生活保護費の基準額引き下げは違法だとして、熊本県内に住む受給者らが熊本市など4つの自治体に減額処分取り消しを求めた裁判の控訴審判決。福岡高裁は5月21日に原告の訴えを認めた一審の熊本地裁判決を取り消し、請求を退けた。
熊本地裁は「生活保護法に違反」と判断
この裁判は、国が2013年から3年間で生活保護費のうち、生活扶助費の基準額を最大10%引き下げたことをめぐり、熊本県内の受給者らが、熊本市など4つの自治体に対し減額処分の取り消しを求めたもの。

2022年に熊本地裁は「国の判断は生活保護法に違反する」などとして、原告の訴えを認め、減額処分を取り消す判決を言い渡した。

その後、被告の熊本市などが「保護行政に与える影響が重大」として控訴し、裁判が続いていた。
福岡高裁は「判断や手続きは合理的」
5月21日の判決で、福岡高裁の新谷晋司裁判長は、改定後の生活扶助基準が「最低限度の生活水準を明らかに下回っているとは認められない」とした上で、「国の判断や手続きは合理的で、裁量権の逸脱、または濫用があるとは認められない」などとして、原告の訴えを認めた一審の熊本地裁判決を取り消し、請求を退けた。

判決を受け、弁護団は会見を開き、加藤修弁護士は「なんとしても勝訴判決をもらって帰るという気持ちで来たが、裁判所は非常に冷酷な判決を下した。なんとしても不当判決を乗り越えていかなければならないと思う」と述べた。

また、原告の浅井勝也さんは「予想外というか、ただただあぜんとして聞いていた。これで引き下がるということは絶対にないし、まだまだ前を向いて我々の意見を述べて闘う気持ちは消えていない。これからまた頑張ります」と話す。

同様の裁判は全国でも行われていて、高裁判断としては今回が12件目。そのうち7件は受給者側が勝訴、5件が敗訴となっている。

また、会見の中で、弁護団は上告する考えを示した。一方、被告側の熊本市は「今後も生活保護の適正実施に努める」とコメントしている。
(テレビ熊本)