小児がんで両眼を失い、全盲となった娘の闘病生活を描いた絵本が出版された。

母親が絵本に込めた思いとは。

小児がんで両眼を失った小原佳純ちゃん
小児がんで両眼を失った小原佳純ちゃん
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■1万7000人に1人の網膜芽細胞腫で両眼を摘出 母「気づかなくてごめんね」

神戸市で1歳年上のお姉ちゃんと、お父さん、お母さんの4人で暮らす、5歳の小原佳純(おはら・かすみ)ちゃん。

小児がんで両眼を失った小原佳純ちゃん
小児がんで両眼を失った小原佳純ちゃん

盲学校の幼稚部に通っている。

小児がんで両眼を失った小原佳純ちゃん
小児がんで両眼を失った小原佳純ちゃん

1歳4か月のとき、1万7000人に1人とされる目の小児がん「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」と診断された。

抗がん剤治療を2度行いましたが、治る見込みはなく、両眼を摘出することになり、3歳で全盲となりました。いまは両目に義眼を入れている。

佳純ちゃん:真っ暗だ…何も見えない…

「真っ暗だ…何も見えない…」
「真っ暗だ…何も見えない…」

母・絢子さん:全盲とかになって光を失って生きていって、幸せになれるんかな。本当に『こんなになるまで気づかなくてごめんね』という気持ちがありました。
『ごめんね、ごめんね』って寝顔見て言っていたような記憶があります。思い出したら泣けます。

母・絢子さん
母・絢子さん

■闘病を描いた絵本 母の心の支えになった「絵を描くこと」

佳純ちゃんの身に起きたことを描いた絵本がある。

【絵本より】
「目には包帯を巻いています。網膜芽細胞腫という悪い病気がいたの」

「目だけがお空に帰ってしまったの。前みたいに追いかけっこしたり、走り回ったりすることは できなくなっているかもしれないよ」

闘病を描いた絵本
闘病を描いた絵本

佳純ちゃんの入院に付き添っていた母・絢子さんの心の支えとなったのが絵だ。闘病生活を描くようになった。

絢子さんが病気に気付くきっかけとなった佳純ちゃんの目の異変は、記憶の通り、描きいた。

母・絢子さん:私が最初見た時に感じた嫌な感覚を表現したいなと思って。割と見えたままに描きました。やっぱり忘れられないですね、あのときの光景。

「目の異変」は記憶の通りに
「目の異変」は記憶の通りに

■「小児がんの早期発見につながる絵本を」 目標の2倍以上の寄付集まる

2年以上かけて、描いた28枚の絵を元に、「小児がんの早期発見につながるような絵本を作りたい」と、クラウドファンディングを立ち上げると、大きな反響があり、目標額の2倍以上の寄付が集まった。

同時に絢子さんは原画展も開き、訪れた人に直接、闘病生活について伝えている。

原画展を訪れた人:痛々しいね…

絢子さん:実際は片目をとって、もう1年、左目を残すために治療をして、それでも甲斐なくて取るという感じだったので、いっぺんには取っていないんですけど。

絢子さん:でも最後、徐々に徐々に視力が落ちていって、怖がるかなって、完全に光を奪うことが本当に正解なんかなというのはすごく悩みました。

絢子さん:『何も見えない、怖いよ』とか言ったらどうしようって、実際のところは思っていたんですけど。残すのは、親のエゴなのかなとか。ずっと辛い治療をさせ続けるのが正解なのか。一体正解は何なんだろうって。最後とるという決断は私が決めましたね、主人は決められなかった。とりたくなかったんで、どうしても。

絵本の原画展で語る母・絢子さん
絵本の原画展で語る母・絢子さん

■「ピアノに挑戦」佳純ちゃん いまも検査で3カ月に1回入院

ピアノやプールなど、様々なことに挑戦する佳純ちゃん。

不安がなくなったわけではない。

がんの治療が終わった今も、脳への転移を検査するため、3カ月に1回、入院している。

ピアノに挑戦
ピアノに挑戦

■ついに絵本が完成 「だいすきっていいたいよ」

出版の打ち合わせを始めてから、およそ5か月。絵本が出来上がった。

題名は「だいすきっていいたいよ」。

佳純ちゃんと、がんと診断された妹を見守ってきた姉の蒼生ちゃんの姉妹の絆を描いた物語だ。

佳純ちゃん:これ誰の本?
絢子さん:お母さんが描いた本だよ。すごいね!蒼生ちゃんと佳純ちゃんのこと描いたやつ。いっぱいある?そっと出してよ!頑張って応援してくれた人に贈らないといけない。

絢子さんは絵本を地域の児童館や病院に寄付しています。

絢子さん:希望の光を見つけて、そこを乗り越えて、私たち家族がいまにいたっているので。今が辛い人とか同じ境遇にある人も、前を向けるきっかけ、勇気づけられるきっかけにこの絵本になったらいいなと思います。

絵本が届く
絵本が届く

■小児がんを伝えるー 書店で子どもたちに読み聞かせ

4月、神戸市の書店で、絢子さんはこの絵本を子どもたちに読み聞かせるイベントを開いた。

【絵本の朗読より】
「『あれ?これ何かしら?』お母さんが少し怖い声で言いました。血走っている」

「かおりの目にきらりと光る白いものを見つけました」

「あゆみ、よく聞いてね。かおりちゃんの目に網膜芽細胞腫っていう悪い病気がいたの」

「かおりちゃん、頑張ってるから、あゆみもお留守番頑張るよ。ずっとずっと待ってるよ。かおりちゃん、絶対かえってきてね」

読み聞かせイベント
読み聞かせイベント

■何事にも挑戦したい佳純ちゃん 将来の夢は…

絢子さん:(絵本では)『あゆみちゃん』と『かおりちゃん』っていうけど、本当は蒼生と佳純っていう名前で、全然見えないけど、元気いっぱいに今盲学校に通ってるから。みんな遊んでね、またいつか。

読み聞かせに参加した小学生:目のがんは知らなかった。

読み聞かせに参加した小学生:肺とか舌は聞いたことあるけど、目は知らなかった。

読み聞かせに参加した小学生:目は初めて聞いた。

絵本を通じて子どもたちに小児がんが伝わる
絵本を通じて子どもたちに小児がんが伝わる

■「やりたいことがいっぱい」佳純ちゃん

何事にも挑戦したい気持ちは、人一倍。

佳純ちゃんには、やりたいことがいっぱいある。

(Q.大きくなったら何になりたいですか?)
佳純ちゃん:お店屋さん!アイス屋さん、ミスタードーナツ、ケーキ屋さん…面白いかなって思ってさ!なりたいから!


そんな佳純ちゃんの闘病と姉・蒼生ちゃんとの絆を描いた絵本「だいすきっていいたいよ (小原絢子)」は、阪神間の書店やインターネットで購入できる。

(関西テレビ「newsランナー」2025年4月29日放送)

1人ですべり台にも
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