トランプ関税を巡る日米協議で、日本政府はアメリカ産米の輸入拡大を交渉カードとして検討している。日本の聖域とされる米の輸入拡大が、本当に国益につながるのか疑問視する意見も根強い。

「国益なのか」農水相は慎重な姿勢

90日間の猶予が与えられたアメリカのトランプ関税に対し、日本政府が交渉のカードを探る中、新たにアメリカ産の米輸入拡大案が浮上した。

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複数の政府関係者から聞かれたこの案について、赤沢経済再生相は…

赤沢経済再生相:
(報道は承知しているが)詳細、外交上のやりとりであるので、恐縮ですけれども言及は差し控えたい。

一方、日本の聖域と呼ばれる米の輸入拡大案について、江藤農水相は慎重な姿勢を見せている。

江藤農水相:
日本の米の国内生産が大幅に減少するのが国益なのかと。

日米間の関税交渉が注目される中、キーパーソンの1人、アメリカのグラス新駐日大使が22日9時半頃、着任後初めて石破首相を表敬訪問した。

石破首相:
トランプ大統領の信頼が厚い大使閣下のご着任、日米間の同盟にとって大きな意味がある。

新駐日アメリカ大使 ジョージ・グラス氏:
日本と総理と一緒に仕事ができることを楽しみにしております。また友情を強化していきたいと思います。

その『友情強化』のために求められているのがトランプ関税への回答だ。

アメリカで行われるG20、財務相・中央銀行総裁会議などに出席する加藤財務相は、次のように言及した。

加藤財務相:
世界経済の不確実性が高まっている中、各国財務大臣などと関係構築を行いつつ、自由で開かれた多国間貿易体制の重要性を訴える。

「関税措置には各国が懸念を持っている」「日本の考え方もしっかり述べていきたい」としている。

米の輸入拡大案浮上…農家からは否定的な声も

一方、赤沢経済再生相が担当する関税交渉については、4月内にも次の協議が行われる見通しだ。

アメリカ側が定めた7月9日の期限までに交渉がまとまらず、24%の関税をかけられた場合に懸念されるひとつが、農水産品への影響だ。

農水省で22日午前11時頃、全国知事会を代表して岩手県の達増知事が江藤農水相に提案を行った。

岩手県・達増拓也知事:
輸出が近年伸びている農林水産業、食品製造業、これに影響し、国内外の経済縮小を通じたあらゆる分野へのこの波及の恐れも懸念している。本日は、日本経済への影響緩和に向けた対応ということで要望させていただきます。

こうした中、アメリカとの交渉カードに浮上したのが、日本の聖域とされる米の輸入拡大案だ。トランプ関税への交渉カードの一つとして、政府内でアメリカ産の米の輸入拡大案が検討されている。

次の交渉でアメリカ側に示されるとみられるこの検討案について政府高官は「他に考えられるものがない」としていて、政府内でも「米で対策をしないと交渉は終われない」との見方も出ている。

しかし、江藤農水相は次のように警鐘を鳴らす…

江藤農水相:
米を米国を含めた海外に頼ると、米国に限らずですね、日本の米の国内生産が大幅に減少してしまうということが国益なのかは、国民全体として考えていただきたい。

三重・紀北町の米農家からも否定的な声が聞かれた。

農家歴50年・松永孝さん:
日本の米を使っていただきたいのは、農家としては十分あります。ただこれだけお米が高騰してくると、いろんな方から「外国の米でもいい」という意見もあるそうですが、やっぱり日本の米の政策をもっと力入れてもらって、お米が作れるような状態をまた戻してほしい。
(「イット!」4月22日放送より)

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