公正取引委員会の古谷一之委員長が退任し、会見した。
離職が続く若手公務員に向けても、エールを送った。
「取締官庁から政策官庁へ」…公正取引委員会の変化
15日、公正取引委員会の古谷一之委員長が退任した。

古谷氏は国税庁長官や内閣官房副長官補などを歴任後、約4年8カ月にわたって公正取引委員会のトップを務めてきた。
退任会見では、巨大IT企業への規制や新法制定、さらにはいわゆる“トランプ関税”への懸念などについて語り、公取委の役割が大きく変化したことを強調した。
古谷氏は在任中の約5年間について、公取委が独占禁止法の執行だけでなく、「新しいルール作りやこれまでのルールの見直しに積極的に取り組むことになった」と振り返った。

そして、こうした取り組みの結果、公取委が「取締官庁であると同時に、政策官庁としての一翼を担う存在であるという、プレゼンスが認知・共有されるようになった」と語った。
“政策官庁”として現在、いわゆるフリーランス新法のほか「スマホ特定ソフトウエア競争促進法」が制定され、下請法の改正も現在進行中だ。
グーグルやアップルへの要望 市場の競争性を求める
この“スマホ新法”の指定事業者となったグーグルやアップルについて古谷氏は、「日本のデジタル市場にとってなくてはならない存在。だからこそ、両社には、マーケットをオープンでコンテスタブル(=競争可能)なものにしてほしい」と要望。

「日本の色んな事業者が競争する機会、あるいは、利用者が選択する機会を広げてもらうようなことをやってほしい」と願いを込め、今後も2社と対話を重ねることで、「日本のデジタルマーケットがより競争促進的でイノベーティブになることを期待している」と強調した。
“トランプ関税”に警戒感 「好循環への影響懸念」
また、いわゆる“トランプ関税”についても「賃上げと価格転嫁というようやく動き出した好循環に水をさす恐れもある」と指摘。

この流れが後戻りしないよう、今後注意を払っていく必要があるとの考えを示した。
若手官僚へのメッセージ「霞が関には面白さがある」
約47年にわたる官僚人生を振り返り、古谷氏は「総じて面白かった」と語った上で、離職が続く若手公務員に向けて、次のようにエールを送った。

「国家や社会のために何かをしたい人たちが集まっているのが霞が関。面白さが見えるまで、少し我慢していてほしい」
古谷氏が指揮したこの約5年間は、公取委が“ルールを守らせる機関”であると同時に“ルールを創る機関”へと進化を遂げた時期でもあった。こうした競争政策が実効性をあげていけるのか新たな局面を迎えている。
(フジテレビ経済部・杉山和希)