7年9カ月続いた「黒潮の大蛇行」が終息する兆しとなり、ノリの不漁が続いていた三重県の漁師からは期待の声も上がっています。また専門家によると、終息は「気候」にも影響するとみられています。

■大蛇行がもたらした「ノリの不漁」空き地には大量の黒ノリが廃棄

黒潮は太平洋側を流れる暖かい海流で、本来であれば日本列島に沿うように流れています。しかし2017年8月以降、紀伊半島から大きく太平洋側に離れて「大蛇行」していました。

気象庁によると、長く続いてきた「黒潮の大蛇行」は終息する兆しがありますが、大蛇行はおよそ7年9カ月という過去最長の期間で続いていて、海水温の上昇を招き、漁師たちを悩ませ続けていました。

三重県鳥羽市では2022年、空き地に「黒ノリの残骸」が大量に破棄されていました。商品加工されずに廃棄されたもので、本来の黒の色が出ず、味もイマイチだったといいます。

この記事の画像(8枚)

黒ノリを養殖する男性(2022年):
出荷しても売れないということで、みんなで相談してここに捨てた。

ほかにも「あおさノリ」など、志摩半島近海でノリの不漁が相次いでいました。

■海藻が消えた海…三重大学大学院の調査で明らかに

三重大学大学院の倉島彰教授の研究チームは、志摩半島近隣の海を調査しています。2015年に調査した際は、アワビなどのエサとなる海藻が多く生息していましたが…。

2022年の調査では、海藻はチラホラと確認できるだけで、岩肌が丸見えになっていました。

倉島教授によると、冷たい渦に巻き込まれる形で黒潮の支流が東海地方に流れ込んで海水温が上昇していて、沿岸の魚が増えてノリの養殖の被害につながっているといいます。

大蛇行の終息は、長年続いた「不漁」に明るい兆しとなることが期待されています。

■生産量が“10分の1”の年も…鳥羽市の漁協「普通に戻るのかな」

鳥羽市にある鳥羽磯部漁協でも、ここ数年、黒ノリの生産量が減っています。例年、黒ノリで年間3000万円の売り上げを見込みますが、少ない年で10分の1ほどの時もあり、2019年からの4年間は赤字でした。

鳥羽磯部漁協の木下和行組合長:
水温が高いことと(塩分の)比重が高すぎること。比重が高いとノリが固くなっていくし。良いノリがいつまでもとれない。

今後について、期待も寄せています。

木下和行組合長:
(海水温が)冷える時期に冷えて、高くなる時期に高くなる、普通に戻るのかな。

■海は元通りにならない?大蛇行の終息は「天気」とも関係か

黒潮大蛇行が終息した場合の見通しについて、倉島教授に話を聞きました。

三重大学大学院の倉島彰教授:
水温が高いとか栄養が低いとかは解決するので、少なくともこの数年間の状態よりは、海の生き物・海藻なんかにとっては良くなるのかなと。

しかし、「海が元通りになるかは分からない」と話します。

倉島彰教授:
環境が元に戻ったからといって、すぐに元へ戻るというのは難しいんじゃないか。やっぱり人間側が手助けすることが必要かもしれないです。

過去の黒潮のデータを解析している東北大学の杉本周作准教授によりますと、黒潮大蛇行の影響で、東海地方では降水量はおよそ1.5倍、気温はおよそ1℃上昇していたとして、「終息すれば影響が緩和される」ということです。

終息の見通しについて気象庁は「1~3カ月程度状況を見た上で、終息したかどうかを最終的に判断する方針」としています。

(東海テレビ)

東海テレビ
東海テレビ

岐阜・愛知・三重の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。