アパレル業界で最も早く上場を果たした原動力は、クリエイターの「好き」が形になり消費者を巻き込んだ熱狂でした。

アパレル業界・史上最短で東証グロース市場に上場した企業「yutori(ゆとり)」。

従業員の平均年齢25歳の「yutori」が目指しているのは、スタッフのさまざまな「好き」が洋服になり、それが誰かの心に響くこと。

「作り手」と「受け手」が熱狂する“若者帝国”の服づくりとは?

店舗前にできた若者の行列。
東京・原宿にあるストリート系ブランド「9090」は、「yutori」が展開するブランドの一つです。

1990年代に流行した古着やストリート系のファッションの魅力を現代の若者向けにリバイバルさせた商品を販売しています。

トレンドの変化が激しいアパレル業界で「yutori」が急成長する理由は、ブランドの多角化戦略です。

若者の心を掴むオリジナルブランドを次々と生み出し、その数は何と30以上。
流行をいち早く取り入れられるように、洋服を小ロット・多品種で販売するブランドに。

若者の日常に寄り添う部屋着をメインとしたブランドなどを作る事で、多様化する消費者のニーズに応えているのです。
年商は43億円を突破しました。

「yutori」社長・片石貴展さん:
日本で一番ブランド数のある会社になる、それがだいたい70ブランドくらいなんですけど。多種多様な好きとか偏愛がカオスに内在している会社。それくらい誰かの何かを作りたい。マルチブランド戦略で100ブランドを作れる会社の仕組みに。

クリエイターの好きが洋服になり、消費者を巻き込んだ熱狂を「若者帝国」と呼び、これを成長の原動力としています。

力を入れているのは、平均年齢25歳という“Z世代を生かした組織作り”。
最初に取り組むのはブランドのSNS運用です。

「yutori」社長・片石貴展さん:
スタッフはほぼ未経験者。自分がモデルになり自分をうまく使いながら、商品をよく見せるかという視点。自分のことを理解してないとダメだし、そのスキルがない人は良い洋服を作れると思わないから。

実は、購入者の多くがSNS上の動画で商品情報を得ているため、いかに再生数を伸ばせるかが重要。

若者が「自分も着たい!」と感じてもらうため、スタッフが着回しコーデや着用のイメージが浮かぶロケーションを考え、撮影・編集まで行っていきます。

消費者の好みや流行を理解することにもつながり、“新しい洋服を生み出す企画力”が鍛えられるといいます。

22歳の若さでブランドディレクターになった田中粋華さんは、年長プロデューサーと共に、商品開発・ブランドイメージに関わる会議を定期的に実施し、売り上げの再現性を高めていきます。

プロデューサー・船橋誠さん:
僕は32歳。おじの部類で、パパって呼ばれている。

ディレクター・田中粋華さん:
めちゃくちゃ厳しくて、実は。

「yutori」社長・片石貴展さん:
会社のルールで「Yリーグ」というのがあって。社長や副社長、経営陣よりも上の概念。

組織力を高める「独自のブランド管理制度」も導入。
それが、月間平均売上額に応じてブランドを5段階のフェーズに分けて管理する「Yリーグ」です。

例えば第1フェーズでは、ブランド立ち上げから1年以内に月商700万円に達しなければ自動的に撤退というシビアな基準を設けています。

「yutori」社長・片石貴展さん:
この仕組みの中で全員がフラットで。才能のある若者が入ってきて、その子達がステップアップしていくための仕組みと再現性はyutoriにある。