世界を舞台に、大野市出身の卓球・大藤沙月選手が快挙を成し遂げました。初出場となった卓球の世界選手権で、男女混合ダブルスで銀メダルを獲得。世界を驚かせた21歳の挑戦を振り返ります。
◆「自分たちもビックリ。素晴らしいペア」
5月22日、世界選手権ミックスダブルスの準々決勝に挑んだ21歳の大藤沙月選手と31歳の吉村真晴選手、その名も“大・吉ペア”。3位決定戦がないため、勝って準決勝進出が決まればメダル獲得となる大事な試合。
世界ランキング1位の中国ペアに挑んだ1戦は、ゲームカウント1対1で迎えた第3ゲーム。2人のコンビネーションが光り、長いラリーを制します。
第3ゲームをものにすると、第4ゲームでは大藤選手の連続サーブポイントや吉村選手の見事な“3球目攻撃”が決まります。
そして迎えたマッチポイント。
勝利の瞬間、のけぞりガッツポーズで歓喜の雄たけびを上げた2人。今大会日本勢初のメダル獲得を決めると―「こんなことある?ないだろ。意味わかんねぇって」と興奮状態の吉村選手。
試合後、大藤選手は「足が震えていたんですけれど本当にたくさん声をかけてもらって、お互いに声を掛け合っていいプレーができたと思う」と振り返りました。
吉村も改めて「自分たちもビックリしている。この大吉ペアは本当に素晴らしい」と笑顔を見せました。
◆「大舞台で戦えたことが宝物」
準決勝も勝ち、決勝に臨んだ大吉ペアは、日本勢として2017年以来の金メダル獲得を目指しました。
パリオリンピック金メダルの中国ペアを相手に第1、第2ゲームを失って迎えた第3ゲーム。
実況:
「金メダリスト吉村、その経験が大藤を支えています」
「チキータ。ストレートに持っていった!」
大藤の強気な攻撃が光り、このゲームを取ります。
実況:
「吉村!まず1ゲーム返しました」
第4ゲームは8-5と大吉ペアがリードするも、6連続失点を喫し逆転を許します。
実況:
「日本敗れました」
日本勢8年ぶりの金メダル獲得とはなりませんでしたが、大藤選手は初めての世界選手権で見事、銀メダルを獲得しました。
大藤選手は「実績のある選手と組ませてもらえて大舞台で戦えたことが宝物。ここまで来たら金メダルを取りたかったけど相手が強かった。これから誰と組むかは分からないけど、そこに生かせるように頑張りたい」と前を向きました。
◆コーチの父の影響で3歳から卓球スタート
大野市出身の大藤沙月選手(21)は、卓球のコーチを務める父の影響で3歳から競技を始めました。小学2年生で全国大会準優勝。この頃から世界で活躍する選手となる片りんを見せ始めます。
中高は県外の卓球強豪校へ進学後、全国大会で優勝するなど、その実力が知られるように。
そして成長は目覚ましく、2024年には女子シングルスで世界ランキング100位台から7位まで急上昇。日本卓球界の次世代エースとして期待が高まる中、今回、初出場となる世界選手権の混合ダブルスで堂々の銀メダルを獲得しました。
地元の子供たちもこの快挙に大きな声援を送っています。大藤選手が育った大野市の卓球クラブを訪ねました。
福井市のフェニックス卓球クラブは、小学生だった大藤選手が力をつけた場所です。
大藤選手に会ったことがあるという子供たちは「面白い、優しい、かわいい」などと話し、親しみやすい人間性がうかがえます。その一方で「日本の選手が世界で活躍していてすごい」「男子選手のボールをカウンターできていてすごい」と憧れを口にし「大藤さんを超えたい」「私はダブルスがそんなに強くないけれど、大藤選手みたいに活躍できるようになりたい」と刺激を受けているようでした。
大藤選手が3歳で卓球を始めたのは、コーチの父の影響でした。
大藤選手の父・弘雅さん:
「何か一緒にスポーツができればいいと思っていた。子供らを卓球の世界に引きずり込んでしまったのはどうなのかなとは思っている。でもいまは頑張っているので、楽しむことを忘れないようにやってほしい」
「僕自身、親バカなのかもしれないが、走るのが早かった。負けず嫌いで相手を邪魔してまで勝ちたいという子だった。卓球をやらせていくうちに僕のマネをするようになったのだけど、感覚が良くて、それを持続していくうちに上手くなってきた」
卓球を始めて18年。いまや世界の大舞台で戦う大藤選手には、幼い頃から備わっていた“感覚の良さ”と“負けず嫌い”という武器がありました。