできることがあれば」と救う会に協力を申し出ました。それ以降、救う会のメンバーとともに早期解決を求める署名活動や若年層への拉致問題の啓発に取組んできましたが、体調への負担を考慮し、今後は活動を縮小することを決めました。
 
救う会福井が毎年実施しているイベント会場での署名活動にも、毎回参加していた地村さんですが、「今回は遠慮したい」との申し出があったといいます。
  
地村さんの同級生で救う福井の会の森本信二会長は、拉致被害者として生きる地村さんの苦悩を感じています。「体力面の衰えや、精神的な疲れなどあるんだと思う。帰国後も“拉致被害者の地村さん”として見られることで感じることもあったと思う。今まで協力してくれたことは感謝して、彼自身の気持ちを尊重するのが大事」と地村さんの気持ちに寄り添います。
  
「めぐみさんはあなた達と同じ歳のころ拉致された。関心を持ってください」
 
会のほかのメンバーも地村さんの同級生で、若い世代に関心を持ってほしいと呼び掛けました。「地方だと意識が低くなっているような気がする。子どもらに知ってもらうよう努力をしないといけない」「(若い子が署名してくれると)嬉しい。また学校で友達と話して関心を持って協力してもらえたら」
 
署名に協力した中学生はー
「(なぜ署名を?)署名して力になれたらと」
「(拉致問題は知っている?)知っている。前回署名したときに初めて知った。もっと深く知って考えたいと思った」
 
親子で署名した人はー
娘「(拉致問題は?)全然知らない。そういう事件があったのは知っているけど詳しくは知らない」
母「(親子で会話は?)テレビで扱われているときは、昔、小浜でそういう事があったんだと伝えたことはあるけど、帰国したときは結構ニュースの扱いが大きかったがそれから何十年と経つと、どうしても忘れてしまう」
  
拉致問題の風化が懸念される中、メンバーも高齢化し、会では今後どう次世代へ引き継いでいくのか、大きな課題に直面しています。
 
北朝鮮に拉致された日本人を救う福井の会・森本信二会長:
「一刻の猶予もない中で被害者が帰国して23年が経った今も一歩も前進していない。日本政府の拉致問題解決に対する本気度が試されている時期だと思う。私たちも古希を迎えるがいつまでも活動続けられる体ではないと思うので、これからは仲間や行政とも相談しながら、新しい組織のあり方や活動の仕方を考えていかなければならない。一番大事なのはこの活動を止めてはだめだということ。私たち国民の声が小さくなればなるほど、一番喜ぶのは北朝鮮だと北に強い思いをぶつけて解決を迫り、動かない政府に対して私たち国民の声を訴えて導いてもらうのが大事」
 
森本さんが会長になった10年前と比べると、署名の数も減ってきているといいます。メディアを含め、国民一人ひとりが拉致問題へ関心を寄せ、風化させないことが求められています。

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