“県民の足”を守るため、行政や交通事業者が動き出しました。大型バス、中でも路線バス業界が直面している深刻な運転士不足。その解決策の一つとして、バスの運転士に外国人材受け入れを検討する会議が県内で初めて開かれました。ただ、実現に向けては言葉の壁や1人での乗務で不安材料が多いなど、多くの課題が残されています。
12日は福井市にある県国際交流会館で会議が開かれ、県内のバス会社、行政機関、支援団体など10の組織のトップらが顔をそろえました。
県交通まちづくり課・中出博行課長:
「特定技能制度を活用した外国人材の受け入れを検討すべく検討会を立ち上げた」
バス業界は低い給与水準などを背景に慢性的な人手不足が続き、特に路線バスが深刻な状況に陥っています。そこでバスの運転士に「外国人」の雇用の可能性を検討しようと会議が開かれました。
福井鉄道・吉川幸文社長:
「運転士の必要数81人に対して5名が不足の状況。定年を迎える運転士もいるし、退職者数も増加している」
2024年、京福バスや福井鉄道では、運転士不足により路線バスの減便や路線の廃止が相次ぎました。
県は、運転士の給与の増額といった待遇改善のための補助や、走行距離に応じた奨励金の支給などで事業者を後押ししています。
県交通まちづくり課・中出課長:
「4月から一定の路線バスの復便も行ってきたが、まだまだ運転士の確保策が必要だと思っている。県でも、外国人材の活用を今年度から本格的にやっていこうと思う」
田島嘉晃アナウンサー:
「県は外国人材の受け入れ環境の整備にも動き出しています。その背景にあるのが国が導入を進めてきた『特定技能』という制度です」
「特定技能」とは、一定の技能と日本語能力を持つ外国人に就労を認める制度で2019年に新設されました。2024年12月には、この制度の対象に自動車運送業も加わり、試験に合格すればバスの運転士になる道が開けました。
全国では3月までに159人の外国人が合格していますが、実際に業務に就いたケースはまだありません。県内のバス事業者はどう考えているのでしょうか。
京福バス・岩本裕夫社長:
「日本語能力や文化、価値観の違いなど色んなハードルがある。受け入れ体制が十分ではないので、入社してからしっかり体制を維持していけるのかが不安」
福井鉄道・吉川幸文社長:
「建設業や介護は周りに日本人がいる。しかし、バスの運転士は乗務すると完全に1人になってしまう。誰も助けられない状況になる」
事業者の不安に県の担当者はー
県交通まちづくり課・中出課長:
「特に特定技能の方が給料の高い職に流れてしまう事例もある。事業者の受け入れ体制を高めて行くことも必要だし、外国人材の活用も含めて運転士確保をしっかり進めていきたい」
外国人のバス運転士への雇用をめぐり検討が始まったばかりの県内では、行政と事業者が連携して受け皿づくりに取り組む必要性があります。外国人運転士の場合、課題となるんが言葉の壁。行き先などを尋ねる乗客とやり取りができるのか、あるいは事故などの緊急時に乗客の安全確保ができるのか、など多くの課題があります。
一方で岡山県では2025年1月、インドネシアから来日した技能実習生が特定技能の観光バス運転士として国内初の合格者となりました。2026年3月までに観光バスのドライバーとしてデビューする予定です。
外国人運転士の姿は、決して遠い存在ではなくなってきています。