米価格高騰の歯止めとなるのか。
小泉農林水産相が26日打ち出したのは、備蓄米を早く流通させるための新たな一手だった。

小泉進次郎農水相(26日午前11時過ぎ)
小泉進次郎農水相(26日午前11時過ぎ)
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小泉進次郎農水相(26日午前11時過ぎ):
今最も国民の皆さんが、われわれ農水省に求めている仕事は何か。最優先課題は間違いなく米の価格を安定化させること。そして安くおいしいお米を1日も早く消費者の皆さんに届ける。そのことが、われわれの今喫緊の課題であります。

小泉大臣が随意契約の詳細発表

26日、農水省に米高騰に対応するチームを発足させた小泉農水相。

農水省に米高騰に対応するチームを発足させた
農水省に米高騰に対応するチームを発足させた

小泉進次郎農水相(26日午前11時過ぎ):
農水省としては異例のこととなる約40名、そして全国の地方の農政局を含めたら500名。これぐらいの規模で全省を挙げて取り組み、かつこの皆さんのチームのトップには、次官自らがついていただくことになりました。

競争入札に代わり“随意契約”が導入される
競争入札に代わり“随意契約”が導入される

そして、競争入札に代わり行われることになったのは、特定の事業者と直接契約を結ぶ「随意契約」。

大手小売業者を対象に、2022年産が20万トン、2021年産が10万トン、あわせて30万トンの備蓄米が放出される。

店頭価格は5kgあたり2000円ほどの水準になるという
店頭価格は5kgあたり2000円ほどの水準になるという

売り渡し価格は、60kgあたり税抜き平均で1万700円。
一般的な経費を乗せた店頭価格は、これまでの在庫分とブレンドしない場合、5kgあたり2000円ほどとなる水準だという。

「米2000円宣言」にさまざまな声

就任後初めての週末、北海道・札幌市内で視察を行った小泉大臣。
米生産者と面会し、米価格を引き下げる政策に理解を求めた。

小泉農水相(24日・札幌市)
小泉農水相(24日・札幌市)

小泉進次郎農水相(24日、札幌市):
国の随意契約による備蓄米を、店頭で2000円で、5kg2000円で並ぶような形で売り渡しをやっていきますと。農家の皆さんのことを考えると、一定高くないとダメだ、それはその通りなんです。だけど間違いなく言えることは、今は高すぎる。

この「米2000円宣言」について、スーパーの買い物客の声を聞いた。

スーパーの買い物客:
なるべく安い方がやっぱりいいので、そこまで我慢して6月に入ったら買いに行く感じですかね。2000円にしちゃって農家さんの方は大丈夫なのかな。

スーパーの買い物客:
感覚的には2000円台ぐらいだとうれしいなっていうのは正直あります。備蓄米の放出によって恒常的にに米の価格が下がるのかどうかっていうのは、ちょっと疑問ではあります。

東京・足立区のスーパーたなか三丁目店では6月から約3500円で販売する予定
東京・足立区のスーパーたなか三丁目店では6月から約3500円で販売する予定

一方、店側からは困惑の声が出ている。
東京・足立区のスーパーたなか三丁目店では、江藤前農水相の時に放出された備蓄米を、6月から約3500円で販売することが決まったばかりだという。

スーパーたなか三丁目店・田中達人店長:
6月に入ってくるものは、その以前放出されたものがようやく精米が追いついてきて、うちに流していただけるものだと思っています。大手さんが優先なのはしょうがないのはあるんですけど、やっぱり広く、どこのスーパーにもそろえられるようにしてほしいなという気持ちはあります。

スーパーたなか三丁目店・田中達人店長は今持っている備蓄米が在庫になってしまうおそれがあると話す
スーパーたなか三丁目店・田中達人店長は今持っている備蓄米が在庫になってしまうおそれがあると話す

スーパーたなか三丁目店・田中達人店長:
お客様に備蓄米が届けられるっていう点ではうれしいところはありますけど、やっぱり市場が2000円台が普通になってしまうと、それはそれで、今持っている備蓄米が在庫になってしまうっていうおそれはあるので。

