会社を退職する際に手続きを代行してくれるサービスの利用者がいま増えている。ワークライフバランスを重要視する人も増える中、それに向き合い努力する企業の取り組みを見つめた。

退職代行への相談者の8割は20~30代

仕事を辞めたい。 しかし、上司に直接話す勇気はない。 会社の人の顔すら見たくない…。 

そんな悩みを解決するサービスが手続きを代わりに行う退職代行だ。

電話連絡中の退職代行モームリのスタッフ
電話連絡中の退職代行モームリのスタッフ
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退職代行モームリは24時間365日無料で相談ができ、実際に退職手続きを依頼する際の料金は2万2000円。

過去3年間で3万5000人が利用したといい、ゴールデンウィーク明けのこの日も次々と悩みが寄せられていた。

上司からのハラスメントに同僚からのイジメ、さらには過酷な勤務体系など退職を希望する理由は人間関係や労務環境が6割を占め、20代から30代の相談者が8割に上るという。

モームリの携帯サイト画面
モームリの携帯サイト画面

2025年に入ってからは1月に2213件、2月に1750件、3月に2010件、4月に2730件の依頼を受けていて、これまでの傾向として年末年始やゴールデンウィーク、さらにお盆など長期休暇が明けた後に依頼・相談が増えるそうだ。

退職代行業者の思いは?

モームリで働く飯田登生さんは退職代行を利用して以前の職場を辞めた。

正社員ではなく契約社員であることを入社後に初めて知らされたほか、業務内容も説明を受けていたこととは違っていたものの社長は取り合ってくれず、「出勤そのものが億劫。電車に乗るのも億劫という気持ちの中で働いていた」と振り返る。

そんな中、ある日の夜中に限界を感じ相談したところ、すぐに返信があったため依頼すると、翌朝起床した時には「退職が確定した」との連絡が来ていたという。

最近では退職代行の認知度が高まりスムーズに辞められることがほとんどだと言うが、モームリ広報担当の浜田さんはこうした業者を頼らざるを得ない現実を企業にも受け止めてもらいたいとした上で、「モームリとしては退職代行を無くしていきたい。無くなる世の中にしていきたい」と話す。

働きやすさを追求する中小企業

のこぎりや刃物の製造を手がける静岡県袋井市の天龍製鋸。 

若い世代の働きやすさを実現しているとして、2024年に国からユースエール認定を受けた。

ユースエール認定要件
ユースエール認定要件

有休の取得率や直近3年間の離職率、時間外労働など12の基準を満たすことで低利子での融資などが受けられるユースエール認定制度。

社員 約200人の天龍製鋸では毎月の所定外労働時間が平均で7.7時間、有休取得率は82.4%と基準を大きく上回っている。

天龍製鋸社内の作業風景
天龍製鋸社内の作業風景

残業は基本的に2時間までで、労働時間の適正管理を徹底するため時間外労働をする際は事前に上司への申請が必要なほか、2時間以上となる場合は改めて労働組合への申請が必要というのが社内ルールだ。

休みを取りやすく!

さらに有休の理由については詮索しないよう徹底していることとあわせて、上司から積極的に休暇を取るよう伝えていて、人事課の高橋奈々子さんは「有休についてはお互い様というのがすごく定着していて、休みにくいという雰囲気は一切なく、非常に取りやすいと感じている」と話す。

こうしたこともあり、2024年は対象となる男性社員のうち75%以上が平均1カ月間の育児休業を取得。

社内のネットワークを管理している野中有布作さんは2カ月を子育てに充て、「職場の上司と同僚たちから後押ししてもらった。そういう応援してくれる環境もあったので取ることができた。自分ひとりでは仕事は成り立たない。自分が育休を取得させてもらったのも周囲の人の協力や理解があったからからこそだと思っているし、そういう気持ちは忘れずに常に感謝の気持ちを持って人と接することで、自分だけでなく会社の環境も良い方向に進んでいくと思っている」と口にする。

働きやすさへの第一歩は?

さらに、社員が挑戦したことと業務内容に乖離がないよう社内アンケートや個人面談を積極的に実施。

入社3年目の男性社員は「退職代行を利用するという人も多いと思うが、個人的には“退職する”という一言にお金をかけるのはもったいないと思う部分もある。ただ、それはいま良い環境で働かせてもらっているから出る言葉なのかな」と笑顔を見せ、入社4年目の女性社員も「世間の会社ももっと若者のことを理解して、どのように働きたいのかを聞いてあげたら離職率を下げられるのではないかなと思う」と答えた。

天龍製鋸の社内
天龍製鋸の社内

時代の移り変わりに伴う意識の変化。 

互いに理解し合うことがいま求められている働きやすさへの第一歩なのかもしれない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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