秋田の事業者が山形・遊佐町で検討している採石計画について町民向けの「説明会」を開いた。これを受け、町は町民との意見交換会を開いた。それぞれに参加した町民からは、町の条例の規制を超える計画への不信感、事業者の企業姿勢を問う声などが聞かれた。

ボーリング調査では「地下水脈に影響なし」と説明
4月18日夜に開かれた住民向けの説明会には、約80人の町民が参加し、関心の高さをうかがわせた。

説明会を開いた川越工業(秋田・にかほ市)は、遊佐町の臂曲地区に所有する鳥海山の麓の敷地内で「採石」を行う考え。
2025年8月の事業開始を目指し、3月に町に事前協議書を提出している。

この日の説明会で川越工業は、秋田大学に依頼した敷地内4カ所でのボーリング調査の結果を基に、「地下水脈に影響を及ぼさずに掘削は可能だ」と説明した。

事業者の説明に反発する住民
しかし、鳥海山の水や資源を農業や漁業・観光に活かしている町民にとっては納得が行かない内容だった。
(住民)
「水脈を寸断しない保証はない。災害が起きてからでは遅い」
「鳥海山は日本ジオパークとしても、国内で認定されている。景観は崩れるし、そういうことは考えていないのか」

計画では、最も深いところで「地下30メートル程度」の掘削を行う可能性があるが、鳥海山のような水資源の保全区域について、町は保護を目的に条例で2メートルを超える掘削を規制している。

事業者の企業姿勢を問う町民の声
実は、川越工業は2016年にも同じ敷地内の別の場所で採石を計画し、条例で規制する町と最高裁まで争った末に断念した「因縁」があった。

住民は、「多くの人たちの心を踏みにじろうとしている。3年前の最高裁の判決、あれをどう思っているのか」と憤る。

掘り出した石について、川越工業では酒田港の基地港湾工事に活用する考えだが、説明会では住民の問いに答えられない場面も多く見受けられた。

川越工業・神坂智行営業課長:
えー、すみません。私では答えられません。
そう答える川越工業の担当者に対し、住民たちは「何のための説明会だ!」「きれいな水があるからおいしい米が出来る。それをないがしろにするようなやり方は許されない」「条例があり、裁判にもなったのに、新たに事業を行うこと自体が、会社の姿勢が問われるのではないか」と話す。

川越工業の神坂営業課長は、「町民の理解を得られるよう努力はするが、難しい課題」と語り、2メートルという町の規制があっても採石したい理由については、「会社の所有地・買い求めた山なので有効活用したい」と答えた。

町は5月10日までに認可を判断
川越工業が開いた住民向けの説明会の後、23日夜に、町は町民との意見交換会を開いた。

町の担当者から事業者が示した計画の説明が行われると、町民からは、水質などに影響するとして反対する意見や、以前、採石を行った際に事後の緑化が行われておらず、姿勢を疑問視する声などが相次いだ。

遊佐町・高橋務副町長:
条例で規定する水源涵養機能を損なうのか・損なわないのか、地下水に影響があるのか・ないのか、そういう部分が判断の基準になる。
特に住民からは、前の事業が終了した段階での緑化について貴重な意見をいただいたので、そのことも十分踏まえながら判断していきたい。

町は5月10日までに認可するどうかを判断する方針だが、事業者に求めている資料の提出が遅れていて、判断がずれ込む可能性があるという。
今後、計画を精査し、再び規制するかどうかを判断する考え。

※高橋務副町長の「高」はハシゴダカ
(さくらんぼテレビ)