2025年5月、鳥取県米子市に1軒の飲食店がオープンした。
前の月まで、島根・隠岐の島町で20年に渡って母親が営んできた店を娘が受け継ぎ、再オープンした。
看板メニューは「隠岐ちゃんぽん」。長らく愛されてきた“島の味”を途絶えさせるわけにはいかないと、娘が復活のバトンを受け継ぎ、オープンした。
営業再開に常連客も歓喜 初日から行列

2025年5月19日、米子市の繁華街にオープンした飲食店「ライトハウス」。
「隠岐ちゃんぽん」と大きく書かれた看板が目を引く店の前には、開店前から長い行列ができていた。

そして、オープンした店内は満員。もちろん、厨房もフル回転だ。

オープン早々のにぎわい、訪れた客の1人にそのわけを聞くと、「4年間、仕事の関係で隠岐にいて、その時に結構通っていた。まさか米子でこの味を味わえると思っていなくて、本当にうれしい」と返ってきた。
看板の「ちゃんぽん」は“島の味”

実はこの店、もともと、隠岐空港内で約20年間、営業していたのだ。
当時の看板メニューは「ちゃんぽん」。

かつて、隠岐の島町の玄関口、西郷港近くにあった名物中華料理店「味太郎」の味を受け継ぎ、島民はもちろん、島を訪れる観光客にも愛された、まさに”島の味”となっていた。
母が閉めた店 “一念発起”の娘が再開

店を切り盛りしていたのは原千代子さん。
「味太郎」で約30年働き、看板メニューだったちゃんぽんの味を受け継いだ。
それから20年、77歳と年を重ね、体力の限界も感じ始めた千代子さんは、2025年4月、惜しまれながらも店をたたんだ。

だが、長年親しまれた“島の味”がなくなるのはもったいない。
娘の直美さんが一念発起、店を継ぐことを決意、「味太郎」時代から「みなさんに愛されてきた味なので、途絶えてしまうのはどうかなと思った」そうだ。

これを聞いた千代子さんも「娘がやりたいというので、今なら数年かけて指導することができるので、いいタイミングだからということで、決断した」と直美さんをサポート。
直美さんは仕事を辞め、隠岐の店が閉店してから1か月余りで、現在住んでいる米子市に新しい店をオープンさせた。

直美さんは「覚悟が必要でとプレッシャーも結構ある。とにかく、お母さんのそばで、教えてもらってしっかりと覚えていこうと思っています」と明るく話した。
スープも麵も店の雰囲気も「隠岐時代」を再現

復活した「ライトハウス」の看板メニューとなったのは、野菜や魚介がたっぷり入った「とんこつちゃんぽん」。
スープは千代子さんの直伝、麺は隠岐で使っていたものを米子市内の製麺所に依頼し、再現。「味太郎」のちゃんぽんをそのまま引き継いだ。

また、椅子やテーブルを隠岐の店から持ち込み、隠岐時代の雰囲気も残すことができた。

復活した“島の味”に、隠岐時代、足しげく通ったという常連客も「隠岐の頃よりおいしくなっているんじゃないですか」と納得した様子だった。
母から娘へ…“島の味”復活のバトン

一度は途絶えかけた“島の味”の復活。
千代子さんは「これからも娘にはしっかりと受け継いでもらいたい」と期待、直美さんも「いろんな方面から来てもらって、ちゃんぽんの味を楽しんでもらいたいという気持ちでいっぱい」と、母のバトンを受け取った。
母から娘に受け継がれる「隠岐ちゃんぽん」。
新天地でも多くの人に愛されるようにと、直美さんはその1杯に思いを込める。
(TSKさんいん中央テレビ)