ほかの大手のスーパーなどで備蓄米が2000円で販売されることが決まった場合、買い控えが起こるのではないかと心配していた。

玄米での備蓄米流通にも不安の声

また心配なことは、ほかにも。

先週金曜日に楽天グループの三木谷会長と面会した小泉大臣。

楽天グループ・三木谷浩史会長(23日)
楽天グループ・三木谷浩史会長(23日)

楽天グループ・三木谷浩史会長(23日):
ネットの場合は予約販売というのもできますし、例えば、それこそ精米機とパッケージにして買っていただくというようなこともできるのではないかなと。

三木谷会長は、備蓄米を玄米で販売する可能性に言及したが、玄米の形での備蓄米流通について、都内の米販売店では不安の声が聞かれた。

篠原ライス(東京・北区)・篠原秀久代表
篠原ライス(東京・北区)・篠原秀久代表

篠原ライス(東京・北区)・篠原秀久代表:
玄米の取り扱いに慣れていない人も大勢いますし、どうやったら精米、白米になるのか、正直分からない人もいらっしゃると思うんですね。そういう方が大勢来て説明をするという話になると、ちょっとお米屋としては非常に大変だなと。

玄米は管理が難しいため、さまざまなトラブルが起きるおそれがあるという。

篠原ライス(東京・北区)・篠原秀久代表:
普通のお米であれば、こういう具合に精米ができるんですけど、そうじゃないものを持ち込まれたときに、機械のせいにされてしまうと。機械はまったく問題ないので。

また、精米機に虫が混入してしまうことも考えられるため、 精米した状態での流通を願っていた。

精米機の中では米虫はいなくならないと篠原代表
精米機の中では米虫はいなくならないと篠原代表

篠原ライス(東京・北区)・篠原秀久代表:
玄米は保管状況においてはですね、米虫の発生する確率がかなり高いんですね。その場合にコイン精米所に持ち込んで精米をすれば虫がいなくなるんじゃないかと、そういう理由で玄米をコイン精米所に持ち込まれる方が梅雨時期以降は結構いらっしゃるんですね。でも精米機の中では米虫はいなくなりませんので。

そのため、精米機に虫が残っていた場合、同じ精米機を使ったほかの家庭の米にも広がってしまう可能性があるという。

普段から玄米をコイン精米所に持ち込み、精米している人からも不安の声が。

コイン精米所の利用客:
コイン精米というのは、数あればいいけど、みんなが殺到しちゃうと足りないんじゃない。都内だとほんと少ないから。 

コイン精米所の利用客は
コイン精米所の利用客は

コイン精米所の利用客:
場所によっては、お米屋さんで購入したお米でないと精米してはいけないっていうところもあるので、ほかから持ち込むと1000円とか、お米を買う値段ぐらいしちゃうらしいんですよね。だからこういうコイン精米がスーパーとかにあるといいのかもしれないでしょうね。

本格的に始動した“小泉流”備蓄米流通計画。
一方、野党からは疑念が示されている。

野党からは懸念が(国民民主党・玉木雄一郎代表)
野党からは懸念が(国民民主党・玉木雄一郎代表)

国民民主党・玉木雄一郎代表:
安いお米を出していくと、市場価格が下がると、米農家はやっていけなくなりますからね。生産コストは高いまま強制的に販売価格が下がっていくと、恒常的なな赤字が生じます。それは確かに安いお米は流通するかもしれませんが、その分隠れた税負担がそこに発生しているのではないのか。

小泉農水省は参院決算委で決意をあらためて表明
小泉農水省は参院決算委で決意をあらためて表明

小泉大臣は26日午後、参院の決算委員会に出席し、米価格について「とにかく結果を出すこと。国民の皆さんに備蓄米を放出するという初めての決定をし、その中でも随意契約というさらに初めての決断をさせていただいて、これで結果が出るかどうか、しっかり結果が出るよう全力を尽くしてまいりたいと思います」と発言、今週中に備蓄米の随意契約を完了させ、6月には税抜きで5kg2000円の店頭販売を実現する決意をあらためて強調した。
(「イット!」5月26日放送より)

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