中小企業の経営者の高齢化と後継者不足が深刻化する中、M&A(企業の合併・買収)が事業承継の手段として注目されている。

しかし、期待された効果とは裏腹に、数々のトラブルが発生している現状がある。

事業継承M&Aでトラブル相次ぐ
事業継承M&Aでトラブル相次ぐ
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■後継者不足が理由の倒産が過去最多を記録 M&Aの増加

日本の会社のうち9割以上を占める中小企業では、経営者の平均年齢が上昇し続け、後継者不足が理由での倒産が過去最多を記録している。

「M&Aで後継者問題が解決し、経営の改善も図れる」と期待されていたものの、実際にはトラブルが続出しているのだ。

中小企業では後継者不足が理由での倒産が過去最多を記録
中小企業では後継者不足が理由での倒産が過去最多を記録

■債務の引き継ぐ代わりに株を譲渡したのに借金だけが残る...

かつて自動車部品の販売会社「AXIS」を経営していた岩畦信幸さんは、コロナ禍をきっかけにM&Aを決意した。

しかし、債務を引き継ぐ代わりに会社の株を譲渡した結果、多額の借金だけが残った。

AXIS岩畦信幸前社長:自分たちが作って育てた会社であったり、社員であったりを踏みにじる行為は、他人の人生を奪う行為だと思います。

AXIS岩畦信幸前社長
AXIS岩畦信幸前社長

■買い手会社は「自分たちは被害者だ」 トラブル続出の「ルシアンホールディングス」 「被害者の会」も発足

「AXIS」を買収したルシアンホールディングスは、30を超える会社を買収し管理しているとされている。

しかし、買収された企業の多くでトラブルが発生し、「被害者の会」まで発足する事態に。

「自分たちは被害者だ」と主張するルシアンの取締役Y氏は、売り手側の企業が「将来性のある会社だ」と偽ったと述べている。

「AXIS」を買収したルシアンホールディングス
「AXIS」を買収したルシアンホールディングス

■仲介業者にも責任と専門家指摘

M&Aの仲介業者もまた、トラブルの一因とされている。

仲介業者は売り手側と買い手側から手数料を受け取り、契約の成立までが仕事であり、その後の問題には関与しないことが多いと指摘されている。

M&Aに詳しい柴田堅太郎弁護士は「信用状態として問題なく経営していける買い手なのかという審査は、いままでしていなかった」と述べ、今後の法規制強化の必要性を訴える。

仲介業者は売り手側と買い手側から手数料を受け取る
仲介業者は売り手側と買い手側から手数料を受け取る

■信頼できる仲介業者や金融機関と連携し、慎重に判断することが重要

M&Aは後継者不足を救う起死回生の一手として注目されているが、その裏には数々の問題が潜んでいる。

甘い話にはウラがある可能性があるため、慎重な判断と信頼できるパートナー選びが求められる。

これらの問題を踏まえ、M&Aを検討する際には、信頼できる仲介業者や金融機関と連携し、慎重に判断することが重要だ。

(関西テレビ「newsランナー」2025年5月8日放送)

甘い話にはウラがある可能性が…
甘い話にはウラがある可能性が…
関西テレビ
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