“おじさん・たばこ・賭け事”。麻雀と言えば、昔ながらのネガティブなイメージが根強く残るゲームだが、最近は麻雀を取り巻く環境が大きく変わってきている。麻雀歴の長い記者も驚く今どきの麻雀とは?

「飲まない・賭けない・吸わない」

福岡市の麻雀店「雀ケンポン」。看板に『健康麻雀』と掲げるこの店は、午前10時の開店から、わずか30分ほどで店内は、ほぼ満席。しかも、麻雀台を囲んでいる客の多くが女性だ。

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そもそも健康麻雀とは何なのか?店の小正英雄さんに尋ねると、「『酒を飲まない・金を賭けない・タバコを吸わない』の3つをテーマにした麻雀ゲーム」と話す。

昔からあまりいいイメージがなかった麻雀。しかし、健康麻雀は、頭の運動だったり、友達だったり、昔ながらの麻雀とは違う、これまでのイメージを覆すまさに、新しい形の麻雀なのだ。

麻雀とは、4人で行うテーブルゲーム。14枚の「牌」を使い「役」と呼ばれる組み合わせを作っていく。より難しい「役」ほど高得点となり、最終的な得点で勝者が決まる。

「配牌から役は何を作ろうかとか考えたり…、でも思うようにいかない。そこが楽しいし、頭の体操になる」と利用者は麻雀の魅力を語る。

高齢者の孤独や認知症予防にも

この日、店の片隅で麻雀のテキストを眺める女性がいた。橋本信子さん、92歳だ。2025年1月、美容師を引退し、何か新しいことに挑戦したいと考えて麻雀を始めたという。

この店では、初心者にもマンツーマンでプロが教える。

橋本さん「お!なんて言うか?『リーチ』か」

プロ『違う違う、アガったから…なんて言う?』

橋本さん「ちょっと待って。『ロン』!」

プロ『ロンおしい!自分で持ってきたから?』

橋本さん「スマ!」

プロ:『おしい、ツモ』

橋本さん「あ、ツモか!」

「今は面白いですね。覚えても忘れてるから、覚えるのに必死なんですけど…。自分に刺激になるから、嫌になるときもあるけど、麻雀、続けようと思っている」と橋本さんは楽しそうに語った。

最近では老人ホームやデイサービスでも、健康麻雀が普及しており、福岡市内では、30カ所以上の施設でマージャン台を設置しているという。

健康麻雀を推奨する小正さんは、「高齢者の問題は、いろいろあるが、家に引きこもってるんじゃなくて、こういった所に出てきて、麻雀を通じて元気になってくれれば」と気軽な参加を呼び掛ける。

“不完全情報ゲーム”子供の知育にも

麻雀を楽し始めたのは、高齢者だけではない。福岡・粕屋町のカルチャーセンターには、麻雀に“ハマっている”子供達の姿があった。近年、麻雀によって論理的な思考などが養われ、将棋や囲碁と同じく、知育としても効果があるとして、子供向けの麻雀教室が増えているのだ。

この日、麻雀をしていたのは、小学1年生の女の子。「ママとパパがやっていて、大好きだったから」と麻雀を始めた理由を話す。

また、麻雀歴2年という中学3年の女子生徒は、「好きな芸人さんが麻雀をやっていたので、気になって始めた」という。その表情は真剣そのもので、大人顔負けの気迫で麻雀台と向き合っていた。

果たして、子供たちの実力はどれほどのものか?麻雀歴15年以上という記者が、子供達に交じって参戦。

最初は、お手並み拝見とばかりに余裕を見せていた記者だったが、「ツモ!」と容赦なく点数を稼いでいく子供達に気合いを入れ直した。

しかし、終わってみれば、惨敗。結果的に3万点あったが、1万8000点まで減って終了。結局、1回もアガることができず、「子供たちの実力に驚くばかり」と記者は舌を巻いた。

高齢者や子供たちの間で広がる麻雀人気。その効果について、脳科学を専門にする医師も太鼓判を押す。「高齢者においては、うつ病の予防になるほか、孤独感を軽減するメンタル面の作用が非常に多い」と語る横須賀市立総合医療センターの東島威史医師。

「子供においては、初心者の小さい子が、ある程度やりこんだ高学年の子をやっつけたりする。麻雀は『不完全情報ゲーム』というもので、見えない部分を想像するという想像力を刺激するという部分は、非常に頭を使う部分で、大きいかなと思っている」と知育としての麻雀の効能を推奨する。

「不健康」から「健康」に姿を変えつつある麻雀。いつの日か子供からお年寄りまで一緒に麻雀を楽しむ日が来るかもしれない。

(テレビ西日本)

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